「蘇芳、なにかあったのか」
「お食事中すみません。先ほど深川の化学薬品工場が爆発したと連絡があり、付近に火の手が上がっています。逃げまどう人々で現地が混乱し、憲兵隊に出動要請が出ました」
「爆発に悪鬼が関連している可能性は?」
「わかりません。爆発が事故であるか故意であるか、現地に行ってみないことには」
蘇芳の話を聞き終わる前に、響は立ち上がり出口に向かって歩き出す。
「出掛ける」
「はい。お気を付けて」
ひとこと厳島に告げると、響は蘇芳を引き連れて出て行く。由乃も去り行く響の背中に「お気を付けて!」と声を掛けた。化学薬品工場の火事であれば、単なる火災では終わらない。鎮火するには相当な時間がかかり、更なる爆発の可能性だってある。鬼神とはいえ現世では生身の響の身を由乃は案じた。
夕餉の片付けが終わり、ヨネが帰宅する。明日の朝餉の仕込みをして、厳島に報告を済ませると由乃は自室に引き上げた。寝具の上でうたた寝をする蜜豆も、ふかふかのラグで熟睡する白玉も今夜はいない。ふたりとも、密かに響に付いて行ったからだ。
午前一時。
体を横たえたが、眠れる気配はまるでない。響の身を案じるばかりに、目が冴えてしまったのか。自分が気にしたところでどうなるわけでもないのはわかっているが、それでも由乃の頭の中には、人々のために奔走する響がずっと浮かんでいた。
(無理だわ。眠れそうにない)
「お食事中すみません。先ほど深川の化学薬品工場が爆発したと連絡があり、付近に火の手が上がっています。逃げまどう人々で現地が混乱し、憲兵隊に出動要請が出ました」
「爆発に悪鬼が関連している可能性は?」
「わかりません。爆発が事故であるか故意であるか、現地に行ってみないことには」
蘇芳の話を聞き終わる前に、響は立ち上がり出口に向かって歩き出す。
「出掛ける」
「はい。お気を付けて」
ひとこと厳島に告げると、響は蘇芳を引き連れて出て行く。由乃も去り行く響の背中に「お気を付けて!」と声を掛けた。化学薬品工場の火事であれば、単なる火災では終わらない。鎮火するには相当な時間がかかり、更なる爆発の可能性だってある。鬼神とはいえ現世では生身の響の身を由乃は案じた。
夕餉の片付けが終わり、ヨネが帰宅する。明日の朝餉の仕込みをして、厳島に報告を済ませると由乃は自室に引き上げた。寝具の上でうたた寝をする蜜豆も、ふかふかのラグで熟睡する白玉も今夜はいない。ふたりとも、密かに響に付いて行ったからだ。
午前一時。
体を横たえたが、眠れる気配はまるでない。響の身を案じるばかりに、目が冴えてしまったのか。自分が気にしたところでどうなるわけでもないのはわかっているが、それでも由乃の頭の中には、人々のために奔走する響がずっと浮かんでいた。
(無理だわ。眠れそうにない)