すると、厳島は盛大なため息を吐いた。
「はあー、確かにあなたは非常に優秀です。しかし、体はひとつ。無理をすべきではない、というのが、響様並びに多聞家の総意です」
「多聞家の、みなさまの総意……ですか」
「そうですよ。ですから、午後からの面接、蜜豆様のお守り(抑止)を頼みます」
「は、はい。頑張ります」
由乃はしっかりと頷いた。
自分は元気で大丈夫だと思っていても、突然事故に遭ったり、病気になったりする可能性はある。その時、今回みたいに多聞家に迷惑をかけないためにも、信頼出来る使用人はいたほうがいい、と思ったのだった。
そして、その日の午後、面接希望の人物が多聞家に現れた。迎えに出た由乃は、玄関先で立ち竦む。
なぜかというと、それは会いたいと思っていた、懐かしい人だったから。
「ヨネ……ヨネさんっ?」
「由乃様……お元気そうでなによりでございます」
「ええ! ヨネさんも元気そうでよかった。でも、どうしてここに? 蜷川家は辞めたの?」
「あ……はい。いろいろありまして……」
ヨネは辛そうに目を伏せる。
蜷川家でなにかあったのだろうか、と由乃は考え、直後にそうに違いないと納得した。去り際の蜷川家は地獄のようだった。狂ったように泣き喚く華絵、真っ赤な顔で慌てふためく元治、蒼白になり今にも倒れそうな佐伯。きっとあのあと、更に最悪な職場環境になったに違いない、と。
「とにかく入って。応接室で家令の厳島さんが待っているわ」
「ありがとうございます」
由乃とヨネは、そのまま応接室に移動した。
「はあー、確かにあなたは非常に優秀です。しかし、体はひとつ。無理をすべきではない、というのが、響様並びに多聞家の総意です」
「多聞家の、みなさまの総意……ですか」
「そうですよ。ですから、午後からの面接、蜜豆様のお守り(抑止)を頼みます」
「は、はい。頑張ります」
由乃はしっかりと頷いた。
自分は元気で大丈夫だと思っていても、突然事故に遭ったり、病気になったりする可能性はある。その時、今回みたいに多聞家に迷惑をかけないためにも、信頼出来る使用人はいたほうがいい、と思ったのだった。
そして、その日の午後、面接希望の人物が多聞家に現れた。迎えに出た由乃は、玄関先で立ち竦む。
なぜかというと、それは会いたいと思っていた、懐かしい人だったから。
「ヨネ……ヨネさんっ?」
「由乃様……お元気そうでなによりでございます」
「ええ! ヨネさんも元気そうでよかった。でも、どうしてここに? 蜷川家は辞めたの?」
「あ……はい。いろいろありまして……」
ヨネは辛そうに目を伏せる。
蜷川家でなにかあったのだろうか、と由乃は考え、直後にそうに違いないと納得した。去り際の蜷川家は地獄のようだった。狂ったように泣き喚く華絵、真っ赤な顔で慌てふためく元治、蒼白になり今にも倒れそうな佐伯。きっとあのあと、更に最悪な職場環境になったに違いない、と。
「とにかく入って。応接室で家令の厳島さんが待っているわ」
「ありがとうございます」
由乃とヨネは、そのまま応接室に移動した。