とんでもないことになっている! と由乃は勢いよく布団を剥いだ。蜜豆は飛んできた布団をひらりと躱すと、由乃の胸に飛び込む。そして、強制的に押し倒した。

「落ち着くのじゃっ。お前は申し訳なさでいっぱいだろうが、皆、楽しそうにやっておる。ああでもないこうでもないと、普段やらない家事を楽しんでおるようじゃ」
「そ、そうなのですか」
「うむ。特に響様など、朝から非常に嬉しそうに、玄関を掃いたり食器を揃えたりとな」
「え……響様まで……」

 由乃の脳は、驚きと申し訳なさを通り越し、一旦思考を停止させた。その後、自分を落ち着かせるために、こう考えた。
(仕方ないわ。足が治ったら、みなさんに恩返しをするとして、今は甘えてしまいましょう)

「お、諦めたか?」
「はい。みなさまのお言葉に甘えようと思います。あ、蜜豆様はもう朝餉は召し上がりましたか?」
「いや。由乃と一緒に食おうと思ってな。待っておるのじゃ」
「待って、いる?」

 そう言った途端、部屋の扉が豪快に開き、誰かが入って来た。

「由乃! おはよう」
「き……響様?」

 入って来たのは朝餉の乗った角盆を手にした響と、蜜豆専用盆を背中に乗せた白玉。唖然としながら半身を起こす由乃を楽しそうに見ながら、彼らは寝台の側までやって来た。