—1—

「なんでこうなるんだよ。こんなはずじゃなかったのに……」

 耳をつんざくようなクラクション。
 交差点に散らばった車のバンパーの破片。
 車と衝突したバイクの運転手は地面に投げ出され、ぐったりとしたまま動かない。

「お兄ちゃん?」

 横断歩道の信号が点滅を始め、妹の莉緒(りお)がオレの顔を覗き込む。

「悪い、今行く」

 遠くから救急車のサイレンが近づいてきた。
 心臓の鼓動が悲鳴を上げ、頭にまで響く。
 そうだ。全部オレが悪い。
 オレが過去を変えてしまったからこんなことになってしまった。

 だったらまたやり直すか?
 いや、やり直したとして次助かる保証はどこにもない。
 もっと最悪な未来が待っているかもしれない。

「どうしたの。具合でも悪い?」

「いや、大丈夫だ。帰ろうか」

 蝉の鳴き声が辺りを包み、コンクリートの熱気が蒸し風呂のように感じられる。
 真夏の昼下がり、オレは1人の青年を見殺しにした。
 この罪は一生消えることが無いだろう。