父は、私がまだ僅か三つの時に病気で亡くなった。詳しい病名などは聞かされていないが、病気が発覚した時には既に進行していて、末期だったらしい。
小学一年生の時に出会った女の子。クラスが離れても友情が途切れる事は無く、親友だった。しかし六年生に進級したと同時に、突如親の転勤で遠くへ引っ越した。
中学校に上がって、初めて人を好きになった。二つ年上の、先輩だった。しかし先輩には既に恋人が居て、更には卒業と共に引っ越し遠くの高校へと進学した。
そして中学三年生の夏――母を喪った。
全てが全て、不幸な別れだった訳では無い。しかし、母を喪って気付いた。私の周りの人は、私の大切な人は、いつもいつも離れていく。居なくなってしまう。
『遠海さんは、白川くんの事が好きじゃない?』
先程の、来栖先生の言葉を反芻する。
『一方的に付き纏ってくる白川くんが、鬱陶しい?』
白川は決して、悪い奴では無い。好きか嫌いかの二択だけで考えれば、好きな方だと思う。鬱陶しいと思う事も、今は無い。
寧ろ、心の何処かでは白川と関わる事を求めていた。好きじゃなかったはずの学校も、楽しいと感じ始めていた。
だがそれをはっきりと認めてしまえば、言葉にしてしまえば、いつかは白川さえも失ってしまう気がした。
人間を繋ぎとめておける方法など存在しない。特に、死からは逃れられない。
どれだけ友情を育んでも、いつか消えてしまう時が来る。事実、小学生の頃の親友だって、引っ越してから数回の手紙のやり取りはしたものの、いつの間にかそれも途絶えてしまった。
いつか、必ず別れが来る。それが分かっているのなら、一人で居た方が良いに決まっている。これ以上深入りする前に、白川との今後の関係は考えた方が良いかもしれない。