1、君とレモンソーダをかき混ぜたい。
●夏なんて早く終わればいいのに。
海へ続く下り坂を陽炎の透明を切り裂いて、歩き続ける。
坂を下った先に見える踏切は逆光で影って歪んでいる。
片思いだった想いは簡単に失った。
君が別な人と手を繋いでいるのを見てしまった。
噂なんて、信用できないよね。
誰が、まだ付き合ってる人はいないよって広めたんだろう。
先に広がる海はキラキラと白い光を反射して、
世界は遥か先まで夏だった。
揺れた想いはこのまま、夏の熱で溶かしてほしい。
バターが焦げてしまうくらいに。
踏切が点滅を始めたあとすぐに、
ゆっくりとアルミ色の電車が奥の海を遮った。
●夏休みは恋のはじまり。
君とは未だに恋人以上恋人未満だけど、そう思っているのは私だけかな。
夏休みが始まった無人駅のベンチで二人、横並びに座り、
1時間に一本の列車を待っている。
帰宅部の君は忘れ物を取りに来たって、
こんなことでわざわざ学校に来るなんてどうかしていると笑った。
君はオーバーサイズの白いTシャツにシルバーのネックレスを付けている。
君の私服姿を初めて見たけど、やっぱり君が眩しすぎるよ。
「このまま、街に行こう」
と言われて、ドキッとした。
私も制服なんて着てこなきゃよかったな。
●夏と恋は青色。
夏が始まって、すぐ君に誘われるなんて思わなかった。
だから、冷静にドキドキしながら、
多くの人が行き交う駅の中で君を待っている。
夏の恋はよく終わりやすいって言うけど、
優しい君との恋は根拠はないけど、
続きそうな気がするよ。
●思ったより、恋は進む。
コーラを飲みながら、君と一緒に公園の噴水を見るその行為自体が、
ものすごく恋に落ちてしまう行為だってこと、
君はわかっているのかな。
片思いは日々、胸の中に雪のように積もっていくけど、
君はそのことに気づいてくれているのかな。
君はコーラを飲んだあと、好きだよって言われて、
そんな憂鬱だった気持ちは、
すべて一瞬で溶けてしまった。
●君との夜は深まる。
ローソンの駐車場で君とアイスを食べる熱帯夜は、
夢で溢れているように感じるのはなぜだろう。
君の緑色のTシャツの裾が弱い風で揺れ、
君より素敵な人なんていないなって思った。
●音と光の数だけ、時間は進む。
無数の花火がネオンよりも儚く散り、
君と僕は花火を見た数だけ、
大人になっていくんだなって思うと、
君との恋を単純に深めたくなった。
●恋が揺れる1分前。
放課後の教室で、ぼんやり外を眺めている。
ガラスの外は雨で滴り、景色がグレーに滲んでいる。
ガラスに弱く映る私の制服姿は、
今シーズン限りで見納めだね。
プールの雨で水面が揺れて、
せっかくの底の水色は涼しさが抜けて、
今日は泣いているときみたいに悲しくみえるよ。
君に待ってと言われて、
待ち続けている金曜日は、
緊張と期待で胸が痛くなるよ。
もし、両思いだったら、
どうやって、君に嬉しさを表現すればいいんだろう。
そんなことを考えていたら、
君の声がして、一気に心臓が壊れそうになった。
●スタバで偶然なんてあり得ない。
ひとつのことが気になると、すぐに不安になってしまうくらい、
神経が最弱レベルな私は、夏の爽やかささえ、忘れてしまっているような気がする。
水槽の中みたいに底冷えしたスタバで、
今日も午前中からフラペチーノを飲んで、
未来の不安や、過去の失敗についてあれこれ、
ロルバーンに書きなぐり続ける。
黄色の小さなマスの世界で何者にもなれない自分のことを、
書き続け、小さな自分はただ生きることしかできないのかなって、
そんな思案を繰り返しても、現実は変わるわけじゃないってわかっている。
わかっているんだ。
ペンをそっと置き、窓越しに広がる世界を見ると、
夏色の中に君が立っているのが見え、
咄嗟にiPhoneを手に取り、LINEを起動した。
●君は冷房装置。
スカートの裾を右手で持って、
右回りに孤を描く君の水色は、
夏を1℃下げる効果があるよ。
●こぼれた恋をたまに思い出す。
アイスコーヒーを飲みながら、
ずっと前に思いを伝えられなかった君を思い出した。
まだ、少年少女だった二人は、
恋の進め方を知らなくて、
思いを秘めて、
無限に君と会話をすることだけが楽しかった。
●本当は君の失恋話なんて聞きたくない。
迷いの中で生きている僕たちは、
いつも迷うと海を眺めることにしていた。
今もこうして、海浜公園のベンチに座り、
君と一緒に海を眺めながら、
ボトルのアイスカフェオレを飲むのは、
だんだん君との日常になりつつある。
君の失恋話は本当は聞きたくない。
だって、僕は素直な君が好きだから。
どさくさに紛れて、
本当は君の悩みを聞くついでに思いを伝えたいけど、
そんなことをしてより君を混乱させたくはない。
右にいる君を見ると、
君は頬を濡らしていた。
思わず、輝く涙を人差し指でそっと触れた。
濡れた人差し指に悲しみを感じた。
●君と日々を重ねたい。
赤いストローを咥えて、クリームソーダを飲む君はなぜか幼く見えて、
一瞬、タイムスリップをして少女みたいでかわいいよ。
君との夏はこれが初めてだから、
まだ、知らないことばかりで君との話は尽きない。
君が持つグラスの中の気泡は気まぐれに昇り、
きっと、君との思い出もいつかこんな感じで
ふわっと忘れていくのかもしれないね。
そのときまで、君との恋は続くと信じているけど、
できるだけ多くのことを閉じ込めて、
いつか、君と懐かしいねって言い合いながら、
季節を重ねていきたい。
●最悪だけど、最高だよ。
夏の微温い雨の中、君と夜の住宅街を駆け抜ける。
急な雨の所為で僕たちはびしょ濡れで、
どうしてこんなことになったんだろうを連呼しながら、
公園の屋根つきのベンチにたどり着いた。
雨に打たれた君は滴っていて、
乾いたタイルをポツポツとグレーに染め上げていた。
「最悪だけど、こういうとき、最高って思えば楽しいよ」
君はそう言ったあと、
あーあ。バッグも、ワンピースもぐちゃぐちゃ。と続けたから、
矛盾してるじゃんって返すと
君は、それでもいいのと微笑んだ。
雨が止む気配がなく、僕らは完全に濡れた世界の中に置いてけぼりにされた。
「ねえ、次、にわか雨に打たれたら、またここに連れてきて」
君にそう言われたから、
小指と小指を繋ぎあい、
また濡れようねと誓った。
●今年の夏もたくさん思い出つくろうね。
君に恋に落ちたのは去年の夏で、
自然に惹かれ合って、
暑かった夏が一気に涼しくなった。
今日も君の名前を呼べる幸せを
ネオン色のナイトプールの中心で甘く噛みしめる。
●君は夏なのに冷たかった。
深い傷を作ってから、
君と出会った夏の日のことをより思い出してしまうよ。
初めて手を繋いだとき、
君の手は効きすぎた冷房で冷たくて、
しっかりと温め守りたいと思った。
だけど、君を傷つけた事実は変わらない。
嘘をついてごめんね。
●きっと、今日の夕暮れは忘れない。
君はあの円盤のことを銀色のフリスビーみたいと言った。
緑が深い山と山の間にUFOが飛んでいた。
夏の夕暮れのオレンジに照らされたシルバーの反射は、
きれいで思わず息を飲んでしまった。
それが消えたあとも、
君は人差し指を、空に指さしたまま、呆然としていたから、
そっと君の人差し指を握った。
●ミッドナイトエスケープ
夜の公園で君と二人で社会に馴染めないことについて、
あれこれ愚痴を言い合いながら、
雄弁に自分を正当化し合うのは、
なんでこんなに楽しいんだろう。
弱々しい白い街灯を背にして、
小高い地元から眼下のカラフルな夜景を眺めている。
君は学校に馴染めないし、
人間関係もうんざりだって言うし、
だからと言って働きたくもないと、
平然と言ってしまう。
君はバッグの中で溶けたレモンキャンディみたいだね。
君は素直すぎるんだよ。
君は率直すぎるんだよ。
君は臆病すぎるんだよ。
今のままじゃ、
無理があることくらい、
君もわかっているだろうし、
そんなこと、聞きたくもないだろうから、
君を必要としているよ。
と素直に伝えることにした。
●君との日常は穏やかに溶ける。
君のためにコーヒーを淹れて、
美しい夏の朝をクーラーを全開にして、
ゆっくり楽しもう。
目玉焼きとトースト。
すべて準備したから、
一緒に今朝見た夢の話を共有しよう。
●青い外にもうすぐ戻れる。
入道雲が深い青に立ち上っている。
病室の窓を開けて、湿った夏の空気を吸い込むと、
着実に回復しているんだと思って嬉しくなった。
だから、
すべての気持ちをリセットして、
残りの夏を楽しみもうと強く思った。
●透明の季節になり、久々に君に会えることになった。
電車に乗って、遠くの街に住む君に会いに行く。
被ってきた麦わら帽子を膝に乗せて、
流れていくキラキラした海をぼんやり眺めている。
クールな君はきっと久々の再開でも、
いつもみたいに波がない反応を返してくると思うけど、
昨日、したためた手紙を渡したときは驚いてほしいな。
●残りの夏を充実させたい。
クーラーが効いたカフェのカウンターから、
夏の夜の街を見下ろしている。
ネオン色になった街で無数の人たちが、
夏を思い思いに楽しんでいるんだと思うと、
それに比べて、楽しめていないなって、
勝手に意識して、
ため息を吐いてしまったから、
それを打ち消すためにアイスカフェオレを一口飲んだ。
●雨でも日々は通常運転。
雨から逃げるように、地下鉄の入口の階段を降りていく。
ビニール傘は外の灰色を吸ったみたいに濡れていて、
雨の日はいつも弱い頭痛がするから好きになれない。
だけど、雨の日でも生活は続くし、
夏は嫌なほど、暑く続くし、
忙しくてやりたいことができないしで、
この夏も結局、あっという間に過ぎていくんだろうなって、
半分の失望をポケットに入れ、
それと交換でiPhoneを取り出し、
改札機にタッチした。
●夏はいつも上手くいかない。
君と食べるパフェは嘘とは無縁で気持ちが楽になるね。
ファミレスの安いパフェでも生クリームの甘さは変わらないし、
口の中に広がる冷たさも変わらないから、
すべてのうんざりした人間関係も吹き飛ぶんだ。
だから、君にこれ以上、
愚痴を言うことはやめて今を楽しむね。
●去年の夏はもう遠い。
簡単に振られてしまい、
泣きながら駅から家まで歩いた帰り道は、
今となっては、去年の夏のことは過去の思い出で、
懐かしさすら感じてしまう。
このカーブミラーの前で次の恋を進めることを決めて、
今、私はものすごく幸せだ。
●切り裂く告白。
広がった青空をジェット機が切り裂いてく。
そんな轟音の下で君に告白された。
君の言葉はほとんどかき消されたけど、
いいよ。
君のことが好きなのは変わらないから、
許してあげる。
●涼しい朝を切り裂く。
一人で自転車でシャッターで白い商店街を抜け、
朝の冷たい空気を切り裂いていく。
お互いに疲れてしまったよね。
あなたは私のことをどれだけ思っていたのかわからないけど、
私はあなたのことをどこでも思っていたことは知らなかったんだね。
バカみたい。
そんなグルグルした思いをペダルに込め、
ギアはグルグルと前へ進めようとする。
商店街を抜け、踏切を抜け、海沿いの国道にたどり着いた。
すでに朝日は結構な高さまで上がっていて、
今日もあっという間に30℃を軽々と超えていきそうな雰囲気が出ていた。
いつか、あなたと一緒にみた夜明けの海は世界を僅かなオレンジ色で染め、
そのなかで嘘をつかない約束をした。
だけど、あなたはそのことを忘れてしまったんだね。
小さな港の方まで進み、
そして、私は自転車を止めて、
テトラポットに登って、座った。
宇宙の端まで着たみたいな、
さざなみの音しかない世界で、
あなたへの愛を思い出した。
涙が頬を伝う感触がして、
余計あなたのことが嫌になった。
●恋の痛みは冷やすだけじゃ治まらない。
エアコン全開の部屋は無菌室みたいで、
自分を部屋に閉じ込めたまま、
Spotifyでお気に入りの曲を再生しても、
胸は冷え切ったまま痛む。
仲直りのきっかけがないまま、君との関係は終わりそうだね。
「さよなら」くらい言えばよかったかな。
君との青春は去年の夏に始まり、
君との青春は今年の夏に終わりそうだ。
たくさん交わした約束はもうすぐ無効になりそうで、
昨日の夜から何度も確認したLINEのやり取りを読み返しても、
終わりの気配しか感じなかった。
初めて君を好きになった日のことは今もすぐに再生できるし、
それを大切にしていたのに、
そろそろ捨てなければいけなくなると思うと、
余計、胸が痛み始めた。
君との関係がもし終わったら、
一体、どうやって日々を重ねたらいいんだろう。
●夏生まれの君は透明。
レモン色のワンピースが似合う君は、
最高に透明だから、
手を繋いだまま水族館へ行こう。
8月生まれの君は、
生まれつき夏が似合うから、
君は永遠に光を失わないよ。
●君とレモンソーダをかき混ぜたい。
白いパラソルの下で君と一緒に
レモンソーダを飲んでいる。
君と過ごす夏が終わる前に、
甘酸っぱい恋をしっかりと君と混ぜたい。
2、君との夏が永遠に感じるのは、君が透明だからだ。
●数歩先を歩く君は、エモじゃ片付けられない魅力がある。
入道雲とセーラー服は空の青にとても似合う。
海まで続く坂を二人で下っている。
君の見慣れたその姿を目に焼き付け、
もうすぐ終わる青春を泡にしたい。
いつも僕の数歩先を歩く君は大人っぽいのに、
まだ、少女のあどけなさものこっていて、
時折、鋭いことを言うから放っておけない。
この先なんて考えたくないけど、
何となく君とは、
このまま、ずっと一緒な気がした。
●誰も助けてくれないときは、いつも甘いものが魔法をかけてくれる。
バランスを崩した現実とは、
ご褒美のパフェでサヨナラしよう。
スプーンでクリームと一緒に
悩みを飲み込むよ。
窓越しに見る駅前通りの街路樹は、
綺麗に夏を知らせている。
甘さが脳天に落雷する。
夢中を無限に
無限を有限に
言葉では伝えられない思いを
胸でしっかり溶かしてしまおう。
だから、明日からしっかり夏を感じるよ。
なんとか現実に折り合いつけながら。
●素直になれなかったから、夏を永久に保存したい。
制服姿のときに伝えたあの気持ちは、
すでに無効になっているのは、
大人になった証拠だね。
夜のローソンでアイスを買って、
駐車場で人を愛することについて語った。
LEDに変わり、固くなった街灯。
街は夏でも冷たく感じる。
仕事が終わってすべてが、
どうでも良くなると君を思い出してしまう。
だから、タイムスリップして、
君と手を繋いで、
そのまま約束を永久凍結のよに
一生にする努力をしてやる。
●大好きな朝の時間はもう終わるから、
永遠にこの生ぬるい時間が続いてくれと願う。
機嫌に振り回されている。
今日は朝から昨日の残りが、
頭の中で渦巻いているから、
限定のフラペチーノを飲もう。
失望と絶望は尽きと星みたいに輝き、
努力と義務は砂浜に流れ着いた、
色あせた瓶みたいに徒労だ。
口の中で渦巻く、
優しい甘みとフレーバー。
矛盾が正しい世界で
今日はどう生きればいい?
誰か教えて。
●終わりの先を超えられるなら、それは純粋無垢な愛に変貌する。
潮風を目いっぱい受け止める。
オレンジに変わった太陽は
もうすぐ水平線の先に行こうとしている。
君と手を繋ぎ、それを静かに眺めていた。
海岸線は思い思いの夢に溢れていて、
無数のサーファーは、
波をじっくり見極めて漂っている。
「たまに一人になりたいときがあるの」
君はそう言いながら、握る手に力を入れた。
押し寄せる波の音が儚さを引き立てる。
なんとなく、
この恋はこの夏に終わる気がした。
●海は広がる。もうすでに世界の定義は変わった。
覚えている?
君と会話が弾んだ日は土砂降りだった。
カフェの窓越しに溺れた街が見えた。
水疱が簡単に浮き上がって、消えるように、
そっとした優しい時間が流れた。
きっと今はそんなのは消えて、
海に落ちた流れ星のように藻屑となった。
ラテアートのハートは脆くて苦かった。
大好きだった街は今は水没してしまった。
君はもう別の街に行ってしまった今、
今日も沈んだ街を潜る。
●雨上がりは優しいから、つい、寄り道したくなっちゃう。
夏が始まった公園は、
芝が綺麗に昨日の雨に染まり、
雨上がりの冷たさで静まっている。
自転車を降り、ベンチに座ると、
気が抜けたように、
ため息が自然に出るのはなぜかしら。
昨日も予想通りの
なにもかも、くだらない日だった。
今日は少しくらいは、穏やかだといいな。
憂鬱をすべてソーダに入れて、
大好きな歌をくちずさんで、
かき混ぜたい。
●いつも、日常に追われて、忘れてしまうけど、楽しいことは実は溢れている。
ポップする不思議は、
大人になるとわからなくなるけど、
美しいものを素直に認めたら、
きっと、維持できるだろうね。
閉園前のメリーゴーランドのように、
ファンタジーの余韻を感じよう。
社会に馴染もうとして、
傷ついた心を癒やすために、
ファインダーいっぱいに
イルミネーションを捉えよう。
●このままがベストだから、今が良ければ、それでいい。
君に撫でられたら、
照れるのは当たり前だよ。
二人だけの教室は夢の続きみたいだね。
窓から見えるプールは
雨で無数の波紋を広げている。
君のこと、誤解してたみたい。
あやふやな意思疎通みたいにね。
聞き間違えのように虚しく、
強いハートを鍛えてよ。
だから、期限付きの恋でもいいよ。
君ならね。
●鈍い心を波音がゆっくりと癒やしてくれる。
満たされない気持ちを
充足させるために
夜明けの海で消える星を眺めている。
酔って、火照った身体を
冷たい風が冷やしていく。
変われない自分を取り残すように
大好きな季節は先を急ぐよ。
待たされない気軽さを
取り戻すために良かったことを思い出す。
もう、いいよ。
進むしかないんだから。
●夏の始まりは透明だから、永遠に続くか、止まってほしい。
あなたと二人きり、
ベンチから噴水を眺めている。
右手で手を繋いだままで、
夏の始まりを黙って共有している。
さっきまでの出来事は、
すべてiPhoneの中に収まっていて、
あなたがはしゃぐ姿は眩しかった。
このまま時間が止まってしまえばいい。
右手にぎゅっと力を入れると、
あなたもそっと握り返した。
●別に自分のことを褒めてほしいわけじゃない。
カフェの外は雨で、
外の人はせわしなく、どこかへ向かっている。
コーヒーを口に含むと、
無限に夢があったときをふと思い出した。
煙る朝はどこか重たくて、
外面を気にして、
飴細工のように繊細な自分が、
置いてけぼりになっている。
勝手な思い込みで
世界を曲解するのはもうやめたい。
雨だから、頭を空にしよう。
●いつか見た満月は時空を超える。
タイムマシーンを起動した瞬間の青色のように
美しい雨の夜に君のことを思い出したのは偶然じゃない。
尽きなかった想いは、
いつの間にか時間を溶かしていった。
街のネオンを反射するスクランブル交差点を渡り、
無数のビニール傘と雑音に飲まれる。
もしかしたら、
今、この瞬間に君とすれ違っているかもしれないけど、
それを知るすべなんてないから、
前を向くよ。
●君らしくいれば、それで十分。
何も言い訳なんていらないよ。
雨は今日も続いているから、
気晴らしにレモネード飲もう。
狂喜乱舞の派手な世界よりも
悪口を言わない肯定的な世界のほうが、
非常識で楽しいはずだから、
常識は両刃の剣だよ。
溶けたキャンディを成形するように
素早く丁寧に楽しいことを話して。
そして、元気になって彩って。
そしたら、そのままの君でいれるから。
●常にいろんなことが変わっていくけど、このまま変えたくないこともある。
朝なのに蒸し暑くなったのは、
それだけ季節が進んだ証拠で、
一年の中で最高に青が美しい。
アイスコーヒーに映る電球色は
ほっとできる環境にいる証拠で、
何よりもこの時間を大切にしたい。
時はこうしてゆっくり進むけど、
変わりたくない気持ちは残される。
一口飲んで、やっぱり少し苦いから、
クリープを入れて、白い渦を作った。
●すっきりしないから、光が射す方に自然と歩みたくなる。
もっと楽しいことを求めて、
曇った空に右手を伸ばして、
意識的に頭を空にする。
水晶から世界を見るように、
ガスで煙る朝を軽くしたい。
もし、願いが叶うとしたら、
ファンタジックな世界で余生を送ってみたい。
大好きだった出来事をビーカーに入れて、
世界に彩りを加えたい。
●夏は雨と晴れ。いつか止むけど、今すぐ止む魔法はない。
プールに降り注ぐ土砂降りを教室から眺めている。
揺れる水面は心と表裏で、憂鬱な恋みたいだね。
このまま雨に打たれて、
胸の痛みを溶かすのもいいかもね。
イヤホンから大好きな曲が流れている。
机に頬杖をついて、ため息を吐いた。
きっと、上手くいくよ。
耳元でそう言われて、
憂鬱な恋が叶うかもと、ふと思った。
●あのときを思い出すと、胸がきゅっとする。
鮮やかに消えていく記憶は断片だけになる。
羊雲は強い風で柔らかく切れ、
パーフェクトな青に混ざり合う。
きっと君は私のこと、忘れているんだろうな。
手を空に突き上げたって、
ピンキーリングのピンクゴールドがきらめくだけで、
もう何もわかりやしない。
●暑い季節は苦手で、そんなときはいつも北を目指したくなる。
ありきたりなことに飽きたから、
日常に薔薇を添えるようにしたい。
水槽のように冷えたカフェから、
大好きな街の駅前を見渡す。
汗をかいたグラスを持ち、ストローを咥えて、
気鬱と一緒にカフェラテを吸い込んだ。
変われない自分を季節が置いていく。
巡る世界に順応できないから、
ちょっとだけ待ってほしい。
●友達以上恋人未満は一番、心が揺れるから緊張する。
胸に秘めた予感を温めて、君を待つ日曜日は非日常。
LINEでは会話が弾むのに、
先々週ははずまなかったから、
今日は戒めを糧に明るく振る舞おう。
ウォーターフロントで尽きない想い伝え合いたい。
レモネードで白のワンピースを
ゆっくり染め上げるように
甘酸っぱい思いをたくさんしたい。
●毎年、夏になると、飲みたくなるのは君との思い出が重いからだよ。
メロンソーダの緑を赤いストローでそっと口に含む。
水色の世界は雨上がりで尽くしいから、
鬱陶しい日々を忘れられるね。
あの時、もし、恋が叶ってたら、
どんな人生だったんだろうって、
時折、思うことがある。
君とはすでに連絡すら取れない、
淡白な関係になっている。
――もういいよ。
前に進むしかないのは、
わかっているから。
●レモン色が夏を酸味で盛り上げてくれる。
泣きたいなら泣けばいいんだろうけど、
こういうとき、都合よく涙が出ないのはなぜなんだろう。
ようやく夏が来たから、
レモンをかごに入れて海に行きたい。
酸味ですべてを忘れられるように、
ソーダにかき混ぜてしまおう、不安な未来を濁して。
いつも黄色を愛せば、未来が切り開ける気がした。
●朝の決意がずっと続けばいいのに。
コンバースの紐を結び直して、かがんだまま前を向く。
堤防や川辺は今日も静かに生きているのを感じる。
まだ、人通りが少なく、
朝は少しだけ冷たくて、
普段の憂鬱なことなんて、
口の中で溶けたキャンディみたいに
甘くなくなるように思える。
今日は楽しく行きてやるって、
心のなかでそっと決意した。
●豪雨に打たれて、歩くのには強い精神力が必要。
土砂降りに負けそうだから、強いハートが欲しくなった。
夏は気まぐれで、
たまに嫌いになるけど、
早く過ぎ去ればいいのにとも思えない複雑な自分に嫌気が差す。
口に含んだキャンディは、今、ゆっくりと口の中で溶けている。
レモンの酸味を雲に加えるだけで、
雨なんて消えたらいいのにって思った。
●電波は距離を縮めるけど、寂しさを埋めることはできない。
夜行列車がホームを通過している。
朝の凛とした空気が切れていく。
これから、遠くの街にいる君の元へ行く。
ホームで今日これからのことをいろいろと考えて、
拳をギュッと握り、じれったくなる。
昨日のことのように、
君に愛された言葉を思い出す。
雨の中、二人で誓った約束、
今でも有効なのは君のおかげだね。
だから、今日は素直になろう。
●あの夏、大好きだった君と雨に打たれたのを思い出した。
夏の雨に打たれたくなる衝動は
淡い思いを思い出すからだ。
優しかったあの言葉は時が経つにつれて、
憂鬱色にどんどん補正せれていく。
大好きだった偽りがなかった気持ちは、
アイスコーヒーの氷みたいに消えて、
薄くなった苦味と風味が残った。
どんどん過去に置いていかれそうだから、
今に集中して、
君のことなんて、忘れてしまいたい。
●おやすみを言いたくない夜は、どんどん深くなっていく。
ミラクルな夜の中で、
君に夢中なのは当たり前で、
窓から見える街は今日も青かった。
気がついたら、
手元のパナシェは、ほぼ無くなっていて、
君は上機嫌に、もしもの話を進める。
宇宙開発が進んだ時代に
月の裏のダウンタウンで起きた
禁酒法をどうやってやり過ごすかを
真剣に考える君が、
やっぱり好きだ。
●信じることができる安定さは、イリュージョンかもしれない。
雨の金曜日だから、
黒い下地に白の水玉模様の傘をさした。
明日は君と過ごす時間がこのまま続けばいいと、
思える日になるのは約束されているから、
今日も混雑する地下鉄に乗れそうだね。
好きなままでいれることが幸せで、
不安定さはわからなくなった気がする。
マラカイトの深い緑のように、
悪い魔力を跳ね返し続けたい。
●アルミ合金は夏色。どうしようもない衝動で海を眺めに行きたくなった。
柔らかい夏を求めて、
夏色に輝く列車に乗って数時間。
文句ばかり言うのは簡単だけど、
イライラは解消されないのは、なぜだろう?
車窓からきらめく海岸線。
波が穏やかに揺れる。
iPhoneに表示されるプレイリストは、最後の曲を表示していた。
お気に入りの曲が心穏やかにする。
目的地はもうすぐだから、
タイムマシーンのように時を忘れよう。
●世界が透明になれば、君はもっと息がしやすくなると思う。
屋上から街を見渡しながら、
君と手すりに寄りかかり、
理性と知性の違いや、
愛情と温情の違いについて、
結論のない話を永遠としている。
君は通り雨みたいに透明だから、
脆いガラスみたいに大切にしたい。
青空を見ると、
白い2本の線を描きながら、
ボーイングが真上を通り過ぎていった。
横にいる君の表情を見ると、
君は静かに泣いていた。
●揺れぶられる感情は今に満足していない証拠。
雨の街をカフェから眺めながら、
カフェラテの泡にそっと口づける。
声が出ないカナリアみたいに
もどかしい気持ちは残ったままで、
平坦で灰色なこの街が、
眠れる森の美女が見ている夢の中なら、
きっとすべてが上手くいくんだろうね。
もう過ぎ去ったどうでもいい過去が、
瞬間的に現れるのはなぜだろう。
喉が絞まる感覚が一瞬で痛みを作る。
「落ち着けよ」って
誰かに言ってほしくなった。
●昨日は楽しかった。ただ、それだけの事実だけでいい。
指切りをした昨日を思い出した。
あなたと橋から眺めた花火は儚くて、
穏やかな川面に揺れながら、反射していた。
「ずっと一緒にいよう」と言われたのを思い出し、
右の小指を立てて、小指をじっと眺める。
あなたの感触をありありと思い出せるよ。
当日配布のように確約のない約束を
あなたは本当に守ってくれるのかな。
捨てられた過去はつらいけど、
そんなの忘れて、夏を楽しもう。
●いつも鈍感だから、いつも肝心なことができない。
あのときの君の涙を思い出すと胸が締め付けられる。
二度と戻れない青い瞬間、
君の気持ちを上手く汲み取れなかった。
公園の噴水は今日も白く、時は進む。
そして、自分だけ一人、取り残されていく。
目まぐるしく世界は変わっていくけど、
ちっとも成長しない自分は置いていかれる。
今なら君の繊細な気持ちを
しっかりと受け止められたんだろうね。
だけど、胸にしまうよ。
もう、何もかもが遅いのは、
わかっているから。
●雨の朝はセンチメンタルで、深い傷跡がズキズキする。
ありきたりな悩みを、
捨てて飛び出すには過去を忘れる努力をしなくちゃ。
カフェの外は今日も雨でガラスに濡れる透明の絵の具は、
センチメンタルで街を覆っている。
午後から晴れる予報を信じられないくらい、
疑い深い今の自分に嫌気がさすけど、
滲んでしまった気持ちを
コーヒーとトーストで胸にしまって、
外でやり過ごす準備をしよう。
●分厚い未来への不安は鬱陶しくなったから、自転車で遠くへ行くことにした。
雲の切れ間から光が差し込んで、
山並みがベールに包まれている。
明け方から降った雨は止みそうだ。
夏休みが始まったばかりの街を
自転車でゆっくり通り過ぎていく。
顔が少し濡れて、気持ちは晴れない。
つまらない人生、なぞるくらいなら、
少しくらい、はみ出して楽しいことを作りたい。
昔から落ち着きがないって、よく言われた。
淡い初恋に溺れるような甘さがほしい。
今だけは鬱陶しい未来は捨てて、
ゆっくり自由になりたい。
●漠然とした未来なんて、夏と一緒に溶けたらいいのに。
コンクリートの階段で、
見たくない漠然とした未来の話を
制服の君とだらだらと話している。
美味しそうな積乱雲が夏を引き締めて、湿度が急上昇していた。
その所為で、君と繋いだままのを手は滲みはじめていた。
「離れ離れになりたくない」
ただ、それだけを聞きたかっただけなのに、
憂鬱がレモネードの酸味みたいに
胸に滲むのは、なぜだろう。
もし、永遠が簡単に手に入るなら、
君とこんな話なんて、しなかったのにね。
●暑さも寒さも過ぎ去れば、すべてイリュージョンでしかないのかもしれない。
夏の日々は、深まっていくけど、
心の隙間は未だに埋まらない。
やり方もわからないまま、
苦さで胸が締め付けられる。
それでも、木々の緑は深まっていく。
未だにあなたは胸の中で微笑んだまま、
時がいつの間にか経ってしまった。
誰でもいいわけがないから、
あなたと過ごした日々を
溶けたパズルのピースを見つけて思い出す。
上手く微笑んだら、褒めてほしい。
すべてが過ぎた去ったんだねって。
●朝の海は何もかも優しい。
明け方の砂浜はそっとしていて、
海はかすんで、人はまばらで優しく感じた。
熱せられる前の砂は、少しひんやりとしていて、
波は私のサンダルを濡らしては引いてく。
有限を無限に
絶望を希望に
コーラに溶かして赤を白にしよう。
立ち止まり、朝日に手を伸ばして、
指の隙間から光を見ると、
風がそっと強く吹き、
横髪が乱れたから帰ろうと思った。
●朝の電車は日常を整えてくれる。
電車はいつもの橋を通過している。
旭で輝く大きな川は今日も穏やかだ。
ドアにもたれて、景色を見ながら、
イヤホンから流れるお気に入りの曲で
今日も憂鬱とさよならしよう。
君がいない毎日は彩りに欠けていて、
退屈な毎日を繰り返しているよ。
ジンジャエールの辛さのように
すっきりした日常は無理みたいだから、
たまに涙もろくなるの。
昔にトリップして、
今を忘れそうになる。
だから、前を向くしかないんだよ。
●このまま時が止まれば、ずっとこの青さを保てるのに。
夕立でびしょ濡れになった君と、
公園の屋根がついたベンチで、
雨が止むのを待っている。
制服姿の濡れた君はとても涼しくて、
もし、このままお互いに抱き合ったら、
一瞬でここが秘密基地になりそうだ。
君を見ると、君は穏やかに微笑んでくれた。
「このまま、止まなきゃいいのに」と君が言った瞬間、
コーラが瞬間冷却されたように、
世界がぎゅっと凝縮した気がした。
●たまに君の表情を思い出すと青い気持ちが瞬間的に蘇る。
アイスコーヒーに入れた
クリープは流氷の欠片みたいに
表面に渦を作っている。
赤いストローでかき混ぜながら、
朝の憂鬱も一緒に溶けてくれたいいのにって思った。
一口、含むといっぱいの苦味が広がり、
そんなのを一瞬で忘れさせてくれる。
数年前の君の微笑みを思い出した。
泣いているようなその笑みは、
その日、世界で一番美しかった。
●君の微笑みを忘れない。
君といると時空を超える。
ひまわり畑の真ん中は世界の中心に思える。
上空の青に飛行機が2本の白線を描き、
轟音を立てて消えていった。
「もし、私がきえたらどうする?」と
君はおどけた表情で僕に聞いてきた。
だから、僕は君の手をそっと繋いだあと、
まっすぐ先を見つめて、
遠くの山の緑に意識を飛ばす。
君に催促されたから、
君の方を振り向き、
思いっきりだきしめたら、時が止まった。
●ヒロインは君だ。
離れたくない。
海まで続くこの下り坂を歩いて行こう。
ずっとこのままでいようと安直に思える君は素敵だ。
遠くの踏切が赤く点滅し始めた。
海の先には入道雲が立ち込めている。
袖付きの青いレトロワンピースを
君は華麗に着こなしていて、
君がヒロインの物語は出来上がっている。
急に君が立ちどまった。
「手を繋いで」
穏やかな声でそう言ったあと、
君は僕に手を差し出した。
●君なんて永遠に封印されたらいいのに。
放っておいてほしいから、
電球色のカフェでぼんやりとしている。
都会はこういう時だけ優しくて、
切なくて、擦り切れた心を癒やしてくれる。
夜更けに君から来たメッセージは、
キャンディを溶かして、飴細工を作るくらい
すべてを飲み込むことができない。
コーヒーの横に置いたiPhoneをなぞり、
指先で履歴をたどる。
今年の夏は心がすれ違っていた。
もし、なんてもう、ないのかもしれない。
コーヒーを一口飲むと、
涙が頬を伝い、
鼻の奥が重くなった。
●あの夏が色褪せないから、胸が締め付けられる。
遠くから塩素の匂いがする。
アスファルトに陽炎。
オレンジのカーブミラーに映る自分の姿。
一瞬立ち止まって鏡の世界を見る。
割れに返って、急いでいるのを思い出す。
溶けてしまいそうな気持ちで、
胸が締め付けられて、
憂鬱と一緒にダンスしているみたいだ。
遠くなった思い出が胸をかき乱すよ。
ピアノの調律が上手くいかないように、
君があの夏に言ったことが離れない。
すべては幻だった。
入道雲みたいに。
●楽しいことを増やせば、タイムリープになんて憧れない。
満たされない心は空っぽで、
何をすればいいのか、わからない。
今日も当たり前のように改札口は混雑していて、
急いでいる人たちに圧倒される。
上手くいかないことばかり思い出すから、
スタバに入った。
茶色の店内は少しだけ優しくて、
苦いコーヒーで落ち着けと居活かせる。
あのときのまま、
夏がタイムリープしていれば、
きっと、大人になる痛みを
知らないで終わったんだろうな。
●夏色の君が好き。
夏が無限に続けばいいくらい、
公園の芝は青々としている。
君と二人きりで木陰のベンチで話している。
「このままだったらいいのに」と
君はポツリとそう言ったあと、
穏やかな風が吹いた。
ふと、君の手に触れたとき、身体に弱い電流が走った。
君の微笑みは無敵で、無邪気だから、
水槽の中に二人で閉じ込められていいと、
思えるくらい、
胸が締め付けられる。
こうして僕は君のことが好きになった。
●あの日、君と世界の果てへ行くことを約束した。
屋上で二人きりで、
世界の果てみたいな夕日を眺めた日、
君と恋に落ちた。
それは今でも続いたままで、
君と無限について、何度も何度も話して恋に落ちたんだ。
星の欠片を繋ぎ合わせて、
落下した星をそっと空に返すように
紡ぎあった言葉は今でも有効で
きっとこのまま手を繋いだまま、
裸足で砂浜を歩き続けることができるね。
君と退屈を抜け出して、
果てまで行きたい。
●つまらないヤツが君を汚染するなら、憂さ晴らししよう。
「うんざりするよね」と
君は頬にかかる前髪をいじりながら、
カフェの電球色に照らされ、
落ち着いたトーンになっている。
君の文句はクリープみたいに溶けて、
まろやかになるのは知っている。
先月、君の涙を見たのをふと思い出した。
退屈はつまらないヤツが作るんだと、
君の独自理論は空を切る。
退屈を蹴り飛ばそう。
街に繰り出し、忘れるまで刺激しよう。
●君と無限にこうしてたい。
砂浜で二人きりで海を眺めている。
手と手を繋いだまま、何も語らず、
時間はアイスのようにゆっくり溶けていく。
君と過ごす日々は退屈を忘れさせる。
変われないままでいいと甘く思う。
君の体温がちょうどいいと思えるのは、
きっと、出会ったときの思い出が、
瞬間冷却されて溶けていないからだね。
もし、この世からいなくなっても、
来世で、またこうして海を眺めよう。
二人で。
●夏は永遠くらいがちょうどいい。
ひまわり畑で白のワンピと
麦わら帽子の君は最強すぎて眩しい。
君の姿をiPhoneに残して、
いいねと伝えると君は柔らかく微笑んだ。
僕たちの先には入道雲が立ち込んでいる。
先の未来なんて何も考えたくない。
君の手を繋ぐと、君は握り返して、
「来年もまた見ようね」と
ささやかな永遠を誓った。
僕は離さないと強く決意を固めて、
君にキスした。
●波の音は優しい。
少しの憂鬱も一緒に連れ去って、
朝の海沿いをゆっくり歩きましょう。
夏の終わりをレモネードに溶かしたような
爽やかな風が柔らかく身を包んだ。
頭の隅に残っている辛い言葉も、
すべて忘れてしまいたいけど、
頭の中でぐるぐるするのは、なぜだろう。
波の音が穏やかだから、音に集中しよう。
●君は夏の幻だった。
心の傷が癒えないまま、
大好きな季節がそろそろ終わりそうだ。
笑いあったあの時がすでに遠く感じる。
葉の色は深くなり、
色づいたときには忘れられるかな。
長い間、公園のベンチに座り、
微温い憂鬱に浸り続ける。
考えがまとまらない日々を終わらせたい。
自分の中の時空が歪み言葉を思い出す。
優しさの数だけ涙が溢れてしまうのは、
どうしてだろう。
●今、息ができないのは過去が重いから。
カフェのオープンテラスで、
このままゆっくりしていたいけど、
季節は確実に巡ろうとして、
最高の季節がもうすぐ終わってしまう。
白いパラソルの下、影の中で一人、
ソーダ水の先に広がる海をぼんやり眺める。
置き去りにされた一瞬を
ふと思い出して、
少しだけ苦さを感じた。
もし、マシュマロのような
ふわふわとした気持ちを抑えられていたら、
もう少しだけ、息がしやすくなったのかも。
そう思うと、辛さが胸を占める。
だから、このまま、
憂鬱をソーダ水に混ぜたくなった。
●あなたがいないと何もできないことに、今更、気づいたって、もう遅い。
あなたのことを忘れられないまま、
夏はもうすぐ終わるね。
電車は今日は轟音を立て、大きな川を渡る。
イヤホンからは憂鬱なメロディ。
気持ちを曲に合わせる。
好きになれない自分は変われないまま、
頭の中は渦を巻いて、
つらい気持ちが黒くなるよ。
シャーベットで流して、気持ちを清めたいな。
指摘されたところを直すから、許してほしいな。
だけど、そんなの無理なのはわかっている。
単純にあなたが好きだった。
●今この瞬間、関係性を変える。
「雨は憂鬱だね」と君がそう言った。
カフェから見える街は今日も濡れている。
君はボブの髪先を右手でいじりながら、
カウンターの先の窓に映る自分の姿を見ている。
期間限定のレモネードが入ったグラスは涼しく濡れていて、
窓越しの世界に空飛ぶペンギンが入れば
最高なのにと、ふと思った。
君との関係は友情を超えて、
愛情にしよう。
それを口に出す勇気を振り絞れ。
●次は休日に会いたいな。
昨日のバイバイが朝になると、
リアルになるのは現実が来るからで、
とりあえず、カフェで身体を馴染ませるよ。
コーヒーの友のクロワッサンをかじるとサクサクしていた。
前髪を一度かきあげたあと、
ふと、思い出した。
昨日の夜、楽しかったと、LINEで伝え忘れていた。
遅れてごめんね
昨日はありがとう
楽しかったよ
来週はずっと一緒にいたいな
と、打ち込み、
数秒見つめたあと、
最後の1行だけ消して、送信した。
【初出】
1章
完全書き下ろし
2章
蜃気羊Twitter(@shinkiyoh)
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2022.6.1~8.31