それにしても…本当に19歳?
なんだか随分歳上のような雰囲気よね、この人…。

見た目や言動は優しげな青年だが、その瞳の奥は何を考えているのか読めなくて妙に緊張してしまう。

というか、この料亭の庭めっちゃ広い…。

綺麗に管理されている庭には、花や木が植えられており、小さな池まで作られていた。

道沿いにしばらく歩いていると、石造りのベンチが見える。

「こちらで少し休憩しましょうか?」

幸次郎さんが私にそう言って、座るようにエスコートしてくれたため、素直に彼の手を掴み私が腰をおろした時。

「…貴女、椿さんじゃないですよね?」

ニコッと笑う彼に私は表情が凍りついた。

「え…?」

「実は1度椿さんにはお会いしたことがあるんです。確かに顔はよく似ていらっしゃるけど、声質が違います。彼女の方がもう少し声が高い」

「なっ…」

嘘でしょ?バレてる…?

サーッと血の気が引いていく。

うまく代役をこなしていると思っていたのに。
声質ってことは、最初から彼は気づいていたのだろうか?

「……」

「…っと、そんなに青ざめた顔しないでくださいよ。別に父にバラすつもりはないですから。というかそもそもバラすつもりなら最初から話してますし」

思わず、黙り込んでしまう私に対して、幸次郎さんはあわてた様子で弁明した。