「わかりました…。言ってまいります」

心の中でため息をこぼしつつ、私は重い腰を上げる。

そんな私に合わせるように、前の席の幸次郎さんも立ち上がった。

「椿さん、行きましょうか」

「えぇ。喜んで」

サッと私に手を差し出し、エスコートしてくれる彼の手を取り、私は部屋の外へと歩き出した。

その時、吉澤さんの「いやぁ〜お似合いな2人ですなぁ」なんて声を背中に受けたが、私は思わず苦笑いを浮かべてしまう。

いやいや。無理です…。
とりあえず、私は今日が丸く収まればお役御免なんですからね。

元の時代に戻る方法を探すのも、今回の代役お見合いが済むまでは後回しにしているのだ。

とりあえず、今日が無事に済めば明日は情報収集しないと。そして、もう一度菖蒲神社…あの場所に行かないと。 

1人頭の中でそんなことを考えていると。

「椿さん、何か考え事ですか?」

クスッと小さな笑みを溢し、幸次郎さんが声をかけてきた。

「あ、すみません…。ちょっと緊張してしまって…」

ハッとして、私は横を歩く彼に笑いかける。


危ない、危ない。
今はこっちに集中しないと…。