『はい。わかりました。撫子さんも早く元気になってくださいね!病院にもお見舞いに行きますから』

なるべく彼女を勇気づけようと、笑顔を浮かべた私に対して『ありがとう、葵さん…』そう言った撫子さんの表情が私の脳裏に焼き付いていた。

撫子さん、本当に早く治るといいな。

椿さんも、撫子さんが病院に戻ってすぐに体調を崩しちゃったし、メンタル面も身体に影響があったのかもしれない。

「それはそれは…。奥様も早く治るといいですなぁ。お大事にとお伝えください」

「はは。吉澤さん、ありがとうございます。妻も喜びますよ。とまぁ、暗い話はこのくらいにしましょう。椿」

「は、はい。お父様…」

普段は"菊雄さん"と名前で呼んでいるから"お父様"と呼ぶのにはまだ慣れない私は、思わず声が裏返ってしまった。

「食事もそろそろ終わる頃だ。幸次郎くんと少し庭でも散歩してきたらどうだい?」

「おぉ。そりゃいい。幸次郎、椿さんをエスコートしてあげなさい」

ちょっと、菊雄さん…!?

まさかの発言にギョッとして隣に座る菊雄さんに視線を送るも、ニコニコと微笑まれるだけ。

さらには親2人から見つめられ、断れる雰囲気でもないことをすぐに悟った。

ちらりと、前に座る幸次郎さんを見るとニコリと笑顔で微笑まれてしまうし…。

…これは、行くしかないか。