どうしよう…。

いつも通りにと頑張ってはいるものの、緊張であまり食事が喉を通らない。

そのせいで、せっかくの美味しそうな料理にも、なかなか手を付けられない私。

そんな私をよそに親同士は、すっかりお酒が入って出来上がっていて…。

「いや〜。城崎さんにはいつも体調が悪いからと見合いを断られていたから、よほど椿さんを嫁に出すのが嫌なんだろうなと家内とも話をしてましてね。まぁ、これだけお綺麗だと納得ですなぁ」

「いや…あはは。体調のせいなのは本当なのです。椿は母親の撫子に似て身体が昔から弱いものですがら…妻の撫子もここ1週間ほど自宅療養をしていたのですが、また病院の方に戻りまして…」

表情を曇らせる菊雄さんを横目に私は、食べやすい果物に手を付ける。

そう菊雄さんの言う通り、撫子さんは1週間ほど前に体調を崩し、再度病院へ戻ってしまった。

元々、一時帰宅ではあったものの調子が良ければ、引き続き自宅で様子を見ても良いと主治医より許可をもらっていたらしく、あからさまに菊雄さんは落胆の色を見せていた。

『…っ。葵さん、椿のことよろしくね。私もまた体調が良くなったら帰ってくるから』

病院に戻る前の見送りで、私の手を握りそう呟いた撫子さんの力は弱々しく、私が少し力を入れたら壊れてしまうのではないかと不安になる。