なるべく上品に微笑み、私はお礼を述べた。
「ほぅ。奥様に似てお綺麗ですなぁ。これは縁談の話が多いでしょうに今回はうちを選んで抱いて嬉しいね。ほら、幸次郎、お前も挨拶を」
「はい、父さん」
スッと顎髭の男性の後ろから、物腰柔らかな青年が顔を出す。
この人が…椿さんのお見合い相手。
スラッとした長身。顔はそこまでイケメンという感じではないものの、見た目は優しそうだし、大人びた印象を受けた。
「城崎さん、椿さん、はじめまして。吉澤家次男の幸次郎です。今回はこのような場を設けて頂き、光栄です」
「立派な息子さんですな。ま、立ち話もなんですし食事でもとりながら話しましょう」
「そうですな。椿さんも緊張せずにいつも通り過ごしてくださいね」
「はい…。ありがとうございます」
菊雄さんのひと声で、お互い席についた。
私の横には菊雄さん、そして、向かいには幸次郎さんが腰を下ろす。
「女将、食事を運んできてくれ」
「かしこまりました。それでは…まずは前菜からお運びいたしますね」
吉澤さんが入口に佇んでいた女将さんに声をかけると、すぐさま料理が運ばれてきた。