「城崎様、吉澤様がご到着されました」

スッと障子が開き、顔を覗かせたのは先程の女将さん。

そして、その隣には50代くらいの顎髭を生やしたダンディな中年紳士と、紳士服に身を包んだ私より少し年上の男性の姿があった。

その姿を見た菊雄さんは、サッと立ち上がると。

「吉澤さん、久しいなぁ。元気だったかい?」

と笑顔で顎髭の男性に近づき、握手を求める。

「城崎さん、久しぶりだね。そちらの噂は聞いてるよ。商売繁盛してるようで何よりだ」

それに応じた男性も嬉しそうに握手を交わしていた。

はっ!座ってちゃだめだ。私も挨拶をしないと…!

そう思いたち、慌てて腰を上げた私は菊雄さんの少し後ろで2人に向かって会釈をする。

「おぉ…。こちらが椿さんだね?身体が弱いと聞いてはいたけれど調子はどうかな?」

「吉澤様、お初にお目にかかります。城崎家の長女、椿と申します。私の体調をお気遣いくださり、ありがとうございます。最近は少し調子もよくなぅてまいりました。今日は、こうしてお会いできたこと光栄ですわ」