「私は…」
そこまで言いかけて私は口をつぐむ。
本当は"年の離れたお姉ちゃんがいる"と椿さんに言いたかった。
けれど、今、私は"記憶がない"ということになっているし。いったい、どこまで話をしてよいものか考えあぐねてしまう。
「あ…。葵ちゃん、記憶がなかったのよね…。ごめんなさい。言いにくいこと聞いてしまって」
落ち込む彼女の様子に私はフルフルと首を横に振った。
「いえ!気にしないでください…!確かに記憶は…ないですけど、なんだか私にも兄弟がいたんじゃないかなって気はするんです。もしかしたら、椿さんみたいなお姉さんかもしれないですね。それに百合さんにも会ってみたかったなぁ…もしかしたら三つ子みたいって言われてたかも」
私がそう言って、椿さんに笑顔を向けると彼女はホッとしたような表情を浮かべる。
「ふふ。私もそんな気がしてきたわ…。きっと百合が生きてたら葵ちゃんと合わせて…友達みたいに仲良し姉妹になれてたと思うわ」
「ですね!」
その後は、和気あいあいとお茶の時間を楽しんだ私達。
そして、他愛もない話に花を咲かせていた時。
サッと私の部屋の障子が勢いよく開いた。