それだけ言い残し、サッと部屋を出て行く椿さん。

1人部屋に残された私は、小さく息をつく。

城崎の家の皆はよくしてくれるし、居心地はいいのだけれど、まだ如何せん来たばかり。
緊張してしまって少し少し疲れてしまった。

「お見合いか…。上手く椿さんの代わりができると良いんだけど」

ポツリとこぼれた本音。

というか、彼氏だっていないのに、先にお見合いの経験をするとは思わなかったなぁ。

昔は、今より結婚も早かっただろうし椿さんの年頃でお見合いは当たり前なのかもしれないけれど、現代で言えば、17歳なんてまだまだ子どもなのに、もう結婚のこととか考えないといけないのね…。

とりあえず、相手にも失礼のないように最低限のマナーくらいは知っておかないと。

作法とか難しそうだし、私にちゃんとできるのだろうか…。

そんなことを考えて、憂鬱な気分になり肩を落とした時。

「葵ちゃん、お待たせ。羊羹とあとお茶も持ってきたよ」

羊羹とお茶をのせたお盆を持って、椿さんが障子の扉をまさかの足先でサッと開けた。