その日の夜、母に許可をもらった私は、しばらくの間寝泊まりをさせてもらっている1階の客間で、椿おばあちゃんの日記帳を眺めていた。

字が達筆すぎて読めない部分も多いけど、何か菖蒲さんに繋がるヒントを探してかろうじて読める部分に目を通していたのだ。

日記のわかる部分を整理すると、どうやらこの日記は椿おばあちゃんが16歳〜18歳の間に書かれたもの。

時代は1927年頃、昭和になったばかりの頃のようだ。

椿おばあちゃんがこまめに日付を書いてくれてるから何年なのかわかるけど、昭和初期なんてイメージつかないなぁ。

それに…。

「うーん…何で菖蒲さんに関する詳しいこと書いてないのかなぁ。どこに住んでいるとか全然書かれてないし…」

菖蒲さんと何をして遊んだとか、何を話した等の情報はたくさん書かれているのに対し、どのような人物なのかについて不思議なことに詳しく書かれていない。

ただ、菖蒲さんとはじめて出会った場所がこの家からそれほど遠くない場所にある山奥の社だということがわかった。

日記によると、椿おばあちゃんは、体調が良い日に必ずその社を訪れ、お参りしていたらしい。