「そやなぁ。もう葵ちゃんは、うちの娘みたいなもんやしな。いつでも帰ってきたらええからな」

続けて、幸枝ちゃんのお母さんも私にそんな言葉をかけてくれて、思わず胸がいっぱいになる。

「ありがとうございます…」

幸枝ちゃん家族の優しさに触れて、私はこの時代に来たばかりのことを思い返していた。

もし、ここに来たばかりの頃、幸枝ちゃんたちに出会わなかったらどうしていただろう。

今となっては想像することしかできないが、現状も把握できずに路頭に迷っていたかもしれない。

今すぐには、何も返せないけれど…。
いつか絶対に恩返ししにきますから。

素性のわからない私に衣食住を提供してくれて、優しく接してくれた幸枝ちゃん家族のことは絶対に忘れないと、私はそう心に強く誓った。



「幸枝ちゃん、こんな感じで大丈夫?」

「うん。バッチリや。今日は葵ちゃんが手伝ってくれるから早くすむな」

その日は1日幸枝ちゃん家族のお手伝いをして過ごすことにした。

畑作業やら、炊事など慣れないことで、正直役に立ったかはわからないけれど…。

それでも、幸枝ちゃんたちから「助かるわ〜ありがとう」と言ってもらえて救われる。