「大丈夫…とは言い切れないですけど。椿さんには初対面なのによくしてもらったし。私で何かお手伝いできることがあれば協力してあげたいなって…。身体も体調がよくなさそうだったし…」

少し顔を伏せ、私は言葉を紡ぐ。

椿さんのために何か手伝いたいって気持ちは本当だし、それにいつまでも幸枝ちゃん達の家に居候(いそうろう)するわけにもいかないと思っていたから正直ありがたい申し出ではあった。

「…葵ちゃんがいいならいいんやけど…。でも、この家いなくなっちゃうのは寂しいなぁ」

幸枝ちゃんが少し言いづらそうに口を開いた。

「幸枝ちゃん…」

そんな風に思っていてくれていたことが嬉しくて、私はギュッと胸が痛むのを感じる。
ここに来てから、お世話になりっぱなしで、幸枝ちゃん家族に何も返せていないことに申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

「幸枝、葵ちゃんが決めたことなんやから。応援してやらな」

ポツリとつぶやいたのは、今まで黙って話を聞いていた幸枝ちゃんのお父さん。

「でもな、葵ちゃん。辛くなったり嫌なことがあったらいつでもうちに戻ってきてくれてええんやからな?もう、葵ちゃんはうちの家族みたいなもんやから」