「そうしてもらえると助かります。私も椿さんの代わりとして行くわけですし、私の失敗で彼女に迷惑をかけたくないので…」
きっぱりとそう言った私に対して。
「葵さん、本当にありがとう…。そしたら家庭教師はこちらで手配させてもらう。よければ明日からうちに泊まりなさい。椿には、私から上手く言っておくから」
と、菊雄さんは声をかけるとゆっくり立ち上がる。
そして。
「朝早くから急にお邪魔して悪かったね。また街に来た時はうちの店によってくださいな」
最後に幸枝ちゃん家族に会釈をすると、家の庭先にとめてあった車に乗り込んだ。
「それじゃ、明日迎えをやるから葵さん、よろしく頼むよ」
「はい、わかりました」
大きく首を縦にふる私を優しげな表情で見つめると菊雄さんは手を上げ、車で去っていく。
そんな彼の乗せた車を見送りながら、私は小さくため息をついたのだった。
✼•✼•✼
「葵ちゃん。さっきの話…大丈夫なん?椿お嬢さんの代わりなんて。荷が重いんじゃ」
「そうや。しかもお見合いやなんて…」
菊雄さんを見送った私が家の中に戻ってきた途端、心配そうな表情で駆け寄って来てくれたのは幸枝ちゃんと幸枝ちゃんのお母さん。