「この通りだ…!」と、さらに深々と頭を下げる菊雄さんに私はなんと声をかけていいのかわからず、困り果ててしまった。

「このこと椿さんは…?」

「椿には内密だ。昨日、椿から葵さんの話を聞いてね…このことを思いついて…。君を気に入っているようだったからね。あの子が知ったら怒るだろうな」

フッと自嘲的な笑みをこぼす菊雄さんはどことなく寂しそうに見える。

きっと、彼自身も悩んだ末の頼みなのだろうと察することができた。

「…わかりました。椿さんにはお世話になったし、私が代わりをしないと椿さんも困っちゃうんですよね?」

「すまない、葵さん。本当に形だけのお見合いでいいんだ!君にこれ以上、迷惑が罹らないようにするから」

私の言葉に安堵した様子の菊雄さん。

再度、頭を下げると。

「お見合いは2週間後。君も先ほど不安そうにしていたからよければ明日からしばらくマナーを含めて家庭教師をつけようと思うがどうだろうか?」

そんな提案をしてくれた。