「え…?」
何で椿さんのお父さんが私に頭を…?
ていうか、頼みって??
私に向かって頭を下げる姿に戸惑ってしまう。
その時。
「…椿の身体が弱いことは君も昨日見て知っているだろう?ちょっとした風邪でも長引いてしまうくらいで」
神妙な面持ちで語りだした菊雄さんに私はコクリと頷いた。
「はい…」
「実は前々から、あの子に縁談がきていてね。うちのお得意様のご子息なんだが、椿は病弱だし…。お見合いの日に限って体調を崩してしまって…。何度も延期になってしまっているんだ。そこで、椿の代わりに、よく似ている君に代役をお願いしたいと」
「…わ、私がですか!?」
あまりにも予想外な頼みに私は目を見開く。
いやいやいや、無理があるでしょう。
確かに少しだけ椿さんとは似てるかもしれないけれど、所作や動作は似ても似つかないというか…。
いかにもお嬢様な椿さんと、平凡な私じゃ釣り合いがとれない。
「無理な頼みは承知の上。ただ、こう何度も断っていると相手方にも申し訳なくてな。もちろん、結婚はしなくていい。ただ、1度、見合いの場を持つだけでいいのだ…。椿の代わりを頼まれてくれないだろうか?」