部屋の中にあった机の上に、お盆を置き、「それじゃ、失礼しますよ」と部屋を出ていこうとする泰葉さん。

私はそんな彼女に向かって。

「あの…!よかったらこのお饅頭…3個あるので。お仕事終わりにでも食べてください」

と先ほどもらった饅頭のうち1つを手渡した。

差し出された饅頭を見つめ、泰葉さんは驚いたように目を丸くする。

しかし、次の瞬間には「ありがとね」と優しい口調でお礼を言うと、私の手から饅頭を受け取ってくれた。

「休憩中にいただくわ」

最後にそれだけ言い残し、部屋を出ていく彼女の背中を見送った後、私は心の中で小さく息を吐く。

とりあえず、目的の椿さんには会えたし、彼女から昔あった神隠しの話も聞けた。

けど。

これからどうしよう…。

結局、椿さんは当時の神隠しの出来事は覚えてないのだから手がかりは、ここでついえてしまった。

いっその事、素直に椿さんに私の話をしてみる?

でも、普通に考えて「未来から来たあなたのひ孫です」なんて言ったところで信じてもらえるか怪しいし。

最悪、頭がおかしいと思われて病院に連れて行かれたりするかも…。