キッパリとそう言い切る彼女の瞳は嘘を言っているようにはみえなくて。

「まぁ、最近は体調崩して行けてないけれど…また元気になったらお参りに行くつもり。お父様には内緒だけどね」

コソッと、声を潜めた椿さんは、まるで悪いことを企む子どものようにあどけない笑顔を私に向けた。

「そしたら、早く元気にならないとね」

「えぇ。でも、もう十分元気よ?食欲もあるし。そう言えばちょっと小腹空いたわね。泰葉さんに何かお菓子でも持ってきてもらいましょうか」

そう提案した彼女の言葉に。

「…あ!そうだ、これ…」

私は先ほどもらった饅頭の存在を思い出す。

そもそも、このお饅頭は店のおばさんが私と椿さんを間違えてタダでくれたわけだし、もとを辿れば彼女のものだ。

「実は、さっき町を歩いていた時に椿さんに間違えられて、お饅頭をいただいたの。だから、これよかったら…」

持っていた紙袋をソっと椿さんに渡す。

最初は不思議そうな表情で袋を受け取った彼女だったが、中身を確認してパァッと表情を明るくする。

「これもしかして、道沿いのお饅頭屋さんの?私、ここのお饅頭大好きなの!おばさんったら、私と葵ちゃんを間違えたのね」