「あ、あの。お邪魔します…」
「えぇ、どうぞ。あ!座布団出さないとね」
「え!?だ、大丈夫ですから。そんなに急に立ち上がったら危ないです!」
座椅子から勢いよく立ち上がり、奥の襖から座布団を持ってこようとする椿さんに私は慌ててしまう。
結局は、私が椿さんに教えてもらい自分で座布団を用意した。
「ふふ。葵ちゃんったら、お母さんみたいね。そんなに心配しなくてももうほとんど治ってるのに」
「まだ万全じゃないなら用心したほうがいいですから」
クスクスと笑いを堪える彼女の近くに私は座布団を置きつつ、声をかける。
「そうね。気をつけるわ。ねぇ、それよりも葵ちゃんってこの辺では見たことない子だけど、お家はどこ?あと、私とあんまり変わらないくらいに見えるけど、歳はいくつ??」
椿さんは、自身に顔がよく似ている私に興味津々な様子で矢継ぎ早に質問を重ねてきた。
なんと答えるのが正解なのか一瞬迷ったが…。
「…山の麓の村から来ました。今年で17歳です」
と、当たり障りのない回答を返す。