半ば強引に泰葉さんへそんなことを言い放つ椿さん。

ニコッと優しげな笑みを浮かべてはいるが、そこには断れない雰囲気が漂っていて…。

椿おばあちゃんって見た目と違って結構、頑固なんだなと私は内心苦笑いを浮かべる。

「……っ〜。ハァ…。椿さんったら1度決めたら絶対に曲げないんやから…。わかりました、旦那様には秘密にしておきます。でも、この部屋からは出ないことと、夕方頃には旦那様も帰宅されるはずなので、それまでに彼女には帰って頂くこと。この2つは守ってくださいな」

少し迷いつつも、小さくため息をついた泰葉さんは私と椿さんに向かってキッパリと言ってのけた。

そのラインがどうやら彼女にとっての妥協点のようだ。

「わかったわ」

「あ、私も…夕方には帰ると約束してたので」

私達が肯定するのを見届けると、泰葉さんは安心したように息をつく。

「…じゃあ、お茶をお持ちします」

「お願いね、泰葉さん。葵ちゃんはこっち入り?」

お茶の用意をするため、もと来た廊下を去っていく泰葉さんを見送っていると、椿さんから部屋に入るように促された。