曖昧に微笑み、私は素直に口を開く。
"人違い"というワードにようやく合点がいったようで私の腕を掴んでいた手をソっと離した泰葉さん。
「世の中、似てはる人は何人かいるって話は聞いたことあるけど、あなた…葵ちゃんは椿さんと双子みたいにそっくりやわ。ごめんなさいね…。私は小野泰葉。ここ城崎呉服店で働いとるんよ。私があなたを椿さんと間違えて連れてきてしもうて…びっくりしたやろ?」
私の姿をまじまじと見つめつつも、頭を下げて謝ってくれた。
「い、いえ…!ちょっとビックリはしましたけど…全然気にしてないので」
それに彼女のおかげで、こんなに簡単に椿さんと会うことができたんだし。
泰葉さんにこっちがお礼を言いたいくらいだ。
そんなことを内心考え、笑顔を浮かべていると。
「まぁ…。何て良い子なんやろ。椿さんもごめんなさい。私の勘違いで…ここまで連れてきてしもうて。彼女は何も悪くないから…」
感動した様子で泰葉さんは私を庇ってくれる。
すると。
「ふふ。泰葉さん、別に私は怒ってないから気にしないで大丈夫よ?それに…私もこんなに自分に似てる子に会うの初めて…。ねぇ、葵ちゃん…だったわよね?よかったらちょっとお茶して行かない?私、病気で部屋から出たら怒られるから、ちょうど話し相手が欲しかったの」
柔らかな笑みを浮かべた椿さんは、小首を傾げて私にそんな提案をしてきた。