そんな話を聞くと、少しだけ不安になる。

はたして今日、突然私が会いに行ってもいいものなのだろうか…と。

しかし、私もせっかくここまで来たのだ。
とりあえず椿さんにひと目だけでも合わなければ。

再度、意を決し私は足を進めたのだった−−。



その後、2つ目の曲がり角も無事に過ぎ、とうとう3つ目の曲がり角を発見する。

ここだ!この角を右に…。

次郎さんに言われた通り、3つ目の角を右に曲がった時。

「うわぁ…大きな家」

私の目に飛び込んできたのは『城崎呉服店』と書かれた大きな看板が掲げられている立派な屋敷だった。

嘘…。
椿おばあちゃんって実は、とんでもなくお金持ちの家のお嬢様だったのかな。

あ然として私が屋敷の前に立ち尽くしていると。

カラカラ…。

呉服店の入口の扉が開き、中から綺麗な着物に身を包んだ40〜50代くらいの女性が出てきた。

「あら?そないな所で立ちつくして…どうかしはったん?」

とっさに声をかけられ、私は困惑しつつも、その女性の顔を見つめる。

…綺麗な人。

着物から覗くほっそりとした白い手。
スッと通った鼻筋に小さな赤い唇。

切れ長の瞳と目があった瞬間。

その女性はハッとしたように目を見開いて、私の方に駆け寄ってきた。