「まぁまぁ。なんだか少しふっくらしたんやない?顔色もいいし、久しぶりに顔見ておばさん、安心したわ〜。ほら、椿ちゃん、これ持って行き?もっと食べてお肉つけんとまだまだ細いんやから」
ケラケラと笑いながら、紙袋に数個の饅頭を詰めると私に「はいっ」と手渡してくれる。
「いや、あの…私は」
"人違いです"と言う前に。
「そしたら、旦那さんにもよろしゅう。また買いに来てな〜」と、さっさと店の中に戻ってしまうものだから残された私はポツンとその場に立ち尽くすことしかできなくて。
ど、どうしよう…これ。
人違いのうえ、タダでもらってしまった饅頭の紙袋を胸に私はしばし考え込む。
椿さんに会ったら、渡せばいいか。
あのおばさんも椿さんにってくれたわけだし…。
1人そんな結論に至った私は、お店に向かってペコっと小さく会釈をするともらった紙袋を大事に抱えた。
それにしても、椿さんってやっぱり身体が弱いんだな。さっきの和菓子屋のおばさんも最近、顔見てなかったって言ってたし…。