そう言い放ち、豪快に笑う次郎さん。

幸枝ちゃんのお父さんとはかなり仲が良いようで「ま、あがれや」と嬉しそうに目を細めている。

「ありがとよ。でも今日は玄関先で。夕時やし、春江も早めに帰って来いってうるさくてな」

「そうか。まぁ、春江ちゃんは怒らせたら怖いからなぁ。っと、話がそれたわ。それで頼みってなんや?そこにいる嬢ちゃんとなんか関係あるんか?」

チラリと次郎さんの視線が私に移り、思わずビクッと身体が跳ねた。

「あぁ、この子は葵ちゃんって言ってな…。幸枝の友達や。まぁ、詳しく話せば長くなるから手短に言うと…明日野菜売のついでに次郎の馬車に、この子を乗せてってもらえんやろか?葵ちゃん、町に用事があってな」

幸枝ちゃんのお父さんは、次郎さんの問いかけにコクリと頷いた後、要件だけ掻い摘んで彼に伝える。

「町に?別にえぇけど。どうせ仕事で明日も行かないとやし。そのくらいならお安い御用や」

二つ返事で了承してくれた次郎さんに、私は「ありがとうございます!お願いします」と頭を下げたのだった――。