ホカホカの白いおにぎりと、黄色の沢庵。
現代では、質素なのかもしれないが今の私にとってはファミレスのハンバーグより魅力的に見える。
美味しそう…。
思わずゴクリとつばを飲んだ。
寺までの道のりで、すっかりお腹が空いていた私は「いただきます!」と手を合わせると早速おにぎりに手を付ける。
それは幸枝ちゃんも同様だったようで、嬉しそうにおにぎりを口に運んでいた。
「美味しかった〜。ごちそう様です」
「ごちそうさんでした」
2人で手を合わせ、食後のお茶に手を付ける。
そのタイミングを見計らってか、幸枝ちゃんのお母さんは、「それで…住職さんは何て?」と私達に問いかけてきた。
「うん…!母さん実はね。なんと、葵ちゃんと似たような経験をした人が町にいるらしいんよ。商家のお嬢さんで"椿さん"って言うんやって」
幸枝ちゃんがそう言った瞬間。
「椿さん…?もしかして、城崎呉服屋のお嬢さんの?」
幸枝ちゃんのお母さんは目を丸くして口を開いた。