「…ゴメンね、幸枝ちゃん。神社まで付き合ってもらったのに何も思い出せなくて」
幸枝ちゃんの家までの帰り道、申し訳ない気持ちでいっぱいの私が顔を伏せていると。
「何言ってるん?気にしないでええよ。そんなことより、明日は椿さんに会えるとええな。葵ちゃんと同じような体験してはるし、きっと記憶を取り戻すきっかけになるはず!」
優しく背中をポンッと叩き、励ましてくれる幸枝ちゃん。
そんなポジティブな彼女に少しだけ気持ちが救われた――。
その後、私と幸枝ちゃんは無事に山を下り、家にたどり着く。
太陽はちょうど私達の真上あたりに位置しており、時計を見ていないので正確な時間は分からないが、おそらく正午くらいだろうと察することはできた。
「幸枝、葵ちゃん、お帰り〜。疲れたろ」
畑仕事をしていた幸枝ちゃんの両親が、私達の姿見て、駆け寄ってきてくれる。
「せっかくだし今からお昼にしようね。食べながらでも、住職さんの話も聞かせてちょうだい」
幸枝ちゃんのお母さんは、そう言って、台所の方からおにぎりと漬物を持ってきてくれた。



