ピクッ
"椿お嬢さん"
住職から出たその名前。もしかして…。
「ちゃうよ。椿じゃなくて葵ちゃん」
すかさず幸枝ちゃんから入った訂正に、住職は「え?」という表情を浮かべつつ、再度私の姿をジッと見つめた。
「葵ちゃん…。そうか、よく見れば確かに違うなぁ。すまないね、知り合いのお嬢さんにえらい似てたから」
住職は、申し訳なさそうに頭をかく。
「私に似てるお嬢さんって…誰ですか??」
「あぁ。町に住んでる商家のお嬢さんだよ。名前を椿さんと言ってね。菖蒲寺には、よくお参りに来てくれてはったんやけど、最近はとんと姿が見えないから何かあったのか心配しててなぁ。椿お嬢さん病弱やから…」
"椿"と言う名前といい、"病弱"であることも私の曾祖母の椿さんの条件に一致する。
間違いない。椿お嬢さんは、おばあちゃんのことだ!
「あの!その椿さんって言う方がどこに住んでいるかご存知だったら教えてください。あと、住職さんは"菖蒲さん"って方をご存知ないでしょうか??」
確信を持った私は、住職に詰め寄るように続けざまに質問を投げかける。