菖蒲…神社か。

綺麗で大きな寺よりも、あんなに小さな神社が気になるなんて…。

なんでだろう…?

「葵ちゃん〜!早くー!こっちやよー!」

いつの間にか石段を登りきった幸枝ちゃんが上の方から手を振っている。

「う、うん…!待って!」

私は後ろ髪を引かれつつも、とりあえず石段を駆け上がり、幸枝ちゃんに続き、寺の中へと足を踏み入れたのだった――。


本堂の方へ向かう私達。

その時、障子が開いて中から坊主頭で、袈裟を着た70代くらいの初老の男性が出てきた。

おそらくこのお寺の住職さんなのだろう。

「あ、住職さーん、おはようございます」

「おや、幸枝ちゃんかい?朝早くからどうかしたんか?」

幸枝ちゃんが大きく手を振って声をかけたことで、住職さんが私達に気づいて目を丸くした。

「あのな、今日はちょっと相談が…」


「相談?何かな??まぁ、こんな所で立ち話もあれやから幸枝ちゃんこっち入り。隣のお嬢さんも…ん?誰かと思えば椿お嬢さん?」