若干の申し訳なさを感じつつ、私は幸枝に促され石段を登りはじめた。

10段ほど登った所で、私は不意にくるりと後ろを振り返る。

うわぁ…綺麗。あ、あの辺りが幸枝ちゃんの家かな?

青々とした山が広がり、その下には畑やら田園風景。そして、さらにその奥には町だろうか?建物が密集しているように見える。

町…。今度はそっちの方にも行ってみないとだ。

そんなことを考えながら、遠くの景色から、近くの山中に視線を戻した時。

…え、鳥居?

お寺の近くの草むらの中に見えた赤い小さな鳥居。その奥には何かを祀っているのか小さな祠が見えた。

古いが、周りの草は刈られていて手入れはされているようだ。

「ね、ねぇ!幸枝ちゃん、あの鳥居って…?」

なぜかその鳥居が気になって、先を行く幸枝ちゃんに思わず声をかける。

「ん?鳥居…?あぁ、あれは神社やよ。菖蒲寺と同じで私達は菖蒲神社って呼んでる。お寺さんの近くにあるのは珍しいかもしれへんねぇ。無人やから、たぶん寺の住職さんが手入れしてはるんかね?」