「ごちそうさまでした」
美味しい朝食に私はすっかり食べすぎてしまい、お腹を軽くさすりながら自分が食べた分の食器を流し台に持って行った。
「はい。お粗末様」
幸枝ちゃんのお母さんは、そう言って、私からお皿を受け取ろうとする。
しかし。
「あ、私が洗います…!何も準備もしてなかったしこのくらいさせてください」
着物の袖をまくりつつ、私は笑顔でそう言ってのけた。
「あらそう?じゃあ、お願いするわ〜。葵ちゃん、おおきに」
「いえ、これくらいなんてことないですから。任せてください」
と、気合をいれる私。
すると。
「葵ちゃん、私もするわ。2人でやったほうがええよ」
サッと私の隣にやってきた幸枝ちゃんはたらいに入った水の中に食器をいれると、手慣れた様子で洗い始めた。
「そうだね。ありがとう…」
「はよ、お寺さんにも行かなやし。母さん、この洗い物終わったらうちら早速お寺さん行ってくるわ。お昼には帰るようにするな」
母親に向かって、そう声をかける幸枝ちゃんは話しながらもテキパキと洗い物を進めていて…。
結局、蓋を開けば、ほとんどの洗い物を幸枝ちゃんにしてもらっていたのだった――。