「ん…ご飯のにおい?」
翌朝、私は炊きたてのお米の良い香りで目が覚めた。
お母さん、今日は早起きだな…。そっか。もうすぐ帰らないとだもんね…今日中に片付け大まか済ませるって言ってたような…。
寝ぼけ眼で、ウトウトしていると…。
目の前の障子が開き、着物姿の女の子が顔を覗かせる。
「おはよう、葵ちゃん…!よく眠れた?」
「…っ!あ、おはよう…幸枝ちゃん」
一瞬、固まってしまった私だったが頭がハッキリしてくると一気に記憶が蘇る。
そうだ、寝ぼけてる場合じゃなかった。
私は、昨日…過去の時代にきたんだよ。
フルフルと首を横に振って、私はバッと飛び起きた。
その時。
「葵ちゃん、おはようさん。朝ご飯できたからこっちおいでな」
そう声をかけて、奥からひょこっと顔を覗かせたのは白い割烹着姿の幸枝ちゃんのお母さん。
「あ、私も手伝います…!ごめんなさい。何もせずに…」
「ええんよ。お客さんはそないなこと気にせんで?昨日は色々あって葵ちゃんも疲れてたやろうってわざと、起こさなかったんやし。さ、食べよか」
柔らかい笑みを浮かべ、手招きをする幸枝ちゃんのお母さんに誘われ、私は隣の囲炉裏がある部屋へ足を進めた。