不意に彼女の口から飛び出した"両親"の話題に私も気が重くなる。
お母さんも、菫おばさんも心配してるだろうな…。桜子おばあちゃんの荷物整理もまだ終わってないのに。
私の生きる時代に残された家族は今、どうなっているのか…。
そう気にしだしたら止まらなくなってしまった。
すると。
「葵ちゃん、私、余計なこと言うた…謝るからそないな顔せんといて?私もできる限り手伝うから、な?」
気づけば、幸枝はそう言って私の手をキュッと握りしめてくれた。
私がよほど不安そうな顔をしていたのだろう。
心配かけちゃったな…。
彼女の手の温もりを感じながら、
「うん…ありがとう。幸枝ちゃんがいてくれて心強いよ」
ポロッと溢れた私の本音。
その瞬間、幸枝は大きく目を見開くと。
「…ふふ。そない言うてくれるとうちもなんだか嬉しいわぁ。それじゃ、明日は早めに山のお寺さんに行こう?何か手がかりがつかめればええけど…。さ、今日は疲れたやろうし寝よう。夜ふかしはよくないで」
小さく微笑んだ彼女はそう言って、襖にしまってある布団を敷き始めた。
「わ、私も手伝うよ!」
何から何までお世話になるわけにはいかないと、慌てて布団を敷く手伝いを買って出た私。