幸枝ちゃんは両親に促され、コクリと頷き「葵ちゃん、こっち」と声をかけてくる。

私は再度、幸枝ちゃんのお父さん、お母さんにお辞儀をすると幸枝ちゃんの後について行った。

「ごめんな。あんまり綺麗な着物はないんやけど…これで我慢してな」

タンスの奥から、ゴソゴソと着物を持ってきてくれた幸枝ちゃんは申し訳なさそうにそれを差し出す。

彼女の手の中には、わりと着古した感じの着物が握られていて…。

「うちの家はそない裕福やないけんね、着物もお下がりが多いんよ。これも隣の家の姉さんのお古でね…」

少し俯いた様子の幸枝に私はフルフルと首を横にふると、「ありがとう。助かる!」と笑顔でその着物を受け取った。

貸してくれるだけで本当にありがたかった。確かに、幸枝ちゃんのお母さんの言う通りジャージで歩くのはかなり目立つと思うから。

「ねぇ…!うちな、葵ちゃんはきっとどこかの屋敷のご令嬢じゃないんかなって思うんよ。言葉遣いも丁寧やし…なんか雰囲気がその辺の村娘と違うっていうか…」

「そ、そうかな…」

「うん。うちはそう思うよ?きっと葵ちゃんの父さん、母さんも心配してはるやろうな…」