"母方の祖母、桜子が亡くなった"

と母の妹、菫おばさんから電話が入ったのがつい2日前のこと。

ちょうど高校の夏休みが始まったばかりの時期だった。

「…葵、お父さんも蓮華(れんげ)も仕事の都合ですぐには戻って来られないみたいなの。一緒に京都まで着いてきてくれる?」

菫おばさんとの電話が終わった途端、消え入りそうな声で話す母、牡丹(ぼたん)の言葉に私は小さく頷いた。

父は、現在単身赴任で遠方におり、すぐには帰ってこれず、12歳上の姉、蓮華は結婚して海外在住のため、これまたすぐには戻ってこれない。

そういう事情もあり、現在私は、母と二人で母方の実家がある京都にいる。

そして、ただ今、祖母の遺品等の整理のため、母や親戚の人たちと共に手分けして片付けの真っ最中なのだ。

「葵ちゃん、これお願いできる?」

「はーい。菫おばさん、了解!」

蔵の前に着くと、おばさんから大きなダンボール箱や年季の入った木箱等をいくつか手渡され、中身の確認わ仕分け作業を任される。

私は、それらの荷物を家の中の空いているスペースに置くと、ひと息ついた。

「…っけほ、埃っぽいなぁ」

本当に久しぶりに蔵から出されたらしい箱には大量の埃が被っている。

私は、それを縁側で軽く払い、まずは年季の入った木箱をそっと開けてみた。

…なにこれ?本??…いや、日記帳かな??