「葵ちゃん、ここが我が家よ。ゆっくりしていってな?」
ニコッと笑顔で手招きをする幸枝はそう言って、扉を開ける。
歩くこと数分で到着した家を見て私は目を見張った。
木造造りの立派な家の中には囲炉裏や釜戸まであり、しかも未だに使用しているようで近くには薪も準備されている。
すごい…!桜子おばあちゃんの家も古いなぁと思ってたけど…古民家をそのまま使ってるって感じ。
時代劇でしか見たことのないような家の造りが物珍しくて、キョロキョロ辺りを見回していると。
「葵ちゃん、ちょっと思ってたんやけどあんたそないな格好して…最近はけったいな服がはやっとるんやねぇ」
幸枝の母親からそんな言葉を投げかけられ思わずキョトンとした表情を浮かべてしまった。
「まぁ、母さんったら失礼やないの」
幸枝が少し興った口調で母親を嗜める姿に私は益々理由がわからず首を捻る。
え?この格好そんなに変…?
寝る時の服装のままだったからTシャツに黒の長ジャージだ。
確かに昼間の時間には少しラフすぎるかもしれないけれど…。
「葵ちゃん、ごめんねぇ。母さんったら…」