「葵ね、よろしゅう。目が覚めたらここにって…こんな畑のど真ん中に…?父さん、母さん…どない思う?」

怪訝そうな表情を浮かべる幸枝は、チラリと後ろに立っている大人の男女に問いかけた。

どうやら後ろにいた男女は彼女の両親らしい。

「そりゃ大変やったねぇ。目が覚めたら…畑の真ん中にいたなんて…神隠しにでもあったんやろか?どう思う、あんた?」

幸枝の母が考え込むように父親へ意見を求めた。

「いや〜、わしに聞かれてもさっぱりわからん。神隠しって言われればそないな気もするし…とりあえずお寺の住職にでも聞いてみたらどうね。そうや、家が近いからこんな所に座りっぱなしもよくないで、家で少し休みんさい」

「あ、ありがとうございます…」

3人の言葉に甘えて私はソッと立ち上がる。

その時。

あ…日記帳!

枕元に置いていた日記帳が足元に落ちているのに気づき、私はサッと手を伸ばした。

よかった…。手紙もちゃんとある。
とりあえず椿おばあちゃんの大事なモノはなくなってなかったみたい。

ホッと胸をなでおろした私は、手紙が挟まった日記帳を大事に抱え、3人の後に続いて歩みを進めたのだった――。