「椿おばあちゃん、手紙を渡してほしいんだ…」

漠然とそう考えた時。

――チリン、チリン。

わりと近くで聞こえてきたのは、涼やかな風鈴の音色。

この風鈴の音、私…どこかで…。

あ、そうだ。うちの客間に飾ってある風鈴の音…。

普段の生活では聞かない澄んだ綺麗な音色に思わず聞き惚れた。

私が小さい頃から飾られていた風鈴は、桜子おばあちゃんも大好きで縁側で2人でアイスを食べながら聞いていたことを思い出す。

『葵、この風鈴はね?私のお母さんが大事にしていたものなんだって』

『おばあちゃんのお母さん…?』

『そう。だから、私もとても大事にしてるのよ』

ふふっと、上品に微笑んだ桜子の優しげな表情。

そうだ、あの風鈴は…椿おばあちゃんの…。

…!?

そう考えた瞬間。

チリンチリンチリン、チリリン。

先ほどまで涼やかな音色を奏でていた風鈴が激しい音を立て始める。

…うるさいっ。急に何??

あまりの騒音に私は咄嗟に耳を塞いだ。