目を丸くする私に、コクリと頷いた椿さんは重い口を開いた。
「この前、お母様が菖蒲寺の話をした時にちょっと怒っていたの葵ちゃんも気づいたでしょう…?実はね、両親…特にお母様の方が私が菖蒲寺にお参りに行くことをよく思ってないのよ」
寂しそうに微笑む椿さんに私は小さく息を呑む。
確かにこの前、初めて撫子さんに会った時、菖蒲寺の話をした瞬間、空気が変わった気がしていたけれど…。
「どうしてお参りに行くのが駄目なんです…?」
素直に疑問に感じたことを尋ねた私に対して。
「…私が神隠しにあったこと前に話したでしょう?百合が埋葬されている菖蒲寺の付近だったし、お母様はあの場所をよく思ってないみたいで…。だから、前まではコッソリお参りに行ってたのだけど、お母様にバレてしまって…。そこからは全く行けてないのよ」
そっか…。
確かに撫子さんにとっては娘が消えてしまった場所だし、そこにまた行くのは良い気持ちはしないよね。
でも、椿さんは双子の妹さんのお参りに行きたいだろうし。