「いや〜。葵さん、昨日は本当に助かったよ。ありがとう。とりあえずこれで吉澤さんも納得してくれただろうし、後は当人同士の問題でということにはなったからね」
椿さんの代わりにお見合いをした翌日。
菊雄さんからはそんな風にお礼を言われた。
「 …いえ、私はうまく立ち回れたか微妙でしたし」
苦笑いを浮かべ、そう答えたものの菊雄さんは「そんなことない。ありがたかった」と言ってくれたのでとりあえず体裁は保てた様子。
椿さんはというと、昨日より体調は改善したみたいで朝、部屋を訪れた時は「葵ちゃん、おはよう。昨日は寝込んじゃってたからお話もできなかったわね。今日はお昼一緒に食べましょう」と笑顔で声をかけてくれたので一安心だ。
そうだ。幸次郎さんのこと、お昼の時にでもそれとなく椿さんに話を聞いてみよう。
彼は昨日、椿さんと会ったことがあるって言ってたし、もし少しでも気になっていたら彼女の記憶に残っているかもしれない。
それに、そろそろ私も元の時代に戻る方法を探っていかないと。椿さんに手紙のこと確認してみないと。
部屋の机の引き出しに大切にしまってある封筒の存在を思い出し私は強く心に決めたのだった。