ルーナはすべてを知っているとでもいうような目でエルドとリンを見た後、ギース達を馬鹿にするような瞳を向けて口を開いた。
「あのギルドはアイクが抜けたことで大きな負債を抱えた。そして、ギルドが負債を抱えれば、冒険者の方にもそのしわ寄せが行く。そしてその怒りの矛先は、一番の実力者を欠くことになった原因である貴様らに行くという訳だな」
ルーナに詰められたエルドとリンは誤魔化すように顔を背けたが、その反応がルーナの言葉を肯定しているのと同じだった。
そんな二人の反応を見て面白そうに笑みを浮かべながら、ルーナは言葉を続けた。
「あのギルドに戻るためには、殺そうとしたアイクをあのギルドに連れ戻すしかない。そのためには、どうにかしてアイクと一緒にギルドに戻る必要があった。だから、そこの人間を捨ててでも、アイクだけでも繋ぎ止めたかった、といったところか?」
指を指されたギースはただ舌打ちをするだけで、何か反論をしてこようとしなかった。
どうやら、ルーナの考えは的中していたようで、誰もその言葉を否定しようとはしなかった。
「……殺そうとしたって本当ですか?」
「ちょっ、アリス、待った待った!」
俺が殺されそうになったことを聞いた瞬間、アリスが急に殺気立った。剣に手をかけて今にも切りかかろうとしていたので、俺は剣に添えている手を必死に押さえこんだ。
「アイクさん。その手どかしてくれないと、こいつら切れません」
「き、切るなって! も、もうここから立ち去ろう! ダンジョンのボスは倒したし、ギース達を仲間にはしない。それで話は終わりってことでいいから、な?」
「アイクさんが、そう言うなら……」
アリスは納得いかない様子だったが、俺の言葉だから仕方なしといった感じで引き下がってくれた。
いや、引き下がったように見えて剣から手を全く放そうとしていない。全然引き下がってない。
「け、剣から手を離しなさいっ」
「ち、違うんですよ。どうも気持ちと体が違う動きをしてて……き、切っちゃっていいですか?」
「気持ちも引き下がってないじゃねーか! だめだっ。アリスの手を汚させるわけにはいかないっ」
俺がなんとかアリスの殺気が収まるまで剣を押さえていると、ふと近づいてきたルーナが何気ない感じで口を開いた。
「おい、バーサーカー娘よ。今はそいつらは生かしておく方が面白いぞ」
「お、面白いって、どういうことですか?」
「安心しろ。私のお気に入りを傷つけたのだ。……ただ殺すだけで、済ませるわけがないであろう?」
アリスは剣に力を入れたままルーナの方に視線を向けた。ただ不敵な笑みをしているようなルーナの表情。その表情から何かを感じ取ったのか、アリスは徐々に剣に入れていた力を抜いた。
「……分かりました。ルーナさんがそこまで言うなら、信じます。あと、私バーサーカーみたいに力ありませんからね」
最後にちらりと俺の方に視線を向けて、アリスは剣から手を離してくれた。
俺が恐る恐るアリスから手を離しても切りかかったりはしないみたいで、俺は安心してため息を一つ吐いた。
俺はアリス背中を押しながら三人からアリスを遠ざけつつ、三人をそこに残して歩き出した。
「貴様らも付いてくるがよい。どうせ、貴様らだけではダンジョンから脱出などできんだろうからな」
ルーナはギース達にそんなことを言ってから、少し遅れて俺たちに追いついてきた。
そして、そっと俺に近づいて俺たちだけに聞こえるような小声で話し始めた。
「アイクよ。ここからダンジョンを出るまでは、主にアイクがモンスターの相手をしてくれないか?」
「別にいいけど、急になんでだ?」
「何度も勧誘を受けるのは面倒だろう。ここらへんで力の違いを見せつけておいた方が良い」
ルーナはそう言うと、三人がしっかり後ろからついてきているかを確認していた。あえてルーナが三人に声をかけたのは、今の俺の力を三人に見せつけるためだったのか。
「……私も顔は見たくないのでな」
正直、殺されそうになった相手と何度も顔を合わせるのは良い気がしない。
力を見せつけることで誘われなくなるというのなら、少しだけ張り切ってみるか。
そんなことを考えながら、俺は早くモンスターが出てこないか少しだけ期待してしまうのだった。
「あのギルドはアイクが抜けたことで大きな負債を抱えた。そして、ギルドが負債を抱えれば、冒険者の方にもそのしわ寄せが行く。そしてその怒りの矛先は、一番の実力者を欠くことになった原因である貴様らに行くという訳だな」
ルーナに詰められたエルドとリンは誤魔化すように顔を背けたが、その反応がルーナの言葉を肯定しているのと同じだった。
そんな二人の反応を見て面白そうに笑みを浮かべながら、ルーナは言葉を続けた。
「あのギルドに戻るためには、殺そうとしたアイクをあのギルドに連れ戻すしかない。そのためには、どうにかしてアイクと一緒にギルドに戻る必要があった。だから、そこの人間を捨ててでも、アイクだけでも繋ぎ止めたかった、といったところか?」
指を指されたギースはただ舌打ちをするだけで、何か反論をしてこようとしなかった。
どうやら、ルーナの考えは的中していたようで、誰もその言葉を否定しようとはしなかった。
「……殺そうとしたって本当ですか?」
「ちょっ、アリス、待った待った!」
俺が殺されそうになったことを聞いた瞬間、アリスが急に殺気立った。剣に手をかけて今にも切りかかろうとしていたので、俺は剣に添えている手を必死に押さえこんだ。
「アイクさん。その手どかしてくれないと、こいつら切れません」
「き、切るなって! も、もうここから立ち去ろう! ダンジョンのボスは倒したし、ギース達を仲間にはしない。それで話は終わりってことでいいから、な?」
「アイクさんが、そう言うなら……」
アリスは納得いかない様子だったが、俺の言葉だから仕方なしといった感じで引き下がってくれた。
いや、引き下がったように見えて剣から手を全く放そうとしていない。全然引き下がってない。
「け、剣から手を離しなさいっ」
「ち、違うんですよ。どうも気持ちと体が違う動きをしてて……き、切っちゃっていいですか?」
「気持ちも引き下がってないじゃねーか! だめだっ。アリスの手を汚させるわけにはいかないっ」
俺がなんとかアリスの殺気が収まるまで剣を押さえていると、ふと近づいてきたルーナが何気ない感じで口を開いた。
「おい、バーサーカー娘よ。今はそいつらは生かしておく方が面白いぞ」
「お、面白いって、どういうことですか?」
「安心しろ。私のお気に入りを傷つけたのだ。……ただ殺すだけで、済ませるわけがないであろう?」
アリスは剣に力を入れたままルーナの方に視線を向けた。ただ不敵な笑みをしているようなルーナの表情。その表情から何かを感じ取ったのか、アリスは徐々に剣に入れていた力を抜いた。
「……分かりました。ルーナさんがそこまで言うなら、信じます。あと、私バーサーカーみたいに力ありませんからね」
最後にちらりと俺の方に視線を向けて、アリスは剣から手を離してくれた。
俺が恐る恐るアリスから手を離しても切りかかったりはしないみたいで、俺は安心してため息を一つ吐いた。
俺はアリス背中を押しながら三人からアリスを遠ざけつつ、三人をそこに残して歩き出した。
「貴様らも付いてくるがよい。どうせ、貴様らだけではダンジョンから脱出などできんだろうからな」
ルーナはギース達にそんなことを言ってから、少し遅れて俺たちに追いついてきた。
そして、そっと俺に近づいて俺たちだけに聞こえるような小声で話し始めた。
「アイクよ。ここからダンジョンを出るまでは、主にアイクがモンスターの相手をしてくれないか?」
「別にいいけど、急になんでだ?」
「何度も勧誘を受けるのは面倒だろう。ここらへんで力の違いを見せつけておいた方が良い」
ルーナはそう言うと、三人がしっかり後ろからついてきているかを確認していた。あえてルーナが三人に声をかけたのは、今の俺の力を三人に見せつけるためだったのか。
「……私も顔は見たくないのでな」
正直、殺されそうになった相手と何度も顔を合わせるのは良い気がしない。
力を見せつけることで誘われなくなるというのなら、少しだけ張り切ってみるか。
そんなことを考えながら、俺は早くモンスターが出てこないか少しだけ期待してしまうのだった。