部屋のドアは開いていた。
 おばあちゃんは窓側を向き、敷かれた布団の上に座りながら太陽の光とエアコンの風を静かに浴びていた。部屋の中で動いているのはテレビの中で事件を解決している刑事さん役の人達だけだ。

「おばあちゃん!」

 そう言うとおばあちゃんはふわり振り向き、首を傾げた。

「おばあちゃんあのね、お願いがあるんだけど、このタマゴを一年間持っていて欲しいの」
「一年間?」
「そう、ただ持っていてくれるだけでいいから」
「うん、分かったよ」

 おばあちゃんは理由など訊かないで私のお願いを聞き入れてくれた。
 それから私は、相変わらず自ら進んで話しかけることは出来なかったけれど、おばあちゃんの部屋を以前よりも多く覗くようになった。

 お仏壇の上にタマゴはあった。
 毎日違う色の、シワひとつないハンカチがかけられていた。

ちなみに私のタマゴは部屋の机の上に置いてある。羊毛フェルトで花を作った時に余ったピンク色の羊毛の上にふわっと乗せて。