生産職から始まる初めてのVRMMO

転移装置に乗って地下の訓練場にきた私達はお互い初めて戦った時みたいにすごく緊張してたの。

お互い緊張しすぎて訓練場の戦闘を開始する位置に行くまで一言も喋らなかったくらいだもんね。

「じゃあ準備出来次第始めちゃおっか」

「わかった。いつでも、構わない」

「ライムとエルは準備大丈夫?」

「「うん!」」

「じゃあカウントダウン表示するねー」

私が訓練場のシステムを操作して5秒からカウントを始めたの。

5、4、3、2、1って進んでって0になったと同時に開始のブザーがなったの。

その瞬間私は空間操作を使ってファセリアの少し後ろに飛んで、重力操作でファセリアの行動を妨害したの。

ファセリアは妨害されながらもなんとかニブルヘイムを発動させて、辺り一面極寒地獄。

ライムは光剣を作り出して自分の剣と共に正面突破。

エルは背後に水魔法で分身を作り出して、分身の半分が羽根の槍を放ってる。

分身のもう半分は、魔力で光が屈折する雨を作り出してる。

それでエル自身は神鳥の威圧って言う固有能力のデバフをファセリアに、神鳥の加護っていう固有能力のバフを私とライムに掛けてくれたの。

それを見た私はタイミングを見計らってファセリアに向かって跳躍して鎌を構えたの。

鎌を構えたのを見計らって、エルが集光レーザーを空から放射。

次の魔法を使おうとしてたけど流石のファセリアも四面楚歌状態じゃどうにも出来なかったのか自分の周りに氷の結界を貼ったの。

でもその瞬間、屈折して四方八方から襲い掛かる集光レーザーで穴が開くとまではいかなかったけど、かなり脆い状態まで溶かされちゃったの。

そのままタイミングを見計らうかのようにエルの分身が放った羽根槍が結界にヒビを入れて、そのままライムの攻撃で結界が崩壊。

最後に私の重力操作で威力を増大させた鎌での攻撃がファセリアに直撃。

ファセリアの体力のほとんどは削れたけど倒しきれない…。

その瞬間、ファセリアが結界内で発動させていたトラッキング・ダンスが私達めがけて飛んできたの。

ライムは光剣で全部破壊してて、エルも集光レーザと羽根槍で難なく破壊。

それで私はというと、鎌で破壊できる数にも限界があって体力半分持っていかれちゃった。

この手数問題は私の今後の課題かなー。

そんな事を思ってたら…

「まま、大丈夫?」

そう言いながら私の体力が回復。

そんなやりとりをしてる間にもライムとエルの分身がファセリアが体制を立て直さないように牽制。

集光レーザーとかライムの剣がじわじわとファセリアの体力を削ってたの。

そのまま私達が二回目の総攻撃を仕掛けてそのまま決着。

「お疲れ様」

「お疲れ様ー!」

「手も、足も出なかったわ…。パーティーみたいな、ものね。個人で」

「だねー!さすがは私達の世界一可愛い魔王様だよー!」

「え!?アヤカ!?なんでここに居るの?」

「いやー、やっぱり戦いが気になっちゃってねー!見にきて正解だったよ」

「それより魔王様ってなに?」

「あーそれね。ネットの一部で話題になってるの」

(まー、話題にしたのうちなんだけどねー。死神とか厄災とかちょっと可愛くないし!)

「そ、そうなんだ…」

「いやー、それにしても本当にパーティー戦みたいだったね〜。もう現状最強なんじゃないの?」

「あはは、私だけだったら敵わないかもしれないけどね。またやろっ!楽しかったし」

「ん。戦いたい」

「フウはこの後どうするの?」

「んー、最近料理の開発してなかったから料理しようかなーって」

「ファセリアさんはどうする感じー?」

「ん、レベル上げ。足らない、まだまだ」

「そっかー。じゃあうちはライムちゃんとエルちゃんと遊びたいなー!二人が良ければだけど」

「二人ともどうする?」

「「「遊ぶー!」」

「じゃあアヤカ二人のことお願いしてもいい?」

「任せてっ!」

それからみんな出てって久々に一人だよ。

じゃあ早速料理しようかな。

何作ろう?

料理の開発自体は焔龍皇の時以来かな?

あれから固有クエストがあったりイベントがあったりで忙しかったしね。

新しい食材もあんまり手に入れてないしとりあえず持ち物確認してから作ろうかな。

んー、新しい食材といえばこの間の固有クエストの道中で手に入った鶏とか鹿くらいかなー。

あの時はボス攻略一直線で探索なんて全然やってこなかったもんなー。

また今度探索に行かなくっちゃ。

とりあえず水晶鹿っていう歯科を作って今ある食材で何品か作ろうかな。

どうしよ?

ロースは低音調理でロースト風にしてももは何がいいかなー。

ローストで時間かかるしアヒージョにでもしちゃおうかな!

そしたらまずは時間かかるものからやってこうかな。

まずは水晶鹿の骨を流水で掃除するんだけど…。

ゲームだから綺麗だねじゃあオーブンに入れてとりあえず焼こうかな。

次は水晶鹿ロースと一口大に切った水晶鹿のももを真空パック用の袋に入れてー。

そこにニンニクの付け根だけカットして包丁で軽く叩いた皮付きのニンニクとー。

フレッシュローズマリーを入れたらオリーブオイルも入れてー。

そしたら真空にしてこのまま2時間くらいマリネにします!

って言ってもゲームだからタイマーセットしたらその時間進んじゃうんだけどね…。

ここからはあローストに合わせるソース・ポワヴラードっていうのを作っていくよっ!

次は水晶鹿の筋をある程度細かく切ったら油を引いてフライパンで炒めるの。

火が通ったら一回取り出して粗みじん切りにしたエシャロット、人参、セロリを入れて炒めるの。

ここでさっきの鹿を焼いたフライパンを洗わないでそのまま入れてフライパンにこびりついてる焦げもしっかり落とさなきゃね。

これが旨味の素で大事なんだから!

香味野菜に火が通ったらローリエとホールの黒胡椒、セロリの葉、パセリの茎、タイムのブーケガルニと赤ワインビネガー、赤ワインと少量のマデイラワインを入れて水分が無くなるまで煮詰めるの。

そろそろロースを低温調理していくんだけど、これもタイマーでできちゃうから後回し。

ここであらかじめストックとして作ってあったフォン・ド・ヴォーっていう仔牛の出汁を入れてまた半分くらいになるまで煮詰めるよ。

ただ骨から出汁を出したいから5時間くらい煮込むことになるからタイマーで省略。

本当なら水を足しながら煮込まなきゃいけないんだけどね。

最後にシノワでしっかり漉したらソースの下準備完了!

あと今回は格式が高すぎないイメージしたいから、ちゃっちゃっとマッシュポテトを作っちゃって。

一旦脱線してもも肉をスキレットに入れてそこにマッシュルームとしめじ、マリネで入れてたニンニクの皮を剥いて半分に切って芽をとったらそのまま入れちゃおう!

芽を取るのは芽が焦げやすいから!

これはもも肉に火が通ったらパセリ散らして完成だね!

そしたら元の作業に戻って、ロースの表面をバターと少量のオリーブオイルを引いたフライパンで強火で焼き色だけつけるイメージでささっと焼いちゃう。

ソースは一回温めたらバターを入れて乳化させてとろみとコクを出して最後に引き立ての黒胡椒を入れて完成!

最後にロースを焼いてたフライパンの油の量を調整して、塩胡椒でクレソンをサッとソテーしちゃう。

じゃあ一番緊張するロースのカット行こうかな。

一応タイマーの詳細設定で芯温の設定もしたから大丈夫だと思うけどね。

…よし!綺麗なロゼ色になってる!

さすがゲーム…現実じゃ結構手間暇かかるからね。

最後に盛り付けしてアヒージョにはバゲットを添えたら完成だよ!


⚫︎フウ特製水晶鹿のロースト ソース・ポワヴラード
 評価10

⚫︎フウ特製水晶鹿とキノコのアヒージョ バゲットを添えて
 評価10


んー…これのレシピは手間が多いから保留かなー。

今回で一応5人前ずつは作ったからあと一回作れば開放されるんだけどね。

じゃあ今日は食べて終わろうかな。

アヤカにチャット送ってくるの待ってる間に4人前テーブルセットしちゃおう。

……

あ、来た。

「ずいぶん早かったね」

「とーぜん!フウの新作でしょ?」

「ライムおなかぺこぺこなの〜」

「エルもおなかすいたよー」

「まあね。じゃあ食べよっか! いただきます」

「「「いただきまーす!」」」
さて、今回は食材集め兼厄災の死神装備の試運転がてら1階層の探索にでもいこうかな。

ただ、従魔も連れて行けないから完全ソロプレイなんだよね。

ソロなんてライムと仲間になる前のちょこっとの期間ぶりだよ!

なんか初心に帰った感じだよねー。

それじゃあしゅっぱーつ!

って言ってもどこに行こうかな?

とりあえず行ったことない所とライムと会った場所の二か所に行ってみようかな。

………

んー、あれからしばらく探索してみたけど全然敵と会えないなー…

装備がいけないのかな?

エンカウントを下げる効果なんて付いてなかったと思うんだけど…

確率で発動する能力の死神の恐怖が私の幸運値のせいで発動してる…なんて事はないよね!

そもそもエンカウントしてない敵にも発動するかすらわからないしね。

まあ、見つかるまで探索するしか無いよね。

なんて思ってたら後ろからプレイヤーの声がしたの!

「こんにち…」

私が振り返って挨拶しようとしたのに。

「う、うわあああぁぁぁ!!!」

「きゃぁぁぁっ!!!し、死神!?」

「くそっ…なんでこんな所にっ…」

三人パーティーだったんだけど挨拶の途中で全員に阻まれちゃった。

弓使いの男の子は悲鳴上げながら腰抜かしちゃってるし、魔法使いの女の子は叫びながら頭を抱えて蹲ってるし、タンクの大男は諦めて地面に手をついちゃって…

なんか申し訳ないことしたかな…

「あ、あの…」

私ちゃんと説明しようとしたんだよ?でもまた阻まれちゃった。

「くそっ!ふざけやがって!せめて一矢報いてやるっ!」

弓使いの男の子が私に向かって矢を放ってきたの…

「あ、おい!バカ!!敵対しなければ襲ってこないかもし…」

タンクの大男が止めようとした時にはもう私に矢が当たっちゃって。

このゲーム特殊なルールがあってPvPの先頭に二種類あるの。

一つは一般的な決闘、お互いが承諾して始まるやつだね。

二つ目はプレイヤーキラーが出ないように、攻撃された初撃のダメージを無効化して攻撃された側が攻撃した側に一撃与えて終わりの『断罪』システム。

攻撃した側は所持金の半分を攻撃した相手に強制譲渡な上に『罪の欠片』っていう称号勝手にがついちゃうの。

これは獲得時から二十四時間のステータス半減っていうデバフが付与されて効果が終了した後にもストックとして残り続けるものなの。

サッカーよくわからないけど、イエローカードみたいなものかな?

それに攻撃した側は一撃与えられて倒されちゃうとデスペナルティのおまけもついてくるしね…。

今回の件が私の格好のせいだったとしても私が攻撃しないと終わらないわけで、それはつまり…。

「あー、なんかごめんなさい。私プレイヤーなんです」

私が謝ると攻撃前に冷静になってたタンクの大男が会話に応じてくれたの。

「この二人の父親でハイカラという。うちの子が本当に申し訳ございません。二人もちゃんと謝りなさい」

ハイカラさんが男の子と女の子の頭を掴んで下げながら自分んも頭を深々と下げた。

「「ごめんなさい…」」

このシステム謝罪を受け入れたらなしになるとかあればいいのにね。

「大丈夫ですけど、このシステム攻撃しないと終わらないので…こちらこすみません」

どうしよう?なんかすごく申し訳ないな…。

あ、そうだ!

「私、フウって言うんですけど、この後今日のリアルで十八時頃もし予定が空いてましたらフウ・アトラテスト商会まで是非いらしてください。一階層のメイン広場に支店がありますので」

「か、かしこまりました。伺わせていただきます」

「それじゃあ失礼します」

私は申し訳なさいっぱいで三人に釜を振り下ろした…三人は一撃で街に飛ばされちゃった。

よし、気を取り直して探索続けよう!

………

それからしばらく探索を続けてたんだけど、全然敵と合わないの!

これもう能力発動しちゃってるんじゃないの?

そんな事考えながらもう諦めて帰ろうと思った時だったの。

「ぴゃあああぁぁぁ!!!」

私の後ろから悲鳴が聞こえてきて。思わずああ、またか。って思っちゃった。

「あの、すみません」

「きゃぁぁぁ!ししし、し、しし、死神さんが近づいてきますぅ〜!!!やめてください。やめてください。ごめんなさい。すみません。わわ、私を襲わないでくださいですぅ…」

そう言いながら木の後ろに隠れてこっそりこっちを覗ってる…。

「大丈夫ですよ。襲ったりしませんよ」

「はうぅ…。つよつよな敵さんかと思ってびっくりしちゃいましたよぅ…」

「初めまして。フウです」

「ひゃんっ」

…???

「木にスカートがっ…んーーえいっっ!」

ビリビリビリ。

あーあ…。

「あっ、スカートがぁ…。あ、ごめんなさいです。エルメリアでしゅっ…です」

「いえ、驚かせてすみません。それでは」

「は、はい!」

そのまま普通に別れて私はまた探索に戻った。

筈だったんだけど、数分後少し離れた距離から悲鳴が聞こえたから助けに行ったの。

まあ、エルメリアだよね。

「あっ、あんっ…い、やだ。やめ…」

…まあそう言う人もいるよね。

言いたいことを飲み込んだ私はそのまま鎌を一振り。五体のレッサーウルフを倒した。

「大丈夫…?」

「はうぅ…。助けていただいてありが…ぴぎゃぁぁぁーー!!!」

また?

「…あれれ、よくみたらさっきの死神さんのフウさんですぅ…よがっだ〜〜!」

忙しい人だな…。

「この辺の敵倒せないなら森より草原の方がいいと思うよ?」

「い、いえ…」

「ん?」

「それが、その…」

「うん」

「ま、迷子なんです…」

「あー、うん。そうなんだ」

ちなみにね?私が今いるの森って言っても整備された道のところでまっすぐ道なりに進めば草原に出るんだけどな…。

「この道を南にまっすぐいけば草原に戻れると思うから。それじゃあ…」

「あ゛あ゛ぁー!ちょ、ちょっとまって下さい!助けてほしいんですぅ…」

ローブにしがみついてきた…。

うーん、ちょっとめんどくさいなー…。

「お、お願いです!スキルの使い方教えて欲しいんです!」

…え?スキル?それがわからないのにここに居るのはまずいし、まあそれくらいなら…。

「わかった。じゃあ一旦草原行こっか」

「あ、ありがとうございますっ!」

それから私たちは草原に着いたんだけど。

「じゃあまずはちゃんと自己紹介しますねっ!エルメリア十三歳中学生ですっ!ジョ…ブ?って言うのはわかりません…」

「えっとエルメリア?こういうゲームで年齢とかはあんまり言わない方がいいと思うよ?」

「そうなんですか!?じゃあ、次から気をつけますぅ…」

「って言うかこのゲームジョブシステム無い代わりに特殊能力の中にジョブみたいなものがあるんだけど、教えるために何の特殊能力取ったか教えてもらってもいい?」

「はい!これです!」

ステータス画面を見せてもらったんだけど。


エルメリア Lv1 所持金 : 約5,000G

●ステータス ステータスポイント 100p (ロック中)
HP 100 MP 100

STR 0 VIT 0 INT 0
MND 0 DEX 0 AGI 0

⚫︎装備
・武器 :
・頭 :
・胴 :
・体 :
・手 :
・腰 :
・足 :
・背 :
・アクセサリー
① :
② :
③ :

⚫︎特殊能力
 

⚫︎能力


⚫︎称号
 純真無垢たる???の愛し子 ???の庇護



ん?

あ、あれ?

おかしいな…称号二つ以外何も見当たらないな…。

「ね、ねえ。始めた時何も取らなかったの…?」

「は、はいぃ…名前以外何もしないで始めちゃって…」

称号は…?

えっと『純真無垢たる???の愛し子』と『???の庇護』って言うんだ。???は何で見れないんだろう?

効果はっと…


⚫︎純真無垢たる???の愛し子
 何一つ持たぬ自然な状態の者に与えられる称号。
 ステータスポイント、経験値が入手出来なくなる。
 条件を満たすまでの間、能力や称号が入手出来なくなる。
 ???の後継者。??の力をその身に宿し、大自然の力を行使できるようになる。

⚫︎???の庇護
 PvPを除くその他の戦闘で死亡しなくなる。
 ??が助けてくれるようになる。


何これ!?

大自然の力とか死なないとか、何かが助けてくれるのは強そうなのにステータスポイントと経験値が手に入らないとかそんなことあるんだ…。

デメリットデカすぎじゃない!?

「なんかステータスすごいことになってるね…」

「え!?そうなんですか!?」

「いや、なんでエルメリアが驚くの…」

「ゲームとかやったことなくって…」

それで片付けていい問題かな…。

これはあれだ。

最近よく聞くポンってやつだ。

なんかちょっと可哀想だし装備作って上げようかな…。

「あのね、エルメリア?特殊能力一個も取ってないからスキルは使えないの。代わりに少しでも戦えるように装備作ってあげるから私のお店に行こっか」

「ふぇ?い、いいんですか!?ありがとうございましゅ…す」
そまま私は探索を切り上げてお店に戻ることになったの。

「こ、ここまでついてきちゃいましたけど…ほんとによかったんですか…?」

「ん?ああ。全然大丈夫だよ!私も不遇って言われてる能力で始めちゃったからねー」

「そ、そそ。そうなんですか!!?」

「う…うん」

びっくりしすぎたのかエルメリアの顔が私の顔とくっつきそうだよ…。

人ってびっくりするとここまで変わるんだね。

「は、はぅぅ…すすす、すみません!」

我に返ったんだ。

「気にしなくて大丈夫だよー」

そんな事しながら歩いてたら私のお店の一階層支店に着いちゃった。

そのまま私のお店に入ったんだけど…

「「「フウ様、お疲れ様です」」」

私一応ギルマスで店長じゃん?

だからまあ、みんなに挨拶されるでしょ?

「ひぇぇぇぇっっっ!!!」

まあそうなるよね…。

「なな、何ですかっこれ…フウさんってお貴族様か何かですか…」

「いやいや、そんなんじゃないよ。ただ私は成り行きでギルマスやってるだけだし。とりあえず奥に案内するね」

「は、はい…」

まあ萎縮しちゃうよね…なんかごめん…。

………


「それじゃあまずはどんな装備にするか相談しようか。どんな見た目が良いとか、こんな性能がいいみたいな希望ある?」

「えっと、ゲームやった事なくって…どんなのがいいとか全く分からないんです…」

「うーん、じゃあどんな武器使ってみたいとかあったりする?それに合わせて作るよ」

「わ、私不器用なので手に持って戦う物ではない方が…その、いい気がします…」

「手でもなない武器かー。なんかあったっけな?」

武器リスト見てみよっかな。

うーん。無いな。

私みたいな固有武器作る?

手にもたないものって何だろ?

本は多分手に持つし…

私が生産職の固有武器に考えてた物も全部手に持つからなー…。

ライムの光剣は魔法だしなー…。

手に持たない物…手に持たない物…。

うーん…。

オーブぐらいしか思いつかない…。

「現状基本武器に手に持たない武器がないから、自分で作るしかないんだけど。オーブとかどう?作れるか分からないし手に持たないかどうかも分からないけど…」

「ぜ、全然大丈夫です!」

「わかった」

さて、作るとは言ったものの…

オーブなんて作った事ないし、どう作ったらいいんだろう?

とりあえず手持ちに何かないか確認してみようかな?

うーん、オーブになりそうな素材…なりそうな素材…

分からない。

こんな時のアヤカじゃん!

今ログインしてるかな?

お、ちょうどしてる。

とりあえず邪魔しちゃ悪いからチャットだけ送っとこ。

あ、返信きた。

『今そっち行くー』

返信はやっ!てか来てくれるんだ。


………


それから少ししたてアヤカと合流したんだけど…

相変わらずフットワーク軽すぎなんだよなー。

「それで、どうかしたの?またなんかやらかしちゃった?」

「どうしてやらかした前提になるのよ!そうじゃなくってね、ちょっとオーダーメイド武器の相談に乗って欲しくて…」

「なるほどねー!いいよ。でも、フウの方から生産についての相談なんて珍しいね」

「うん。今回の案件はアヤカの方が詳しいかと思って」

「そういうことねー。それでどんな相談?」

「その前に紹介するね。こちらエルメリア。死神装備の試運転をしてた時に一階層の森で出会ったの。エルメリア、こちらはアヤカ。一緒にゲームを始めた友達でこのギルドのサブマスターだよ」

「初めましてー!ウチはアヤカだよ。よろしくねー」

「はうぅぅ…は、初めまして…です。エルメリアといいましゅっ…ぴゃっ。ふぇぇぇ…舌噛んじゃいましたぁ…あ、すす、すみませんっ!よろしくお願いします!」

「だ、大丈夫かな…?」

「はは、はいぃぃ!すみましぇん!人見知りで…」

「いいよいいよーゆっくり仲良くなろっ!とりあえずフレンドなっとく?」

「あ、ありがとうございます…」

「それでね、アヤカ。エルメリアのステータスを見てもらった上で相談に乗って欲しいんだけど。エルメリア、アヤカにステータス教えても大丈夫?」

「は、はい。お願いします。ア、アヤカさんこちらです…」


………

んーっと。ん………??????

あれ、ウチの目がおかしくなったのかな…?

ステータスにスキルに所持金がチュートリアル前の初期値…?

どういう事…?

やばい、ウチの頭が追い付かない…。

あれ、でも称号は持ってるんだ…。

これってまさか…?

いや、さすがはフウだね。普通じゃない初心者連れて来ちゃったよ。

これは何としてもギルド誘いたいっ!

………


「アヤカどう?」

「いやーこれはなかなかだね…」

「それで手に持たない武器を作って欲しいって依頼なんだけど、オーブ以外思いつかなくって…」

「なるほどねー。それならオーブは手に持つタイプになる可能性が高いから別のにした方がいいかなー。武器リストにない武器作ってもし対象者の固有武器になっちゃったらもう他の固有武器は出来なくなっちゃうから確実な物の方がいいから」

「そうなの!?私だけだったら危なかったじゃん…」

「だからアクセサリー型の武器とかにしてみたらどうかな?」

「どういう事?」

「武器の形に囚われないで指輪とかブレスレットを杖みたいな感じの媒体として使う感じ!まああとはガントレットとかになっちゃうけど固有武器にはならないからやめた方がいいと思う」

「なるほど、ありがと!助かった」

「いえいえー。それじゃあ頑張ってねー!」

颯爽と去って行っちゃった。

イケメンじゃん。

アクセサリー型の武器かー。

「エルメリア、どう?アクセサリー型の武器なら完成できれば確実に持たなくてよくなるけど」

「は、はい。す、すごくいいです!」

さっきと食いつきが違うからこっちで正解かもね。

じゃあ作っていくけどアクセサリーを武器として作るからちょっと難しいのかな?

まあなるようになるよね!

まずは素材だけど…

ひとまず金属部分はミスリル使うとして、装飾の部分の宝石持ってないからまた彫金で作ろう。

そういえばミスリルって魔力伝導率が凄くいいらしいけど、熱加工じゃなくて魔力加工で作ったらどうなるんだろう?

ちょっと試してみようかな!

これは錬金と彫金になるのかな?鍛治ではない気がするけど…。

まあやればどっちかわかるよね!

っていうか全部使ってみよ。

先入観は良くないもんねー。

よし!まずはミスリルを鍛治でインゴットから板に、板から棒にする作業かな!

………

うん。順調だね。

次は鍛治で出来た棒を三つ編み風の編み込みと接着を錬金でやろう。

それから飾りと触媒を兼ねて水晶と一緒に入れちゃおう。

水晶はダイヤモンドカット風にしよう。

………

いい感じに出来た!

そしたら最後は彫金だね。どんな模様にしようかな?

大自然の力を行使できるって書いてあったしそれに関係するやつがいいかな?

純真無垢って花言葉なんかあった気がするけど何だったっけな?

うーん…。

「ね、ねえエルメリア?純真無垢が花言葉の花ってなんかあった気がするんだけど、何か知ってたりする?」

「は、はい!純真はミミナグサという花の名前です!無垢は白百合です!ミミナグサは最近では外来種に場所を奪われつつあって絶滅危惧種に指定されるほどでは無いですが都会などではなかなかお目に掛かれなくって小さい五枚の花びらがすごくかわいい花で私の誕生花でもあるのでなんか親近感湧いちゃってそれに白百合はじゅ………はっ…はわわわわわわわ…す、すすすすみません…わ、私なんだか熱くなっちゃって。そ、その…」

すっごい流暢でめちゃくちゃ早口で話すね…。

「だ、大丈夫だよ…。それより花好きなんだね」

「は、はい!私のお母様がフラワーコーディネーターなので、その影響で…」

「なるほどね。それでどっちの花がいいとかある?」

「あ、えっと…出来ればその、両方がいいんですけど。出来たりしますか?」

「わかった。じゃあミミナグサの見た目分からないから一旦調べるから落ちるね。少し待っててー」

「は、はい」

………

「お待たせー」

「早かったですね」

「まあ調べただけだからね」

それじゃあ彫金始めようかな!

ミミナグサの方が小さいからメインはそっちにしてまばらに白百合を彫る感じにしようかな。

付与は物防、魔防にあとは付くか分からないけどHP自動回復効果も付けられたら付けたいなー。

………

よし!完成かな!

●無垢なる依代
評価 : 10
能力 : +5,000
??の依代『宿る??によって効果が異なり、特殊能力が追加される事もある』
付与 : 物理防御(小) 魔法防御(小) HP自動回復(微)



《特殊武器 ブレスレットがプレイヤー名 エルメリアの固有武器になりました》

よし、固有武器にもなったしいい感じのが出来たかな!

HP自動回復効果の微って多分小よりしたって事だよね…?

ま、まあ付いただけまだいいか。

「エルメリア、出来たよ」

「ほわあぁぁ!!す、凄いです!凄すぎます!ありがとうございます。デザインもとっても可愛いです」

「気に入ってくれたなら良かった。防具もパパッと作っちゃうね」

「そ、そんな。悪いですよ」

「いいのいいの。私が好きでやってるんだから」

「な、何から何までその。ありがとうございます!」

それから私はミスリル糸とシルクを使ってワンピースを、白兎皮を使ってサンダルを作ってあげた。


●シルクミスリルのフリルワンピース
評価 : 10
能力 : HP+500 MP+1,000
魔法防御(中)
付与 : 物理防御(小) 魔法防御(小) MP自動回復(微)

●白兎皮のサンダル
評価 : 10
能力 : AGI+10
ジャンプ力強化(微)
付与 : 物理防御(小) 魔法防御(小)


こんな感じになったよ。

私の大事な素材を除いちゃうとあんまり白系の素材って無いんだよね。

今度素材集めの旅にでも出ようかなー。

「はい。これで来たやつ」

「助かります。本当にありがとうございます!」

うん。その満面の笑みが見れたなら作った甲斐もあったね!

それからその日は解散になったんだけど、後日アヤカから連絡があってエルメリアがギルドに入ったって聞いたの。

もうびっくりだよ!
エルメリアがギルドに入って数日後改めて死神装備で探索して色んなものを撮りに行こうとしたんだけど、珍しくガゼルさんから連絡が入って役所に行くことになっちゃったの。

………

役所に着いて受付にいたお姉さんにお願いしてガゼルさんに取り次いでもらう様にお願いしたら所長室に案内されたの。

ドアをノックして挨拶をして入ったら笑顔でこっちに手を振るガゼルさんと同じく立って会釈する知らない女性がいたの。

「おう、フウ。すまんな急に呼び出したりして」

「いえいえ、いつもお世話になってますから。それで話っていうのは?」

「まずは紹介させてくれ。こいつは…」

ガゼルさんがこいつって言った瞬間に隣に座ってた女性が鋭い目つきでガゼルさんを睨んだの。

こわ…。

それに気づいたガゼルさんが咳払いをしてからまた話し始めたの。

「こちら、俺のリアルでかみさんのライラって言うんだが何でもフウと話がしたいらしくてな、橋渡しをさせてもらった」

「初めまして、フウちゃん。ライラって言います。よろしくね」

「よ、よろしくお願いします」

うわ、すっごい色っぽい…キャラメイクかもだけど艶々の茶色いストレートロングとか、服からはみ出そうな大きな谷間とか…何より泣き黒子がより色っぽさを出してる気がする。

すっごい綺麗な人…。

いけないいけない。

「そ、それで話っていうのは?」

「うん。フウちゃんお店で色んな物出してるでしょ?分業してみるつもりはないかなと思ってね」

「分業ですか?また急にどうして?」

「フウちゃんのお店っていつも一号店も二号店も大行列で混むのに一時間くらいで完売しちゃうでしょ?」

「まあそれはありますけどお陰様で私が探索や攻略に出られるっていうのもありますし…」

「ええ、そこはフウちゃんのスタイルだし大事にしてもらいたいの。ただね需要に対して供給が追いついてなさ過ぎるのも勿体無いと思ってね」

「確かに、せっかく買いに来てもらってるのに買えないまま帰してしまうのは前から申し訳ないとは思ってましたけど」

「そこでね!」

うわっ!びっくりした…ライラさん急に前のめりになるじゃん。

「そこで今度実装予定の生産職救済措置のプレイヤー及び、NPCの弟子認定制度を使ってフウちゃんが獲得してる生産能力それぞれに弟子を設けて武器鍛治店舗、防具鍛治店舗、裁縫防具店舗、裁縫おしゃれ装備店舗のメンズとレディース、木工具店舗、彫金アクセサリー店舗、錬金店舗、薬剤店舗、素材販売店舗、それから料理店に関しては和洋中それぞれ食べ歩き専用、ファーストフード形式、各専門店、居酒屋、それから価格別に〜一千円、〜二千円、〜三千円、〜五千円、〜一万円、高級店として三万円〜五万円、超高級店として十万円〜のお店にそれぞれ分業して今までフウちゃんが販売をしてたギルドホームをフルオーダーメイド専門店にしたらどうかなと思って!」

お、おう…そこまで細かく分けるんだ…。

まあ確かにこのゲーム自由度は高いからそういうことも全然出来そうだし、楽しみが増えるって意味では面白いのかもしれないなー。

そうなると、料理以外にも初心者向け、中級者向け、上級者向けとかに分けたらお客さん買いやすくなったりするのかな?

そうなると店舗数どうなるんだろ…えーっと、それぞれさ三店舗ずつに加えて各価格帯の料理店となると…。

料理以外で二十四店舗、それに和洋中の各形式各価格帯ってなると…とんでもない数になるよ…?」

「ど、どうかな?」

「はい、すごく面白いと思います。ただそこまでの店舗数になると…」

「ええ。だからね!空き店舗を買い占めてバラバラにしてもいいんだけどね。一階層の一番目立つ中央広場の正面の数十店舗を買い占めて超大型ショッピングモールの建設なんてどうかしら!っていう提案をしに来たのよ!」

「うちのかみさんがなんかすまんな」

「いえ、とても面白い提案だと思います!ただ、私経営とかなんてした事ないのでショッピングモール経営となると…」

「その辺は安心していいわ!っこれでも現実では経営者だもの!」

ええ!?そんな凄い人だったんだ…それだったらこのチャンスに乗るしかないかな…!

「そういう事でしたらぜひやってみたいと思います!」

「快諾してくれて良かったわ。ただ、すぐにって訳にはいかないの。なにせ超大型ショッピングモールとなるといくらゲームとはいえ初期費用がとんでもないことになるのよね。もちろん私が提案したのだから私もガゼルも資金調達には協力させて」

「ちなみにどのくらいかかる予定なんですか?」

「あー、えーっとね…言いにくいのだけど、総額五億Gくらいかかりそうなのよね…」

五億!?そんなにかかるの!?いや、現実じゃもっとかかるだろうし、そう考えたらお買い得…なのかな?

というか今の私の所持金っていくらあるんだろう?

えっと…。

あー、なるほどね…。

「えっと、そのですね。五億G今即金で用意できます…」

「「えぇ!!!?」」

ま、まあそういう反応になるよね…。

「そ、それならすぐに取りかかりましょ。そうだフウちゃん私をギルドに入れてもらえないかしら?秘書みたいな立ち位置でフウちゃんの経営をサポートさせて欲しいの」

「いいんですか?」

「かまわない。というか私がさせて欲しいのよ。だって、すごく楽しそうじゃない?」

「はい!そういうことでしたらぜひよろしくお願いします!」

「これで契約成立ね!こちらこそよろしくお願いね!それからこれから私は部下になるのだから敬語は禁止よ」

「うん。わかったよ」

「フウちゃん、今後の打ち合わせのためにフレンド申請してもいいかな?」

「もちろんです!」

「よし、そっちの話は終わったな。そしたら次はこっちの話だな」

え、まだあるの…探索行きたかったんだけど…。

「すまんな、こっちの話はすぐに終わる。嬢ちゃんすまんが頻繁いじゃなくて構わないからオークションに品物を下ろしてもらえないか?」

「いいですけど、またどうして?」

「何、単純だ。オークションを盛り上げたいんだ!」

「なるほど。そういうことならいいですよ」

「すまんな。最近は素材に関していえばあんまり流れてこなくてな。武具に関してもドロップ品はいいんだが生産品はあんまり流れてこなくてな…」

あ、素材は私が買取してるからか…。

なんかごめんなさい。

「そういうわけで卸せそうな品物があったらまた連絡して欲しい」

「あ、そういう事なら今何個か渡しておきますね」

「助かる」

………

やっと終わったーっ!

それから結局ライラさんと後日にするなら今日しちゃったほうが楽だよねって話になって気楽な気持ちで打ち合わせを始めたんだけど…。

現実時間でで十時間を超えたの…。

結局その日は探索する元気がなくなってログアウトしたの。
んーーーっはあぁー…。

さて、と。

今日はオーダーメイド依頼も無い、備蓄も十分。

せっかく久々の余暇だし、ようやく行きたかった探索に行けるよ…。

それじゃあ早速ログインしよっかな。

………

まずどこから行こうかなー。

この間一階層に行って初心者の人達びっくりさせちゃったし今回は死神装備で二階層に行こうかな。

まだ二階層の方が私のこと知ってる人多いだろうし、迷惑かける事も少ない…はず。

それじゃあ早速出発しよー!

………

二階層のテーマは水と鉱山だったと思うけど、なんか白い素材見つかるかな?

水って言っても湖とか海とかがある訳じゃなくて川があるだけだからなー。

白…白…白…。

モンスターは大前提として…。

あっ!これ薬草だ。

このキノコ美味しいやつ。

それにしても二階層の探索久々だなー。

なんだかんだ探索するのエルのお母さんと戦った時以来になっちゃうのか。

山だから山肌にはあんまり目ぼしいものは無いね。

鉱山っていうくらいだし折角だから洞窟でも探して入ってみようかな。

前回は山頂に行ったもんね。

………

やっと見つけたよ…。

っていうかまさか一時間以上かかるなんて思ってなかった。

まあ見つかったなら結果よしって事で探索レッツゴー!

うーん、暗いな…鉱山って言ってるけど街がそういう発展してる訳でもないし行動ができてる訳でもないから未開って事なんだよね。

折角ならファンタジーでよくいるドワーフとか居たら鍛治技術の勉強とかできて面白そうだったのになー。

とりあえずこの暗いのをどうにかしなきゃね。

生活魔法のライトを使って先に進も。

………

鉱石いっぱい出るのは嬉しいんだけどなー。

現状で採集可能な鉱石が銅鉱石、鉄鉱石、ダマスカス鉱石、マラカイト鉱石、銅魔鉱石、鉄魔鉱石、銀鉱石、銀魔鉱石この八種類しか出ないんだよなー。

この間新しく手に入れたミスリル鉱石とダマスカス魔鉱石はイベント内限定で次のアップデートで追加される鉱石の一部分を先行入手可能ってだけだったし。

イベント終了後になぜか知らないけど私の所にミスリル鉱石とダマスカス魔鉱石の買取依頼が殺到したのはもう懐かしいよね。

まあそのおかげもあって私のミスリル鉱石の在庫とダマスカス魔鉱石の在庫が潤ったんだけどねー。

とはいえ無駄遣いは出来ないから欲しいけど出ないって状態だから使い所は間違えないようにしないと。

あ、忘れる前に今回の探索の採集リストの整理でもしとこうかな!

まずは今後大量に必要になってくる陶器用の土と食器用の木材。

これはまあさっき洞窟の入り口探してる間に手に入ったからオッケー。

次は高級店向けの銀食器。

これはこの後探すとして、次は調理器具用のダマスカス鋼石と鉄魔鉱石。

これもまあここで採掘してれば獲れるでしょ。

お、採掘ポイント発見!

カンッ!

問題は白系素材だよねー。

カンッ!

エルメリアがギルドに入ったからもう少しちゃんと装備揃えてあげたいんだよね。

カンッ!

レベルも上がらないしステータスポイントも振り分けられないってどんな縛りプレイだーって感じだよね。

カンッ!

「…のー」

カンッ!

白系の素材で統一したいから探してるけど候補的にはやっぱり毛皮になったりするのかな?

カンッ!

「あのー」

カンッ!

一応ミスリルが白銀色って感じだけどそれだけだとなんか違う気がするし…土とか木は論外だし、あとは虫の糸とか骨のインゴット化とかになっちゃうかなー。

カンッ!

都合よく出てきたりしな…。

「あ、あの!!!」

うわっ、びっっくりしたー…。

「は、はい」

「マスターどれだけ集中されていたんですの…?」

マスター?私のギルメンって事?

「わたくしですわ。お忘れですか?ほらアヤカ様のお友達でエスタルフィア辺境伯家現当主アリシーゼ・マルクグラーフ・フォン・エスタルフィアですわ!」

あ、あー。

居たな、厨二病というか少女漫画が好きすぎて貴族女性に憧れてるとか何とか言ってた子だ。

「あ、えっと。それで、アリシーゼ・マルクグラーフ・フォン・エスタルフィア?何か用があったんじゃないの?」

「んもー!アヤカ様のお友達ですからアリシアでいいと言ったのをもうお忘れですの!?」

「ごめんごめん」

お嬢様ロールプレイも随分徹底してるんだね…。

「まあいいですわ。それで用があったという訳ではありませんの。フウ様がいらっしゃったものでしたからでご挨拶を。と思いまして。それに折角ですからご一緒できればと思った次第ですのよ」

………

まさか普段全くお目にかかれないフウ様とこのような場所でお目にかかれるなんて思っていませんでしたわ!

これはまさしくチャンス到来ですの!

次にアップデートされると噂されている私服システム実装直後にドレスを仕立てる為素材集めに来たのが良かったんですのね!

ここでフウ様と仲良くなって兼ねてより思い描いていた、実装されて一番に特注ドレスを作って頂くという私の夢を叶えさせてもらいますの!

………

「ま、まあ一緒に来るのはいいけど…。私ずっと鉱石掘ってるかもよ?」

「構いませんわ」

っていうか貴族女性と死神って絵面酷くない…?大丈夫かな…?

あ、でもパーティー組むなら死神装備使えないや。

また検証が後回しになっちゃっうけどまあいっか。

「ちょっと待ってね今装備変えるから」

「わかった。じゃあパーティー申請しておくね」

「承認いたしましたわ。短い間ですがよろしくお願いいたしますわ」

「こちらこそよろしくね」

「よし。ここの採掘ポイントも取り切ったし奥に進もうか」

「マッピングはわたくしが致しますわ」

………

それからしばらくして宝箱のある部屋に出たんだけど…。

「あ、宝箱だ!」

「お、お待ち下さい!フウ様!」

「え?」

ガチャッ。

止められた時にはもう遅くって開けちゃったの。

そしたら急に入ってきた入り口が壁になって反対側に通路ができたと思ったら、そこから大量のモンスターが出てきたの…。

あー。

これはやっちゃったやつだ…。

「アリシアごめん…」

「構いませんわ。それより今はこちらのモンスターの方々をどうにかしないといけませんわよ!」

「そうだね」

で、二人でライトを強くして出てきたモンスターの確認をしたんだけど…。

「これは、ケイブバットにビッグラット、アルビノウルフですわね…アルビノウルフは嗅覚がとても強く光を感知しないので洞窟モンスターの閃光戦法は通用致しませんわよ!警戒なさってくださいまし!」

「あー、警戒してる所申し訳ないんだけど、多分大丈夫だと思うよ」

「それはどういう…」

「ライム!エル!おいでー」

「「はーーーい」」

「フウおはよー」

「ママおはよー!」

「二人ともおはよう、いきなりでごめんだけど力貸してくれる?」

「「いいよー!」」

「こ、これが噂に聞くライムちゃんとエルちゃんなのですね。とっても目の保養になりますわー!って、はっ!いけませんわわたくしもっ戦闘準備致しませんと」

なんか最初に言ってたような気がするけど戦闘準備って言いながら構えたのは両手に持った扇だったの。

扇って戦えるの…?

「行きますわよ!力の舞」

そう言って踊り始めたアリシアは一人で演舞するかのように扇での鋭い斬撃と足技による牽制がすごい噛み合っててすごい綺麗。

っていうか多分そう見えるように立ち回ってるんだよね。

流石というべきなのかな…ロールプレイが板についてるなー。

「私たちも負けないようにいくよ!」

「「はーい!」」

私たちが動き出してからはあっけないものだった。

私は鎌で、ライムは剣と光剣で、エルは神鳥の威圧と神鳥の加護を使った後にウォーターランス、アイスニードル、集光レーザーでの遠距離支援。

そこから私は飛翔と跳躍で一瞬で移動してアルビノウルフ二匹の首をまとめて一狩り。

ライムは光剣で退路断つアシストを私が狙った二匹も含めて三匹にした後、アルビノウルフの残った一匹の首を一狩り。

エルのウォーターランスとアイスニードルはケイブバットに、集光レーザーはビックラットを一掃。

「あ、あはは…。噂には聞いておりましたが、実際に見るとこれまた壮観ですわね。連携もとても美しかったですわ」

「ありがと。まあ、自分のミスくらいは自分でカバーしないとね」

「いえ、わたくし一人で来ていたら危なかったかもしれないので助かりましたわ。素材はフウ様に差し上げますわ」

「え、でも…」

「いいんですのよ。そ、その代わりと言っては何ですが…」

「ん?」

「次のアップデートで街中限定の私服コーデというものが実装される予定らしいのですが…。その…アップデートしたらすぐにわたくしにオーダーメイドドレスを仕立てて欲しいんですの!」

それってこの間ライラが言ってたオシャレ装備のことかな?

「そんなことでいいなら」

「そんなことだなんてとんでもありませんわ!」

「え、えっと…?」

「フウ様はもっとご自分の影響力をご自覚くださいまし!」

あーそういうこと…。

まあ影響力があるとは思ってるけど実装前のしかも能力に関係ないオシャレ装備に私の影響力が関係するとは思えないんだけど、まあアリシアの言い分だと関係してくるんだろうな…。

「わかったよ」



ピコンッ

ん?メール?


イベントのお知らせ


『第二回イベント 7日間限定タワーイベント』

●開催日時
現実時間 10月12日 12:00〜10月19日 12:00

●イベント内容
現実時間で一週間の間、第一層中央広場噴水前にてイベントポータルが開放されます。
今回のイベントはソロ限定で系二十階層を予定しております。
 またモンスターの強さやドロップアイテムは攻略者のレベルやステータスに依存します。
このステージでしか手に入らないアイテムを多数用意しておりますので皆様のご参加お待ちしております。

●詳細内容
現実時間12時より第1階層の街中央広場噴水前にイベントポータル開放

イベント専用世界に転移

各階層小型のフィールドが存在し、ボスエリアにてボスを討伐後次の階層へ行くことができます。
 尚、今回のイベントは一度外に出ると最初からやり直しになる仕様になっています。

終了1日前になりましたらメールでお知らせいたします。


尚、今回のイベントでアップデートなどはございません。



「あら、イベントの通知ですわね」

「みたいだね。タワーイベントかー。攻略するのは大変そうだね」

「そうですわね。一度出たらやり直しというのが大変さを増していますわね」

「だね。万全に準備してどこまでいけるかだね」

「ええ。ですが今はこの洞窟を攻略してしまいましょう」

「そうだね」
「ふぅ…。だいぶ進みましたわね…」

「なかなか突き当たりまでいかないねー」

あの部屋の奥は進んですぐ突き当たってちゃんとした宝箱を見つけたんだけどね、それから正規ルートに戻ってしばらく進んだんだけど今度は全然突き当たりまでいかないんだよねー。

結果なんか鉱石採集と蝙蝠と鼠しか倒してないんだよねー。

「あーーーもうっ!蝙蝠も鼠も見飽きましたわ!」

「あーははは…。まあ確かにね」

アルビノウルフまた出てこないかなー。

なんて思ってたら何がゴツい岩乗っけた亀が出てきたの。

「まあ!ロックタートルですわ!この亀さんは稀に大きくて綺麗な石を出すんですのよ!」

「石?それって採掘出来る石とはまた違うの?」

「ええ、もちろんですわ。まあ落ちるアイテムはロックタートルの背甲石という名前の通りアイテムというものですわね」

「本当に名前通りだね…」

「ですが、性能は最前線に通用するものらしいですわ。まあ超レアドロップらしいので期待はできませんね。それにわたくしたちが探索していた感じこの亀さんも滅多にお目にかかれなさそうですし、市場価格は相当なものになりそうですわね」

そんなにすごいの出るんだ。

ってロックタートルが戦闘体制に入った。

「来るよ!」

「わかっていますわ!」

戦闘体制に入ったロックタートルは大きく口を開けて十個以上ある尖った岩の塊を作ってこっちに向かってきたの。

それを私たち四人は回避した後に、アリシアが力の舞っていうミカ全体にSTRバフをかける技を使った後に、エルが神鳥の加護で全ダメージアップのバフをかけてくれたの。

そこから私とライムが前衛に出たんだけど、ロックタートルがすぐに次の岩魔法を発動させ私とライムに向かって打ってきちゃって…。

でもその予備動作に気づいてたアリシアが回避の舞でサポートしてくれて、私とライムが避けた所にエルがアイスニードルで岩魔法を相殺してくれて。

そのまま私とライムがまっすぐ向かって両サイドから攻撃したんだけど、すぐに甲羅の中に入って防御体制で防がれちゃったの。

「ライム!このまま攻撃続けるよ!」

「はーい!」

「エルちゃんわたくしたちは二人を援護いたしますわよ!」

「お姉ちゃんわかった!」

「フローズンフィールドー!」

エルが相手を速度低下と物理防御低下の魔法を使ってくれたの。

「速度の舞!わたくしも前に出ますわ!」

って言いながらアリシアも前線に向かって駆けてきたの。

そこからは三人で前線で戦うことになったんだけど、あまりにも物理攻撃が効きにくいロックタートルに魔法を使うことにした。

なんで今まで使わなかったかって?もちろんMPを温存してたから。

この攻略がどこまで続くかわからないし、物理だけでできれば回復にMPを回せるから。

「しょうがないライム!エル!魔法使うよ!」

「わかったのー!」

「ママりょーかい!」

「わたくしも行きますわ!」

そこからライムの光剣、エルのアイススピアにウォーターランス、アリシアが扇に風を纏わせてロックタートルに一斉攻撃。

あー、私やることないや…。

あ、もしかしてこれ…これ私の弱点…?

いや、今はそれよりロックタートルを…ってもう倒し終わっちゃってるや。

「フ、フウ様!フウ様!こちらにいらしてくださいまし!」

「急うにどうしたの?」

「ロロロ、ロックタートルの背甲石ですわ!ま、まさか本当に落ちるなんて…」

あー、それ多分ライムの称号のせいだろうね…。

まあめんどくさい事になったらやだから黙ってよ…。

「よかったじゃん。よかったらそれもらってよ。モンスターハウスのお礼とお詫びってことで。ね?」

「いけませんわ!そんなの釣り合いが取れません!」

「いいのいいの。はい、この話はもうここでおしまい!早く次にいこっ」

「お、お待ちくださいまし!…」

………

いやー、鉱石大量大量!

さすが鉱山だけあって量がすごいよ!

ただレアな石とか実装されてたりするのかな?

それとも宝石類がそれにあたるのかな?

わかんないから今度あやかに聞いてみよかな。

「あ、そうだ。アリシア、私が採掘してる間に護衛してもらってるし、なんか欲しい鉱石とか宝石あったりする?」

「いえ、特別そう言ったものはありませんわね」

「そっかーなんかお礼できたらって思ったんだけど…」

「ライムちゃんとエルちゃんがいれば十分な気もしますけど…そういう事でしたら今回いただいたロックタートルの背甲石で何か武器を作っていただきたいですわ」

「そんな事でいいなら全然作るよー!」

「ありがとうございます!今の武器がかなり前に買ったものでそろそろ新調しようかと考えていましたの!」

「まあ確かに生産とかしないなら鉱石とか持ってても意味ないしね」

そんな会話をしながら採掘してたらこの採掘ポイントも終わっちゃってまた奥に進むことにしたの。

その後も目新しいものは何もなく平和な行動探索が続いたの

「またロックタートルでも出てきたら楽しいんだけどなー」

「かなりのレアモンスターの様ですし、一回会えただけでも奇跡なのかもしれませんわね」

「だねー。あ、そういえば時間大丈夫?なんか私に付き合ってもらっちゃってるみたいになってるけど」

「全く問題ありませんわ。それに、お供していただいてるのはわたくしの方ですし」

「それならよかった。じゃあここの別れ道のマッピングも終わったし、次の道に行こっか」

それから私たちは程なくして巨大な扉の前に辿り着いた。

あー、これはなんか嫌な予感がするよ…。

「フウ様、間違いありません。これは…」

「う、うん。十中八九ボス部屋だろうね…ど、どうする?」
「ど、どうする?」

「見つけてしまった以上行くしかありませんわね。初回討伐報酬をみすみす他の方に渡す訳にはいきませんもの」

「だね!じゃあまず準備と大まかな立ち回り決めとく?」

「ですわね」

そこから私たちは話し合いを始めたの。

まず、持ち物の確認。

これはHPとMPの回復アイテムの所持数確認とアリシアが少し心許なかったから少しお裾分け。

次はポジション決め。

まず基本的には私がメインアタッカー兼おまけ程度のバッファー。

次にライムがタンク兼おまけ程度のヒーラー。

エルは万能型だからサブアタッカー兼バッファー兼ヒーラー兼おまけ程度にデバッファー。

アリシアがサブアタッカー兼バッファー。

「何と言いますか…ライムちゃんとエルちゃんはやれる事が多いんですのね?」

「まあライムはレアエネミーらしいし、エルに至っては神鳥だからね」

「そうでしたわね。そうなると立ち回りを絞るか万能型にするか悩みますわね…」

「まあ、エルならその場その場で臨機応変に立ち回れると思うよ?母親の経験?みたいなの引き継いでるらしいし」

「なるほど、それでしたら万能型で立ち回っていただきましょう。ライムちゃんの回復はどの程度なんですの?」

「エルよりは少ないかな?なんかイメージパラディンみたいな感じ?」

「わかりやすいですわね」

それからは前に戦ったロックタートルの物理が効きにくい相手だった場合の話になったの。

私があんまり役に立てないからタンク…というよりは攻撃させないように頑張りつつ、付与術で軽いバッファー。

ライムは後方からのサブアタッカーで光剣に集中してもらって数の暴力で押し切る。

エルはさっきと一緒で万能型だけど魔法攻撃を多めに立ち回る感じに。

アリシアは前衛でメインアタッカーに。

「この様な感じでしょうか?」

「そうだね。私があんまり役に立てないのが少しもどかしいけど…」

「タンク役も重要な役割ですわよ。そもそも生産職で従魔術師のフウ様が戦いの役割に入っているというだけで前提条件がおかしいんですのよ?」

「あはは…」

「フウはすごいの!」

「うん。ままはすごいんだよ!」

「ありがと」

こうやって言ってもらえるのは嬉しいね。

物理防御対策どうにかしないとなー。大鎌術でなんか魔法攻撃覚えられたらいいのになー。

ロックタートルは少ないダメージ与えていたけど、完全に無効化されちゃったらどうにもならないもんね。

ボス終わったらなんか考えないとなー。

「そうですわ。ライムちゃんとエルちゃんの魔法攻撃性のはどのくらいなんですの?」

「んー。ライムの方が上かなー。エルの魔法攻撃も十分ありがたいけどやっぱりサポート性能によってる気がする」

「そうしましたら、やはりわたくしがメインになりそうですわね。わたくしに務まるでしょうか…」

「大丈夫だよ。アリシア強いし、私より全然知識とかも豊富だもん!」

「そう言って頂けると嬉しいです」

「じゃあ、そろそろ行こっか!」

「「はーい」」

「ええ、準備は完璧でしてよ!」

そこから私とアメリアですっごい重い扉を開けてボス部屋の中に入ったの。

中は真っ暗で何も見えないし、なんかカサカサ音してるし…まさかGとかじゃ…

「フウ様も灯りを!」

そうだ考えてる場合じゃなかった!

「わかった!」

二人でライトを使い周囲を照らすと目の前に現れたのは上半身半裸の女性で下半身巨大蜘蛛の所謂アラクネだった。

「アラクネは素早い上に炎以外の魔法が効きにくいんですの!わたくしたちに炎攻撃はありませんし物理で押し切るしかありませんわ」

「わかった。最初に話した方だね」

「わかったのー!」

「はーい!」

まず私が付与術でバフ、エルの神鳥の加護でバフ神鳥の威圧でデバフ、アリシアが力の舞と回避の舞、速度の舞と防御の舞それぞれでバフ。

ライムが中央から、左右からは私とエルがアラクネに向かって突撃。

エルは後方からウォーターランスとアイススピアでアラクネの行動を阻害して、ライムの光剣がアラクネの退路を断ってそのままライムが先制攻撃を仕掛けて、反撃してきたアラクネの攻撃を防いでくれたの。

その勢いに乗ったままアリシアが扇でアラクネの片側の足を物理でそのまま攻撃したら、アラクネが体勢を崩したからそこを狙って私が跳躍と飛翔で真上に飛んで重力操作を駆使した渾身の一発を当てる。

そんな感じでこっち側の連携が見事にはまってアラクネの糸を使った攻撃に拘束、爪と牙の攻撃なんかも凌いで普通に勝っちゃった。

「あら、もう終わりかしら」

「お疲れさまー。まあ一階層のボスがオークだったしこんなものじゃない?」

「フウお疲れー。楽しかったねー!」

「ままお疲れさま!」

「ええ。現段階での話ですが、このゲームは階層守護者…ボスよりも探索やフィールドボスの攻略、ユニーククエストなどに重きを置いているのかもしれませんわね。まあこの先改装守護者が強くなって攻略難易度が上がる可能性は大いにありますが」

「なるほどねー勉強になるよ!あ、このあとはどうする?三階層まだ実装されてないから進めないけど」

「わたくしドロップアイテムの確認をしましたら落ちますわ」

「あ、そうだね。私確認忘れてた…。えっと…?」

私が手に入った種類はアラクネの外殻、アラクネの毛、アラクネの爪、アラクネの背甲、アラクネの鋏角、アラクネの生糸、アラクネーの高級機織り機、最後に階層初クリアボーナスの鍵。

あれ?

「アリシアどうだった?」

「ええ、外殻、毛、爪、背甲、鋏角、眼、あとは初クリアボーナスの鍵が落ちましたわ」

「全部アラクネって前についてる?」

「…?ええ」

「なんかさアラクネじゃなくってアラクネーの高級機織り機ってのが落ちたんだけど何かわかる?」

「ああ、それでしたらアラクネって元々神話では人の姿でしたのよ。当時は機織りの技術が凄かったそうでそのせいで他の神々と色々あって蜘蛛の姿になったとされているんですの。その神話に基づいて当時の名前の機織り機がドロップしたのではないかと思います」

「よく知ってるね。なんか可哀想だけど、悩みが解決できたから良かったよ。ありがと」

「いえ、礼には及びませんわ」

その後、私がアリシアの使わない素材を買い取った後そのまま別れの挨拶をしてアリシアがログアウトしたの。

私もポータルを使って街に戻ってからその日はログアウトした。

………

ちなみにこれは後日譚なんだけど、私たちが攻略してしばらくしてから私の所に機織り機の買取希望が殺到したの。

しかも、種類が高級だけじゃなかったみたいでその下に上級、中級、下級、ボロボロっていう階級があったみたい。

私は高級を持ってるからコレクションがわりに各一個ずつ買取だけして、他はギルメンに希望者がいれば買取って感じにしたの。

しばらくそんなことが続いたんだけど、ある日最高級機織り機の買取希望があってそれを買い取った時に節目としてギルドとして買取をしない旨を公表してようやく機織り機騒動が落ち着いたの。
二階層のボスを倒し終わってから数日経って、今日はようやくタワーイベントが始まる日。

今回は時間になるとポータルが現れるシステムなんだって。

アヤカが言ってたんだけど前回のサバイバルとか今回のタワーイベントみたいな定期開催出来そうなイベントはアップデート無しでできるように調整をしたみたい。

よく分かんないけどすごいのかな?

早く学校終わってくれないかなー。イベントやりたいな…。

………

よし、ご飯も作ったし、洗濯物も掃除も洗い物も終わったし…。

準備万端!

じゃあログインしようかな。

………

ひとまず一階層にワープして噴水前に行こっかな。

まずは二階層の中央広場に向かおっと。

そうだ、ライムとエル先に呼んどこうかな。

「二人ともおいでー」

「「はーい!」」

「ままー!」

「フウー!」

返事をしながら召喚された二人は私を呼びながらぎゅってしてきたの。

あー、二人とも可愛いなー。

これだけのためにログインしたりする人もいそうだね。

「二人とも行こっか」

「フウどこ行くのー?」

「タワーイベントっていうのがやってるみたいでやりに行くんだよ」

「ままとお出かけするー!」

「「「それじゃあしゅっぱーつ!」」」

って言ってもポータルでワープしたらすぐなんだけどね…。

よし、ポータル着いたし、ワープ先を一階層に選択して…。

「ワープ一階層」

光に包まれながら景色が消えて、光が消えながら一階層の景色が見えてきて…。

ってうわっ!

何じゃこりゃ…。

人だらけじゃん…。

何でだろ?今回ソロだし、そんな集まる必要ないと思うんだけどな?

まあいいや、早いとこイベントポータルの中入っちゃお。

そしたら人混みとか関係ないもんね。

すいません、すいません。って言いながら人混みをかき分けてようやくイベントポータルに辿り着けたよ。

「二人ともそれじゃあ行こっか」

「出発なのー!」

「れっつごー!」

………

よし、無事に入れたね。

タワーの一階層は森かー。

あ、そういえば人が集まってるのってイベントで手に入った素材の売買に、ポーション類の売買、情報の売買をやってるみたいだね。

人混みかき分けてる時に声が聞こえてきたよ…。

生産職とかは特にかきいれどきなのは分かるけど、何も広場の前であんなに集まらなくても…。

まあ中央広場は集まりやすいししょうがないか。

それより今は探索だよね。

フィールドボスを倒したら次に行けるんだっけ。

どういう進み方しようかなー。

ボス探すの最優先にしてクリア目指すか、まったり探索しながらボス見つけたら倒すか…。

死んじゃったり退出したら最初っからやり直しっていうのがなー。

んー、そうなるとせっかくならゆっくり探索したい…。

もしボスの位置が変わらないなら逆にボスの場所全部マッピングしてからまったり探索していくとかありかもなー。

うん、それがいいかな。

せっかく二十階層もあるんだしどうせなら全部見たいもんね。

各階層等は報酬もあるみたいだしそうしよ。

うーん…どっちに進もう?

小型のフィールドって事だったけどどのくらいの広さで端はどうなってるんだろう?

めちゃくちゃ気になる!

探索しつくせたらいいんだけどなー。

一階層は森だから視界悪いし方向感覚分からなくなるから何か目印つけておかないと。

あ、飛翔飛翔で飛んじゃう?

いや、最終手段として取っておこう。

楽しめなさそう…。

そうと決まればあとは目印を何にするかだよね?

いっその事、木切り倒しながら進むとか?

素材も手に入るし、視界少しは開けるし、振り返ればまっすぐ進めるし。

少し探索スピード遅くなるけどそれ以外にデメリットないし、この方法で行こう!

まずは正面から切り倒していこうかな!

「ライム、エル。私、木を切りながら進むからモンスターは任せてもいい?」

「いいよー」

「うん!ままのこと守ってあげる!」

「ありがと!」

じゃあ伐採開始だね!

木工職人の能力があると伐採のスキル使うと武器一太刀で丸太化できるから楽でいいよね!

まずは一本め!

「伐採」

お、これ前に手に入ったマナウッド(小)だ。

うーん。木の葉っぱ見た感じ何種類かあるかな?

流石にマナウッドだけだとなー。

折角なら丸太(中)も欲しい。

よーし!一気に進めて突き当たりまで行ってみよう!

…伐採!

…伐採!

…伐採!

………

ふぅー…。結構進んだかな?

振り返ると結構進んでるなー。

ポータルが光の柱になってくれてるのは結構ありがたいね。

私が伐採してる間に、ライムとエルがフォレストウルフ、スライム、ラッシュボア、ウィンドチキン、フラワーマッシュルームなんかのモンスターを片っ端から狩り尽くしてくれたの。

私の伐採した木が倒れる時に大きい音が出るからモンスターが寄ってきちゃうんだよね…。

二人がいてくれて助かったよ。

私一人だったら伐採しちゃ戦ってマッピングしての繰り返しになるからだいぶ効率悪くなっちゃうだろうしね…。

とりあえず突き当たりまで進んじゃお!

………

あ、なんか見えてきた。

赤い壁?

あ、これが突き当たりになるのか。

よし、ここまで木が約百本くらいかな。

そしたらここからは実験だね。

「ライム、エル助かったよ!」

「「楽しかったー!」」

「そうだね。一回ここ出よっか」

「「はーい」」
よし、外に出られたし。

もう一回入ってみよっかな。

じゃあポータルに入ろうかな!

………

よし。

あ、やっぱりそうだ!

木がない!!

これは一応アヤカに報告しとこうかな。

あれ、ログインしてない。

まあいいやチャットだけ送っておこうかな。

ネタバレ嫌だったら困るし、とりあえずわかったことがあるって事だけにしとこ。

よし、そしたら今度は右側に向かって真っ直ぐ進んで行こう。

伐採直進レッツゴー!

………

うーん。前方面に進んだ時と木もモンスターも変わり映えしないなー。

まあいいや、次は今の突き当たりから一回前の突き当たりまで外周回ってみよっかなー。

………

うん。

平常運転…。

ただ正方形って感じじゃなくってどちらかと言うと円形って感じなんだ。

んー、そうすると…。

ここの木は均等に並んでるわけじゃないけど、ざっと半径木百本とすると全部で三万本前後木がある事になるのか…。

流石に全部狩尽くすのは難しいかなー。

どうしよう?

マッピングするだけなら全部からなくてもいいよね。

十本間隔だと三百本近くで比較的簡単だけど、ちょっと間隔広い気がするし、折角これだけ沢山木が取り放題なんだし、五本間隔でもいいかもね。

よし、もう一回出てとりあえず十字と縁の外周埋め尽くそう。

………

終わった!

…けど進展はなかった…。

じゃあここからはしらみ潰しに木を五本間隔の格子状に伐採するぞー!

………

…なんて気合い入れたけど、左上から始めて時計回りに格子状にして来て、もう左下…。

ここにボス居るはずなんだけど一向に出てこない…。

………

なんて言いながら伐採してたら終わっちゃった…。

ボス居ないってどう言う事だろう?

強いて言うなら十字に分けた各面の中心付近になんかよく分からない祠跡があった事くらいかな。

まあ九分九厘あれがギミックとかで何かしないとボス出て来ない感じだよねー。

とりあえず祠に入って様子を確認してみようかな。

後は何処の祠から行こう?

どうせなら今いる左下からでいいか。

でもその前に…。

格子完成させておこう。

なんか中途半端なの気になるし。

………

終わったー!

よし、じゃあ早速祠に入ろうかな。

まあ祠って言っても八畳くらいの大きさしかないからちょっとしたギミックがあるだけだと思うけどね。

ん?鳥の石像?

目と額に青い宝石ついてる。

これどうするんだろ?

壊すはずはないと思うんだけど…。

まあ仮にそうだとしたら最終手段だよね。

とりあえず動くか試してみようかな。

…うん。回転だけできる感じだね。

ってことは全部同じ石像だとして考えられるのは全部外向き、全部中央、時計回り、反時計回りくらいか。

ここだけ見てもどうしようもないし他のところも見て回ろう。

………

ふぅ…。

やっと四つ全部回り終わったよ…。

それで全部回ってみてわかったことは…。

左下の石像は額に一つと目が二つ。

左上の石像は隻眼で、石板に『正しき手順で道開き場所に向けろ』って書いてあった。

右上の石像は四つ目。

右下の石像は目が二つ。

って感じだった。正しき手順っていうのは多分石像の宝石の数だよね?

道開き場所って何処だろ?

ポータルかな?

もしポータルなら石像の宝石の数の順番にポータルに向けろってことだよね?

って事は退出出来ないから歩かないとだよね。

………

これで四つ目…!

祠の外に出て何か変わったか見てみよ。

祠の石像の向きと順番が正しいと祠からポータルに向かって青い光が出るんだよね。

今四つ終わったから多分ポータルの方で何か起きてるはず。

急ごう!

………

あれ?上に向いて光ってたのが北向きになってる。

つまりこっちにボスがいるって認識でいいんだよね?

とりあえず進めばわかるよね!

「ライム、エルまだ大丈夫そう?」

「全然大丈夫なのー!」

「ままともっと遊びたーい!」

「ライム、もっと強いのと戦いたいなー」

「エルもエルもー!」

「大丈夫これからボスの所に行くから」

「「やったー!」」

それから私たちは光の指し示す方向に歩いていったの。

そしたら最初に来た時は赤い結界みたいな壁で向こう側は森が続いてるのに際に進めない状態だったのに、人が三人並んで通れそうなくらいの両端赤い結界になってる一本道が出来てたの。

私たちはそのまま一本道を進んで行ったんだけど、突き当たりっぽい所まで来たら一本だけ他の気とは違う異様な雰囲気を放ってる木が生えてるの。

「あー多分あれがボスだね…」

なんか居たよね。

木の魔物。

「フウ、あの木がボスなの?」

「多分そうだと思うよ?」

「ままー。あれ、弱いよ?」

「…え?そうなの?」

「うん。あれお母さんが氷の槍一個でやっつけてたよ?」

「あ、あはは…」

「ライムもあれ森で見た事あるけど弱かったと思う」

まじかー…。

ってまあそうだよね。

普通に考えて全員参加できるイベントで初っ端から強いボスなんて普通出さないよねー…。

「ライム、エル。ごめん。強いモンスターは」もっと後になるかも…」

「「はーい…」」

「じゃあ早く強いモンスターと戦うためにも、早くこの木倒してどんどん進もっか!」

「「うん!」」

それから、木にターゲットされてボスの名前がトレントってわかってから、ボスを倒し終わるまでそう時間はかからなかったの。

結局その日は二階層、三階層って進んだんだけど、その二つは一階層と同じ森で、違うところと言えばボス出現前のギミックが違うのと、二階層のボスがサウンドバタフライっていう蝶で、三階層のボスがイーターフラワーっていう食虫植物みたいなのが出て来たくらい。

四階層は時間なかったからまた明日だね。