「今までどこにおいても、誰も何も思わなかったのですか? 抵抗もせずに、ただ差し出すだけで疑問にも思われなかったのですか?」

「それは、そうだが……でも仕方ないではないか」

「仕方ないって。皇帝に全てを支配させるおつもりなのですか?」

「……」

「皇帝が大きな顔をする要因は、それに屈してきた者たちしかいなかったとのことですよ。このままでは、いい様に扱われるだけです」

「ではどうしろと言うのだ」

「それを考えるのは、お父様たちの役目ではなのですか? この国は確かに皇帝陛下の物。しかしながら、間違った方向へと進む場合はきっと誰かが苦言を呈さなけばならない。違いますか?」


 私一人の問題ではない。

 すでに千人を超える妃がいて、誰も手を打たないなんて。

 そんな皇帝の色欲をその意のままにしておけば、いつか破綻しかねない。

 いずれその影響はきっと国をも揺るがすことになるわ。

 今回は私であっただけ。でも明日はまた違う人が犠牲になる。

 どうしてそんなことも分からないのかしら。


「でも拒否すればここは滅ぼされるのだぞ?」

「そうは申してはいないではないですか。私を差し出しただけで終わるとお思いですか? 今までは目につかなかったから、捨て置かれただけで、今回のことで目を付けられたという自覚が必要だというのです!」

「それは……そうかもしれない」

「今はそこで黙っている者たちも、いつかは自分の娘をと言われる日がくるかもしれないのですからね!」


 私の言葉で集まった者たちはハッとするように、顔を更に青くさせた。

 
「私はこの身の可愛さに申しているわけではありません。この先の未来のために言ってるんです!」


 そうは言っても、自分の身はかわいいけどね。

 こんな形で、不幸せになるとか絶対に嫌だし。

 二回目の人生……それも一回目が散々過ぎたんだから、私は幸せになりたいの!

 諦めるのとか、あんなに惨めになるのはもう懲り懲りなのよ。

 
「だが、どうしろと……」

「今回はこのまま向こうの要求通り、婚姻を結びましょう。その先のことは私が自分でどうにかいたします。しかしこの先のことは必ず、私を輿入れしたのだからと発言権を求めるなど何か手立てを周りの国たちと協力するなどして下さい」


 ここまで煽れば、打倒を目指してくれないかなぁ。

 翁主としては泣く泣く嫁に~のが可愛げがあっただろうけど、元の性格上そうはならないから仕方ないわよね。

 しかも翁主の仮面のまま過ごせるほどの事柄でもないし。

 私が言いたい放題なことに若干みんな引いてはいるけど、今の私にはそんなことを気にするような心など微塵もなかった。