①物語の設定・主要キャラクターの設定
☆物語の世界観
・大まかな世界観
 世界各地に『ダンジョン』という建造物が存在する世界。そこに住まう者は誰もが『スキル』と呼ばれる力を個々に持っている。

・ダンジョン
 ダンジョンには財宝や特別な武器、豊富な資源などが眠る。その一方で凶悪なモンスターが無数に蔓延っている。
 階層を進むにつれて得ることの出来る財の勝ちが上がると共に、モンスターの脅威も跳ね上がる。
 ダンジョンには十階層ごとにボスと呼ばれる特別なモンスターが存在する。先へ進むにはボスを倒さなければならないが、ボスの脅威性は他のモンスターの比にはならない。但しボスモンスターを倒した際手に入れることの出来る財や素材等はとても貴重な物となる。
 ボスモンスターは一度撃破されると再び生まれる事はなく、以降はボスが居座っていた空間に劣化版であるモンスターが発生するようになる。ボスモンスターの劣化版モンスターの事を一般的に『中ボス』と呼び、通常のモンスターに比べれば非常に驚異的だが、中ボスから得られる財はボスモンスターの比にはならない。
 故にダンジョンを訪れる者達の最終的な目標は誰よりも早くボスモンスターを倒す事であることが殆どである。
 作品の舞台となるダンジョンは五十層ボスの手前まで攻略が進んでいる。

・スキル
 スキルは様々な効果を所持者へ齎すが、その効果は必ずしもいい物とは限らず、デメリットを抱えるスキルのことを世間では『外れスキル』と呼ぶ。
 また、スキルには『アクティブスキル』と『パッシブスキル』と呼ばれる物があり、アクティブスキルはスキル所持者の望んだタイミングで効果を発揮するスキル、パッシブスキルはスキル所持者の意志に関係なく常に発揮するスキルのことを指す。稀にアクティブスキルとパッシブスキルの特性どちらもを兼ね備えたスキルも存在する。

・ダンジョン協会と探求者
 ダンジョンの攻略進捗やダンジョン内で得られた素材の買い取り、パーティーメンバー募集の仲介等、ダンジョン探索の手助けを行う大々的な組織が『ダンジョン協会』。ダンジョン協会は世界中に支部を展開している。
 また、ダンジョン探索に勤しむ者達を『探求者』と呼ぶ。


☆主要登場人物のキャラクター設定
〇オリヴァー(33)男
 作中の主人公。酒と胸と尻のでかい女が好き。手数と素早さを利用した戦闘スタイルが主。探求者としての経験も豊富。毎日のルーティンで筋トレをしているが筋肉は一切つかない。

・スキル『筋力分散』(アクティブ+パッシブ):スキル所持者の上昇すべき筋力が分散する。
 このスキルにより、オリヴァーはどれだけ筋肉を鍛えても筋力が上昇する事はない。しかし実際には上昇すべきであった筋力をエネルギーとして体内に蓄積しており、スキル所持者本人が強く望んだタイミングでそのエネルギーを筋力以外の身体能力の向上に充てることが出来る。

・性格
 飄々とした振る舞いでいつもへらへらとした胡散臭い笑みを浮かべている。いい加減な言動が目立つがその本質は臆病者。本人は否定するものの、結構なお人好しで世話焼き。仲間思いな一面を持つ。

・背景
 かつて最強パーティーの一員として五十層のボスの元まで辿り着いたがそこでパーティーは壊滅。脚力に優れていたオリヴァーのみが生還し、他は死亡した。
 スキル『筋力分散』によりどれだけ努力をしても筋力が上がらないオリヴァーは五十層ボス戦に於いても日頃と同じ様に手数勝負の戦闘スタイルで臨んだが、厚い皮膚を持つボスには傷一つ与える事が叶わなかった。
 パーティーに一番貢献できなかった自分のみが生き残ってしまった罪悪と無力感に苛まれた後、仲間達の無念を晴らすべく五十層ボスの討伐を誓う。
 しかしオリヴァーが外れスキル持ちであるという噂やパーティーを壊滅させたという噂が広がっているせいで五十層討伐を目指して最前線で戦うパーティーはどこもオリヴァーを仲間に加える事を断ってしまう。その為オリヴァーは自分一人で五十層ボスを倒す方法を模索するようになる。

・役割、魅力
 パーティーのまとめ役兼保護者のような立場。年長者としての落ち着きや達観した部分が垣間見える人物であり、他のパーティーメンバーの悩みに向き合う事も少なくない。


〇イーダ(16)女
 作中のヒロイン。日頃は男装をしていて凛々しさを感じる振る舞いが目立つが甘い物や可愛い物が好き。下品な話は嫌い。どんな武器でも扱える為状況に応じて戦闘スタイルを変えることが出来るが、オリヴァーとパーティーを組むようになってからは大型の盾を持ってヘイトを集める役割を担う事が多くなった。

・スキル『娼婦の春』(アクティブ):相手を強く魅了する。また、魅了状態にある相手と性行為に及ぶことで相手の身体能力の吸収及び自身の身体能力の譲渡が可能。

・スキル『頂への誘い』(アクティブ):触れた無生物の重量を限りなくゼロに近づける。

・性格
 表情があまり変わらず、口調がきつい事もあって冷たい印象を受けやすい。しかし実はとても誠実であり、他人を放っておくことが出来ない性格をしている。人の善意に弱く、感謝や好意を向けられると照れてしまう一面もある。

・背景
 スキルの名前やその効果から様々な偏見や軽蔑の対象、性的な目で見られる事などが多々あった。
 時に笑い者にされ、卑しい者だと後ろ指を指され、尊厳を奪われかける事もあった。見目が整っている事もあり、スキルを口実に近づく異性も少なくなかったせいで自分のスキルに対する嫌悪感が強く、使うことに対する抵抗感も大きい。
 以上の理由から自らが女である事を隠し、スキルも他者へ打ち明ける事を避けている。
 自ら性行為に及んだ経験はないが、家が貧しく母が娼婦であった事が自分のスキルに影響を与えたのではないかとイーダは推測している。ただし母が娼婦であったことに対する不満などがある訳ではなく、寧ろ母を失った現在も強く慕っている。

 また、ダンジョンから人里へとモンスターが溢れるという滅多にない事例によって家が襲われた過去を持ち、その際に唯一の家族であった母を失っている。自らの弱さを憎み、モンスターと立ち向かう為の強さを得る為に探求者の道を選んだ。

・役割、魅力
 オリヴァーの補佐を担うことが多い。また、オリヴァーが女遊びや酒飲みに走ろうとした時に制裁を食らわせる立場。資金管理など重要な役割をパーティーから任せられることも多い。
 また、例え過去に手酷い仕打ちを受けた相手であっても、激しい憎悪を抱いた相手であっても、危機に瀕している所を見れば必ず助けに行くという信念がある。
 それこそが相手への復讐であり、自らが憎悪の対象とは違うまっとうな人間だという証である為だ。また、憎悪の対象と同じ所まで落ちぶれる事がないようにという願いであり、いつか同じ立場に立つことがあるかもしれないという不安を和らげる要素でもある。


〇ジークベルト(17)男
 パーティーの一員。プライドの高い貴族。怒りっぽく、感情的になることが多いが、それは自分が絡んだ話に留まらず、仲間を侮辱された時にも表れる。両手剣を扱う前衛。平民とピーマンが嫌い。

・スキル『昂る闘志』(パッシブ):攻撃の威力が抱いている感情によって左右される。強い感情(怒り、憎悪等)に支配されれば攻撃の威力が底上げされ、弱い感情(悲しみ、恐れ等)に支配されれば威力が格段と落ちる。

・性格
 高圧的で傲慢。負けず嫌いでありながら自己肯定感が低いという面を兼ね備えている為、劣等感を擽られるとすぐにマウントを取ろうとする。平民嫌いを自称しているが一番嫌っているのは自分の内面。すぐに泣いてすぐに怒る。

・背景
 昔に武功を上げた名家出身の貴族。家は現在でも生まれた子に剣術の指南を付ける風習が残っている為、ジークベルト自身も幼い頃から剣術を学んでいた。
 過去の栄光に縋っていた家族全員、プライドが高く、その環境下で育ったジークベルト自身も疑問を抱くことなく傲慢に育った。
 また、家には使用人の中に年の近い少年がおり、比較的親しい間柄を築いてはいたものの、傲慢なジークベルトは内心で自分と彼の立場を比べて相手を見下し、優越感に浸っていた。
 ある日使用人の少年がいつか探求者になって名声を手に入れたいという壮大な夢を語った時、大きな目標を恥ずかしげもなく語る姿や『祖先の栄光に縋る貴族』よりも高い地位を志そうとする姿に劣等感を擽られ、その夢を馬鹿にして罵ってしまう。日頃温厚な少年はこの日ばかりは怒りを顕わにし、以降ジークベルトと距離を置くようになる。
 そしてその地域で一際有名な剣術大会の優勝候補として出席したジークベルトは使用人の少年に剣で打ち負けた。
 少年が仕事の傍ら、夢の為に影ながら剣術を磨いていた事に気付くと同時に、ジークベルトは名家の栄光と地位に胡坐を掻いていただけであった自分の惨めさを痛感したが、剣術大会の直後に少年は探求者となるべく使用人をやめて行方を晦ましてしまい、当時の事について話し合う機会はなかった。
 一方で剣術大会で使用人に負けた事実に怒った家族達との関係が悪化し、ジークベルトは家族から逃げる様に家を出る。

 家を出たジークベルトは家族と離れて様々な人と関わる内にいかに自分が浅はかで惨めであったかを知り、自分の今までの行いや性格に強い嫌悪を覚える。
 幼い頃から染みついた性格や考え方、言動はすぐに変わる事がなく、失敗する度に自己嫌悪しては自分を嫌いになり、ついには自信を無くしてしまう。

 彼が探求者を志したのは生計を立てる為という理由の他、使用人の少年が語った夢がどんなものであったのかを自分の目で見た上で評価を改めたかったから。
 また、ダンジョンを攻略する事で名を上げればいつか自分に気付いてくれるのではないかという思い、そしてもう一度会えた時に謝罪と探求者が存外楽しかったという話を聞いて欲しいという望みを持っている。

・役割、魅力
 精神的に落ち着いているキャラクターが多い中で感情表現が豊かなムードメーカー。思慮の浅い言動や歳に見合わない幼い振る舞いが目立つこともあるが、それによってパーティー全体の緊張が和らぐ事も多々ある。コメディ要因。
 臆病で弱腰になることが多いが、一度気持ちを切り替えることが出来れば覚悟がぶれる事はなく、パーティーの心強い主力となる。
 オリヴァー達と出会った当初は虚勢ばかり張るものの自分に自信が持てず、戦闘で剣を振るう事すらろくにできなかったが、仲間が窮地に立たされた時、何もできずお荷物に成り下がっている自分を許せず『自分自身へ対する憎悪』を糧にスキルの恩恵を得る。
 その後も自分の事を好きになる事を難しいと感じながらも着実に人として成長していく。
 オリヴァーと出会って以降、彼が主張する『平民嫌い』とは無意味に頭を下げて自己の価値を下げようとする姿が己の自己肯定感の低さと重なって見えるが故の同族嫌悪であり言葉通りに嫌っている訳ではない。


②冒頭部分のプロット
☆一話
 ダンジョンについての世界観説明を挟みつつ、モンスターに囲まれているイーダをオリヴァーが助けに入る。
 イーダが窮地に立たされるまでの回想。臨時の助っ人としてパーティーに参加したイーダは十九層までの攻略の手伝いという依頼で引き受けたが、リーダーを始めとしたメンバーが二十層へと向かいたいと主張する。ダンジョンは十層ごとに難易度が大きく変わる事を伝えるも納得は得られない。一番実力のある自分のみが帰るという無責任な選択をすることも出来ず、危険を感じたらすぐに引き返す事という条件付きで二十層までついて行くことに。
 しかし二十層の雑魚敵を倒して浮足立ったリーダーが先走って奥まで進んでしまい、そこに控えていた中ボスを刺激してしまう。同時に雑魚敵も大勢集まり、パーティーは混乱状態に陥る。
 イーダはリーダーの代わりにパーティーの統率を執り、撤退を促すが、自分のパーティーを我が物顔で仕切る余所者が気に食わなかったリーダーは不満を募らせた。
 イーダとリーダー以外のパーティーメンバーが上層へと続く階段へ姿を消し、それに続こうとした時、イーダに対する嫌悪を募らせたリーダーが彼女の背を押してモンスターの群れに突き飛ばして逃げ去る。
 不意を衝かれて転倒したイーダは足を負傷した事によって逃げることが出来なくなり、その場での応戦を強いられるものの、体力が尽きかけてしまう。
 さらにそこへ中ボスがイーダへと接近を試み、彼女が死を覚悟した瞬間、目にも止まらぬ速さでモンスターを狩りながらオリヴァーが姿を現す。
 群がるモンスターを凄まじい速度で一掃するとオリヴァーがナイフを片手に一つずつ握ったまま三メートル程の大きさを誇る中ボスへと駆け寄った。
 足の腱を斬って転倒させた後、ナイフで両目を貫き、腰に差していた剣で中ボスの心臓を突き立てる。
 中ボスを討伐した後、オリヴァーはイーダの元へ戻ると手を差し伸ばして笑い掛けた。

☆二話
 ダンジョンを後にし、ダンジョン協会で治療スキルによってイーダの怪我を回復した後にオリヴァーとイーダは医務室から大ホールへと出た。
 軽い自己紹介を交わした後、イーダは礼を述べた上でオリヴァーが相当の実力者であることを評価する。それに対し首を横に振ったオリヴァーの反応を不思議に思い、イーダが首を傾げると、他の探求者達が離れた場所で声を潜めて話し合っているのが聞こえる。その内容はオリヴァーが外れスキル持ちであるという内容であり、彼を見下すような物であった。
 その事にイーダが腹立たしさを覚えるも、事実であることをオリヴァーが認めた上で自身のスキルが筋力の上昇を妨げる物である事を明かす。
 話の流れからオリヴァーが何気なくイーダのスキルを問うも、彼女は答えたくないと言う。
 また、何故二十層に一人でいたのかと別の問いをオリヴァーが投げた時、イーダは大ホールの一角に立つパーティーメンバーの姿を見つける。彼女はオリヴァーに断りを入れるとパーティーメンバー達の元へと向かった。
 イーダが何気ない顔でメンバーへと声を掛ければ、その場の全員の顔が強張る。それに対し思う事や言いたいことはあったものの、それら全てを呑み込んだ彼女はただ一言、今回の報酬を求めた。
 正当な報酬を受け取ったイーダは何かを咎める事もせず、メンバーへと背を向ける。するといつの間にか近くまで付いてきていたらしいオリヴァーの姿を見つけた為、合流を果たした上で礼をしたいから外へ出ようと声を掛ける。
 イーダの事情を何となく察したオリヴァーが「いいのか」と問うたのに対し、彼女は一度パーティーメンバーを振り返り、リーダーの顔を冷たく見据えた後、「過ぎた事に何を言っても無駄だから」と言い捨てて去っていく。
 イーダの澄ました態度がリーダーの癪に触り、彼は再び怒りを募らせていった。
 ダンジョン協会を出た後、イーダは気にしなくていいというオリヴァーを押し切って食事を奢る。
 一方で、イーダを嫌悪するリーダーは他人のスキルの覗き見と公開が出来る『鑑定』スキル持ちの知人にスキルから彼女の弱みを握ることは出来ないかと交渉をしていた。
 翌日、暫くはパーティーを組まずソロで潜ろうと決めたイーダがダンジョン協会へ足を運んだところへ『鑑定』スキル持ちが偶然を装ってぶつかる。そして驚いた表情でリーダーの元へ向かうと耳打ちをした。
 『鑑定』スキル持ちの報告に笑みを深めたリーダーはもう一度イーダへ接触をしてその場でスキルの公開をするよう促す。
 二度目の接触には流石に違和感を覚えるイーダであったが、刹那『鑑定』スキルによって己のスキル『娼婦の春』と『頂への誘い』の詳細を公開されたイーダは顔色を変える事になる。

☆三話
 自分のスキルが露呈した事による羞恥と恐怖によって顔を蒼白とさせて震えるイーダ。
 彼女の特殊なスキル名とその詳細にざわつく周りと、イーダの取り乱す様で悦に入るリーダー。
 騒ぎに駆け付けたダンジョン協会の従業員が他者のスキルを拡散する行為はマナー違反であることを忠告されて騒ぎの収拾を図るも、イーダを奇怪な目で見る者や小声で何かを話す者は絶えない。
 パニック状態に陥り、イーダがその場から動けずにいると、大ホールの隅にいたオリヴァーがイーダの背を叩く。怯える様に肩を大きく震わせて振り返るイーダにパーティーを組む約束をしていただろうと嘘を吐きながら建物の外へ出るよう促す。
 しかし何とか歩き出したイーダであったが、尚もひそひそと囁く声は止まない。それに対しため息を吐いたオリヴァーはイーダに声を掛ける体で、大きめな声を出す。
「どいつもこいつもすーぐスキルスキルって……。んなこと言ったら一生筋肉つかないオレはどうなるんだよ。オレにいわせりゃ大抵のスキルは強いっての!」
 冗談めかしの言葉に数名が噴き出したかと思えばつられる様に場の空気が和らぐ。終いにはオリヴァーが外れスキル持ちであることを揶揄うような野次が飛ぶが、それに対し彼はげらげらと笑いながら「うるせーよ!」と一蹴してイーダと外へ出る。
 のどかな街並みを眺められる広場のベンチに座らされたイーダは助け舟を出してくれたことに感謝をしながら自分のスキルが嫌いな事、望んでもいないのに割り振られたスキルによって卑しい人間としてレッテルを貼られる事に強い拒絶を覚える事、スキル絡みで酷い目に遭って来たことを打ち明ける。
 スキルなんて物がない世界ならよかったと言い捨てたイーダは一つ息を吐いて落ち着いてから「不遇のスキルを持っている貴方なら同じように思った事があるのでは」「この気持ちにどう片を付ければいいのかわからない」とオリヴァーへ言葉を投げる。
 オリヴァーは少し考えた後に「自分の気持ちにけりをつける方法は自分でしか見つけられない」「共通点があろうと自分以外は他人でしかないだろ」と答える。
 イーダは少しがっかりしながらも納得した様に頷くと小さく微笑む。
 暫く沈黙が流れた後、イーダは席を立つ。そしてもう大丈夫だと告げて去ろうとしたところである事に思い至り、再び小さく笑いながら「そう言えば、貴方は私のスキルを知っても全く変わらないんだな」と言う。
 それに対し、オリヴァーは目を丸くすると至極当然の様に「オレは胸とケツのでかい熟女にしか興味ないからな」と話す。品のない言葉にイーダが顔を顰め、一つ小言を零した瞬間、慌てた様子で街中を駆けまわる人物の叫び声が二人の耳に届く。
 ダンジョンの中ボスの元に置いてきてしまった仲間を助けて欲しいと懇願する声に顔を上げたオリヴァーは叫んでいる人物に具体的な場所や人数などの状況を聞き、ダンジョンへ向かおうとする。それに続くようにイーダもオリヴァーの隣に並び、自分もついて行く旨を告げる。
 先程取り乱していた事もあり、問題ないのかをオリヴァーが確認すれば頷きが返される。それを確認してからオリヴァーはイーダを連れてダンジョンへと向かった。


③今後の展開
 人を助ける為ダンジョンへ潜り込んだ二人。襲い掛かるモンスターにオリヴァーが苦戦を強いられたとき、自身のスキルに嫌悪を抱くイーダは恐怖や嫌悪を振り払って自身のスキルを使って場を好転させる。
 未だ自身のスキルを好きにはなれずとも人の為になる側面を持つことを知ったイーダの中で自身のスキルに抱く嫌悪が薄れていくようになる。
 自身が強くなる為、ダンジョンの現在の最難関階層である五十層を目指すオリヴァーとパーティーを組むことになる。

 オリヴァーとイーダがパーティーを組み始めて暫く経った頃。自身の言動や振る舞いが原因でパーティーメンバーと言い争っているジークベルトを二人は目撃する。ジークベルトはパーティーを脱退し、一人でダンジョンへ潜るも、剣を握る手に上手く力が入らず、簡単な階層のモンスターであってもろくに倒すことが出来ない。
 見かねたオリヴァーとイーダが同行を申し出、三人でダンジョンを探索することになる。道中、イーダとジークベルトが言い争い、感情的になったジークベルトがその場を去ろうとしたところでトラップを踏んでしまう。発動した落とし穴でダンジョンの下層部まで落とされたオリヴァー達が元居た場所までの脱出を試みる中、ジークベルトと言葉を交わし、彼が抱く複雑な感情やそれによるスキルの悪影響などを聞く事になる。
 何とか上層部まで戻って来たものの、その途中で中ボスに遭遇し、戦闘を余儀なくされる。しかしイーダが負傷し、オリヴァーも装甲のある中ボス相手に苦戦を強いられる。そこへ嫌いな自分をこれ以上嫌いにならない様にと自分自身に対する憎悪を利用してスキルの効果を得たジークベルトが中ボスを剣で斬りこみに入り、巨体を両断する。
 事が片付いた後、ジークベルトが正式に仲間となる。

 ついに五十層ボス討伐へ一行は向かったものの、ボス討伐を焦ったオリヴァーが瀕死になる。治療によって目が覚めたオリヴァーに自分の命を大切にすることを約束し、一行は再びボス討伐へ。
 そこで更なる窮地に立たされるも、オリヴァーが自身のスキルの本来の用途に気付き覚醒。三人の戦闘スタイルを最大限に活かした猛攻で無事にボスを討伐する。

 五十層ボス討伐後、その偉業をたたえて称号を得た一行。
 ジークベルトの名は遥か彼方のとある探求者の者まで届き、イーダは休暇も率先してダンジョンで人助けをする。オリヴァーは街外れにかつての仲間の墓石を立てた。

 暫くは穏やかな時間が過ぎていくが、大きな目標を達成した三人はやがてまたダンジョンへ潜る様になる。五十層以降を探索するのか、別の国のダンジョンを巡るのか、三人は新たな目標を話し合うのだった。