*冒頭プロット
①
愛犬との散歩中、突如、勇者として異世界に召喚された高校二年生の神木勇馬。
まるでゲームみたいに、魔法と剣があり、多種族が暮らすこの世界は、どうやら人間と魔族が対立しているらしい。そして勇者――つまり俺は魔族と戦って魔王を倒さないといけないようだ。
「なぜ、俺が。そもそも俺は愛犬と散歩中だったのに。至福の時間をつぶしやがって」
文句を言おうとしても時には魔族との戦争を終わらせてほしいと懇願され、時には住む場所もお金もないだろう、と衣食住を盾に取られて黙らされてしまう。
確かに、この世界の常識も知らない俺が、この世界で暮らしていけるとは思えない。しかも、一国を敵にした状態で……うん、無理だな。
ユウマは泣く泣く勇者として戦うことを承諾することになる。
②
そういえば、どうやら愛犬は召喚に巻き込まれなかったらしい。寂しいが、こんな物騒な世界に来させることにならなくて良かった。どうか現実世界で幸せになってくれ……
ギアス国王からさっそく今日から役目を果たすように言われ、ユウマは護衛という名の監視者とともにさっそく魔物討伐に行くことになる。
「いや、なんでだよ、魔物とか初めて見るし、魔法とか剣とかわからないのに、倒せるわけがない。勇者を盲目的に信じすぎじゃないか?」
不安になりつつも、国王直属の騎士たちも討伐に参加するのか、周りは剣を持った屈強な男ばかり。逃げ出せるわけもなく、ユウマはお粗末な装備を渡されて強制的に魔物討伐に参加することになる。
「いやいやいいや、死ぬって! 絶対死ぬって!」
③
がむしゃらに剣を振り回すユウマ。だが、職業補正なのか意外にさくさく倒せてしまう。
しかも、ゲームみたいにそれっぽい詠唱をとなえたらなんだか魔法を使えてしまったし。
職業補正の恩恵だった。
生き延びてほっとするが、どうやら教えられずに魔法も剣も扱えるというのはこの世界では異常なことだったようで、ユウマに対する期待値は上がりすぎてしまう。
「さすが勇者様! これでこの国は安泰だ!」
「はっ!?」
魔物討伐の場に連れてきておいて、魔法も剣も使えるとは思っていませんでしたってどういうこと!?
驚くユウマだが、どうやら勇者が万能だと思っていたのは国王だけで、周りは皆心配していたらしい。
「早く言えよ! そうしたらここまで無茶苦茶なこともしなかったのに!」
だが、後の祭り。
『勇者はすでに魔法も剣も扱えて、とても強い。魔物を瞬殺していた』
という噂が出回ってしまう。
④
話はすぐに国王の耳に入り、それからユウマは酷使されるようになる
日に何度も大規模な魔物討伐に駆り出され、時には魔族との戦場にも連れていかれる様に。休む暇など一切なく働かされる日々。
常に死と隣り合わせの毎日は、穏やかな世界で育ったユウマにとっては苦痛な毎日で、徐々に疲労困憊していく。
加えて、国王は勇者を褒め称え、国民から絶大な信頼と期待を向けられるようになってしまい、逃げ出したくても逃げ出せない。
「味方なんて誰もいない、相談なんてできない、孤独で、辛い……」
そんな毎日に嫌気がさし、機械的に仕事をこなすようになっていたある日。
国王からダンジョン踏破を命じられる。
「勇者よ。首都にあるS級ダンジョンの踏破を命じる」
*2章
①
S級ダンジョン。それは、最高峰と言われるSランク冒険者がパーティーで踏破するダンジョン。
そんなダンジョンに監視者と二人……監視者は一切手助けをしないから実質ひとり、で行けと言われユウマ。
いつも通り拒否権はなく、気が付けばダンジョンに放り込まれていた。
ダンジョン内は未知の世界だった。どうやら外とは時空が異なる様子。
草原から始まり、砂漠、水中、灼熱の炎の中などなど。しかも、魔物たちは外で戦っていた時よりも明らかに強く、膨大な数がいる。
しかも罠まであるという始末。
およそ人が生きれる環境ではない。
そんな中に大した物資も持たずに放り込まれたユウマはみるみるうちに消耗していく。監視者は透明化の魔法を使い一切手助けする様子はない。
劣悪な環境の中でユウマはとうとう発狂する。
「もう勇者なんてやめてやる!」
ユウマは自ら魔物にツッコみ、木っ端みじんに吹き飛んだ――ふりをした。
実際は全力で防御したうえで、魔物討伐中に習得してからずっと隠していた透明化魔法を使っただけであった。ただ逃げ出すだけでは指名手配をされてしまう。なら、自分が死ねば……?
そう考えた結果だった。
慌てる監視者。急いでダンジョンを出て報告しに行く。
「陛下! 勇者が死にました!」
「なんだと!・」
②
一方その頃、ユウマはなんとか透明化魔法でダンジョンの魔物から逃げ、気が付けば見知らぬ場所にいた。
「ここは一体……?」
「ダンジョンの最下層へようこそ」
現れたのは浅黒い肌の少女キリアだった。彼女はこのダンジョンのダンジョンマスターだという。
どうやら知らぬ間に最下層に来てしまっていたようだ。
「お主、面白いな。勇者でありながら死んだふりまでして役目を投げ出すとは……気に入ったぞ。お主の願いを叶えてやろう!」
上機嫌なキリアはどうやらユウマを気に入った様子。
ユウマの願い。それは……。
「勇者をやめてスローライフを送りたい。もう死にそうになるのなんてごめんだ」
「では、修行をつけてやろう。ステータスは自分より強い者のものは見えない。つまりお主は誰よりも強く鳴れば勇者であることをバレずにスローライフを送ることができるようになるだろう」
強くなれば誰からもステータスが見えなくなるということを初めて知ったユウマ。
スローライフを送るべく、キリアに修行をつけてもらうことになる。
①
愛犬との散歩中、突如、勇者として異世界に召喚された高校二年生の神木勇馬。
まるでゲームみたいに、魔法と剣があり、多種族が暮らすこの世界は、どうやら人間と魔族が対立しているらしい。そして勇者――つまり俺は魔族と戦って魔王を倒さないといけないようだ。
「なぜ、俺が。そもそも俺は愛犬と散歩中だったのに。至福の時間をつぶしやがって」
文句を言おうとしても時には魔族との戦争を終わらせてほしいと懇願され、時には住む場所もお金もないだろう、と衣食住を盾に取られて黙らされてしまう。
確かに、この世界の常識も知らない俺が、この世界で暮らしていけるとは思えない。しかも、一国を敵にした状態で……うん、無理だな。
ユウマは泣く泣く勇者として戦うことを承諾することになる。
②
そういえば、どうやら愛犬は召喚に巻き込まれなかったらしい。寂しいが、こんな物騒な世界に来させることにならなくて良かった。どうか現実世界で幸せになってくれ……
ギアス国王からさっそく今日から役目を果たすように言われ、ユウマは護衛という名の監視者とともにさっそく魔物討伐に行くことになる。
「いや、なんでだよ、魔物とか初めて見るし、魔法とか剣とかわからないのに、倒せるわけがない。勇者を盲目的に信じすぎじゃないか?」
不安になりつつも、国王直属の騎士たちも討伐に参加するのか、周りは剣を持った屈強な男ばかり。逃げ出せるわけもなく、ユウマはお粗末な装備を渡されて強制的に魔物討伐に参加することになる。
「いやいやいいや、死ぬって! 絶対死ぬって!」
③
がむしゃらに剣を振り回すユウマ。だが、職業補正なのか意外にさくさく倒せてしまう。
しかも、ゲームみたいにそれっぽい詠唱をとなえたらなんだか魔法を使えてしまったし。
職業補正の恩恵だった。
生き延びてほっとするが、どうやら教えられずに魔法も剣も扱えるというのはこの世界では異常なことだったようで、ユウマに対する期待値は上がりすぎてしまう。
「さすが勇者様! これでこの国は安泰だ!」
「はっ!?」
魔物討伐の場に連れてきておいて、魔法も剣も使えるとは思っていませんでしたってどういうこと!?
驚くユウマだが、どうやら勇者が万能だと思っていたのは国王だけで、周りは皆心配していたらしい。
「早く言えよ! そうしたらここまで無茶苦茶なこともしなかったのに!」
だが、後の祭り。
『勇者はすでに魔法も剣も扱えて、とても強い。魔物を瞬殺していた』
という噂が出回ってしまう。
④
話はすぐに国王の耳に入り、それからユウマは酷使されるようになる
日に何度も大規模な魔物討伐に駆り出され、時には魔族との戦場にも連れていかれる様に。休む暇など一切なく働かされる日々。
常に死と隣り合わせの毎日は、穏やかな世界で育ったユウマにとっては苦痛な毎日で、徐々に疲労困憊していく。
加えて、国王は勇者を褒め称え、国民から絶大な信頼と期待を向けられるようになってしまい、逃げ出したくても逃げ出せない。
「味方なんて誰もいない、相談なんてできない、孤独で、辛い……」
そんな毎日に嫌気がさし、機械的に仕事をこなすようになっていたある日。
国王からダンジョン踏破を命じられる。
「勇者よ。首都にあるS級ダンジョンの踏破を命じる」
*2章
①
S級ダンジョン。それは、最高峰と言われるSランク冒険者がパーティーで踏破するダンジョン。
そんなダンジョンに監視者と二人……監視者は一切手助けをしないから実質ひとり、で行けと言われユウマ。
いつも通り拒否権はなく、気が付けばダンジョンに放り込まれていた。
ダンジョン内は未知の世界だった。どうやら外とは時空が異なる様子。
草原から始まり、砂漠、水中、灼熱の炎の中などなど。しかも、魔物たちは外で戦っていた時よりも明らかに強く、膨大な数がいる。
しかも罠まであるという始末。
およそ人が生きれる環境ではない。
そんな中に大した物資も持たずに放り込まれたユウマはみるみるうちに消耗していく。監視者は透明化の魔法を使い一切手助けする様子はない。
劣悪な環境の中でユウマはとうとう発狂する。
「もう勇者なんてやめてやる!」
ユウマは自ら魔物にツッコみ、木っ端みじんに吹き飛んだ――ふりをした。
実際は全力で防御したうえで、魔物討伐中に習得してからずっと隠していた透明化魔法を使っただけであった。ただ逃げ出すだけでは指名手配をされてしまう。なら、自分が死ねば……?
そう考えた結果だった。
慌てる監視者。急いでダンジョンを出て報告しに行く。
「陛下! 勇者が死にました!」
「なんだと!・」
②
一方その頃、ユウマはなんとか透明化魔法でダンジョンの魔物から逃げ、気が付けば見知らぬ場所にいた。
「ここは一体……?」
「ダンジョンの最下層へようこそ」
現れたのは浅黒い肌の少女キリアだった。彼女はこのダンジョンのダンジョンマスターだという。
どうやら知らぬ間に最下層に来てしまっていたようだ。
「お主、面白いな。勇者でありながら死んだふりまでして役目を投げ出すとは……気に入ったぞ。お主の願いを叶えてやろう!」
上機嫌なキリアはどうやらユウマを気に入った様子。
ユウマの願い。それは……。
「勇者をやめてスローライフを送りたい。もう死にそうになるのなんてごめんだ」
「では、修行をつけてやろう。ステータスは自分より強い者のものは見えない。つまりお主は誰よりも強く鳴れば勇者であることをバレずにスローライフを送ることができるようになるだろう」
強くなれば誰からもステータスが見えなくなるということを初めて知ったユウマ。
スローライフを送るべく、キリアに修行をつけてもらうことになる。