初回エスコートプランには(当然ながら)示されていなかったが、『キラキラ』は即座に素敵なホテルの一室を提供してくれた。間違いなく有能なアプリだ。
部屋に足を踏み入れた瞬間から、僕の緊張は最高潮に高まっていた。
二人きり、個室、同意の上。
もう、いつ、ことが起きてもおかしくない。
いや、起きるじゃなく、起こすものなのか?
だめだ、混乱してしまう。とにかく、いったん、落ち着かないと。
……落ち着くって、どうすればいいんだっけ?
「ふふっ、いざってなると、緊張……しちゃいますね」
笑っているだけ僕よりも余裕がありそうなユウリさんは、僕が部屋のドアを閉めているうちに、先にベッドにポーチを置いてから、一枚、上着を脱ぐ。
あ。
手首に、傷。
いや、今さらだ、そんなことは――
「こっちに、……来ないんですか?」
ベッドの上から、ユーリさんが声をかける。
そう、入り口に立っていても仕方がない、それは頭ではわかっている。
「ふふっ、来ないのでしたら」
どこかさっきまでとは違う妖艶さのある笑みで、ユウリさんが話す。
「……こちらから、行っちゃいますよ?」
ポーチに手が滑り込む。
引き出されたのは、キラリと鋭く光る、ナイフ。
ではなくて。
黒光りする、鉄の塊――
銃口が。
まっすぐ、こちらに。
「あ――」
やっぱり。
ずっと、どこかで疑ってはいたけれど。
確かに、あなたは、僕の『運命の人』だった。